第2話 拱手傍観の村
僕がまた冒険者になるだなんて言い出したら、父さんと母さんは絶対に反対するだろう。
彼が稽古をつけてくれるとはいえ、カイムさんにも不信感を抱きそうだし、どう説得するのだろうか。
そんな思慮を巡らせながら森の中を歩いていく。森を含めてここら一帯の地形は頭の中に入っているから迷うことはない。
数分ほど歩いて日が暮れてくると、目的地の方角で大きな光が見えてくる。
光……いや、これは……!
「村が……燃えてる……」
僕は故郷に向かって一目散に駆け出すも、カイムさんに腕を掴まれ、阻まれた。
「待て、殺されるぞ」
「誰かがヘマやらかしただけかもしれないだろ! 早く行かないと!」
「家一軒が燃えているのなら、そうだろうよ。だが、燃えているのは村の大部分だ」
自分でもわかっている。
でも、『ヘマやらかしただけ』じゃないと、そうでもないと――!
「――戦争でも起きて敵軍にでも焼かれたか、それとも
彼の指差す方向には、一頭の巨大な龍が村を壊して、燃やして、殺していた。
確かに僕じゃ敵いっこないだろう。でも……。
「見殺しにしろってことかよ!」
「自分も死んだら意味ねえじゃねえか」
故郷を焼かれている僕とは対照的に、他人事だからか彼は冷静そのものだ。
そして、僕自身、怖気付いているのだろうか。足が全く動かない。
「くそっ……」
僕が弱くなければ、見殺しにしなくて済んだのだろうか。
僕が強ければ、助けられたのだろうか。
僕の故郷が燃え尽きて、皆殺しにされるまで、僕は見ていることしかできなかった。
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