第12話 満身創痍の帰路
僕は少女に駆け寄った。
「だ、大丈夫?」
まあ、洞窟で鎖に繋がれている少女が大丈夫に見えるわけではないけれど、とりあえず確認。
「……お……」
「お?」
少女が発したか細い声から、少なくともこの子は生きている程度のことはわかった。
「お腹、空いた……」
「……そっか」
……とりあえず、元気そうだ。
■
カイムに肩を貸しながら少女の手を引き、村まで歩いて約4時間。
カイムには応急処置をしておいたけど、だいぶ辛そうだ。
少女も足取りがおぼつかないらしく、何度かころびそうになった。
「よし、着いたよ」
とりあえず村の宿屋にでも運んでカイムを寝かせ、日も暮れてきたから少女も一緒に泊まることになった。
何故か亭主さんには少し嫌な顔をされたけど。
「死ぬかと思った……」
カイムがぼやく。
魔法で血液を生成できていなければ死んでいたそうだ。
今の魔法技術……というか、医療技術では血液を作るのは不可能だけど、カイムは成分を知っていたからなんとか作れたらしい。
その方法について聞いたけど、セッケッキュウやらヘモグロビンやら知らない言葉が多くて訳がわからなかった。
人の体に鉄が入ってるというのはだいぶ興味深かったけど……まあ、よくわからないことは置いておこう。
僕は少女に向き直る。
「ところで、君は、ええと……」
「レレナ・アイハーツです」
「レレナだね、ありがとう。レレナは何であんなところにいたの?」
「生贄と、口減らし……ですね」
曰く、あの魔物を村に行かせないために定期的に生贄として人を送っていたらしい。
レレナの家庭は貧しかったから、口減らしも兼ねてレレナをそれに選んだとか。
全く酷い話だ。
「なるほど……俺らが死んでもあいつの食い物になるし、倒したら万事解決ってわけか」
カイムが口を挟む。
ただ、その場合だと自分を殺すための刺客を送ったことでやっぱり罰を受けそうだけど……まあいいや。
明日のことを想いながら、僕らは眠りについた。
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