第15話 レベルアップ
ソウルポイントとは何ぞや。度重なる習熟の度合いが、魂の回廊にまで刻まれた技術、スキルの事である。これは上位存在の洗浄効果や抑制効果さえも打ち消す。
「どういうことだよ……」
何度読んでもちっとも分からない。
結局は字面からしか考察はできないのだが、朱莉にはソウルポイントが出ていないことから何となく条件のほども察せるというもの。
これが出たことによる今までの使用感が変わるのかが気になるところであった。とりあえずそんくらい強化しまくったということだろう。
身体強化。魔力を構造強度の強化やエネルギ出力の補助、をイメージして行う文字通りの身体能力の強化。筋肉の生み出す力を増やしつつ、それで自壊しないように強度も補完する。結果としてその場の軽いジャンプだけでゴブリンの頭の上を飛び越えていけるだけの
エネルギー出力の補助だけが結果に表れているように見えるが、構造の強化によって強靭なバネとなった肉体にエネルギーがぶつけられることで乗算的な強化能力を生んでいるのだ。
誠一郎のそれはもはや頑強な肉体とエネルギー増産の天才的な域にまで達しており、特にゴブリンナイトデビルとの逃走劇での強化は肉体の自壊をしながらも補強と疑似的な再生、溢れ余るエネルギーの限りの躍動は彼の肉体に劇的な変化をもたらした。これが『魔力強化』にも繋がってくる。
魔力強化。有体に言えば『物質強化』ともいうべきその力は体の外にも影響した。体の内側に作用するのが身体強化だとすれば、外側に作用する力こそが魔力強化である。誠一郎の体を一回り、二回りと覆うオーラ状のエネルギーが変化し、纏わせた物質にも身体強化と似たような働きを起こさせる。
成長によって本気で駆けだしたときには地面が陥没し、剣を振るえば刃が欠けるほどの有り余る力を十全に生かすため、地面を、剣を強化してより強い力を生み出す。
これら二つの力によって誠一郎の剣閃は生物を一刀両断するだけにとどまらず、高速で遠近を動き回る敏捷さも獲得したのだ。その習熟度はもはや元々そういう生き物であったと錯覚させるほど。体を動かすそれと同じように魔力を練る動きが馴染んでいった。
固いものに強い力を与えればより強い力が生まれる。
こと、体内とその周り一メートルの範囲内において魔力で強化する力は常人の域にはとどまらない。
人の軛を断ち、新たなる体を与えん。外法の民は魔人をこそ歓迎しよう。
「すごいね……」
「ちょっと強化系は控えようかな」
光の道。そう表現して差し支えない死体の海が、瞬く間に消えた。何とも儚い。シャボン玉の様には儚い。
「経験値貯めるなら朱莉に寄せようかね」
経験値。このようにレベルアップなような急激な変化の前後で増減する体に満ちる敵からの活力をそう呼ぶことにした。俺のようなソウルポイントが生えるようなことはなかったが、朱莉には俺のレベルアップと同様に筋力などの項目が増えていた。
こんなに強くなるならソウルポイントは取っておいて損はない。……のだが。
「誠一郎君のえっち」
「そうじゃなくて……!」
なまじ、これを引き起こしたと思われる現象がセッ────なのだ。最初のレベルアップは死中に活を求めるような極限状態であったが、それを朱莉は知らない。自然とそういうことを遠まわしに求められてるのだと頬を染めているのだ。いや、期待する気持ちが無いわけじゃないけど……!
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