第13話 暴飲暴食の少女
「起きろー、アルトぉー」
カイムに揺すられ、僕は体を起こす。
疲れてたし、しばらくぶりのベッドだったのもあって、いい目覚めだ。
レレナがいたベッドは空になっていた。先に目覚めたのだろう。
「レレナはどこに行ったの?」
僕はカイムに尋ねる。
「あいつか。1階の食堂で飯食ってるぞ」
「了解。僕も朝食にしようかな」
そう言って扉を開け、あまり広くない廊下を伝い、突き当たりの階段を降りていく。そうして着いた1階の小さな食堂では、美しい銀髪を腰まで伸ばした年端も行かない少女が大量の皿を乗せた机と共に鎮座していた。
どうなっているんだ。何が起こっている。
「あ、恩人さん! おはようございます!」
僕があまりの光景に絶句していると、レレナの方から声をかけてきた。
あまり広くない宿に泊まったためにあまり人がいないのは不幸中の幸いと言えるだろうか。
「どうした? アルト、そんな硬直して……」
いつの間にか後ろから出てきたカイムも状況を把握したらしく、言い終わらないまま言葉を失った。
レレナはそのまま意に介さずに皿の上のものを手づかみで貪る。
こんなに食われたらまあ、減らされるのもまあ、納得……したくはないけど、理解できてしまう。
「ええと、お前……どうする? 食事代」
沈黙を破ったのはカイムだった。
「あー……、冒険者らしく? 自給自足? とか?」
「あ、私も同行します! 助けてもらった恩を返したいです!」
再び戦慄が走る。
「私、絶対強くなりますから! お願いします!」
「え、ええ……」
「ま、まあいいだろ。ほら、な?」
カイム……こいつ、もしかして子供に弱いんじゃないか?
「とりあえず、食事が終わったら出発だ。しっかり気を引き締めろよ」
「わかりました!」
「りょーかい……」
僕はそのうち死ぬかもしれない。
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