3.

 さてはて、行列に並んでから何分経っただろうか定かではないが、もうそろそろ日付が変わるといった時間帯になってきた。

 日付が変わる一分前からどこからともなく声がする。――カウントダウンだ。時間が進む毎に声が大きくなっていくそのカウントダウンに三十秒前からミナトと加わりだす。

 ――十、九、八、七、六、五、四、三、二、一。「――あけましておめでとう」僕はミナトにだけ言う。ミナトも「あけおめ」と僕にだけ言う。

 除夜の鐘は鳴り終わり、いつしか雪も気まぐれに降るのをやめていた。

 五円玉を投げ参拝を済ますと、屋台を冷やかしに戻る。ミナトはりんご飴の残った串をゴミ入れに投げるとキョロキョロとまたいつものマイペースっぷりを発揮する。「はぐれないでね」と僕は言うし、「はぐれない」とミナトも笑う。

 さて、家に帰ろう。寒さで本当に低体温症になっては困るし、ミナトの事も心配だから。こたつで温まることにしよう。

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