第5話 防護質量

暫く経って。リザルトは次のようになった。


エネミー撃破:レッサーゴブリン16体、ゴブリンアウトロー7体。

宝箱:ナイフ2本、宝石類、鉄製の籠手、ペンダントなどの装飾品。


という感じ。レッサーゴブリンは逃げてしまうのでアウトロー後門の狼の近くにいないと中々倒せ無い。長い時間かけてもこれしか倒せなかったのはそれが理由だ。


宝箱は適当な木箱に入ったものがほとんどで唯一役に立ちそうなのが籠手という。身に着けた感じ、殴ればそれなりに痛いと思う。詰め物もしてあってナックルガードは完璧。剣の握りが変わったのがちょっと違和感。


「あれ」


違うゴブリンだ。背が高い。ほぼ人間と変わらないんじゃないか?

皮の鎧をつけて部下っぽいゴブリンに指示を出している。雰囲気は軍隊だ。装備からして軽装……斥候部隊かな?レッサーの説明にも捨て駒ってあったしこいつらが本命なのかな。


『ホブゴブリン』


ちゃんとした生活を送った健常個体でも屈強な存在。基本的に徴兵されて訓練も受けているが末端には変わりないので戦闘の妙はない。


『ゴブリン』


ちゃんとした生活を送った健常個体。それでも体は小さく、下手をしたらゴブリンアウトローにすら負ける雑魚。しかしコイツの素早さはゴブリンの中では唯一無二なのでギリ普通階級。


「やっぱ辛辣……」


モンスターゴブリン図鑑が少しずつ埋まってきた今日この頃。説明文の毒舌に苦いものを覚えながら考える。素早いらしい標準ゴブリンが七体、槍を持った訓練済みホブゴブリンが一体……。流石に仕掛けるのは無謀か。


奴らはビルの谷間の大通りを病院の回診のように進んでいる。


見つからないうちにその場を離れた。裏路地の道を使いつつパルクール気味に背の低い建物を伝って屋根に上る。パイプや柵で昇っていけばある程度見晴らしのいい高さに────いや、ビルばっかだから見えねぇ。


「ん?」


唯一見える通りの奥に緑色の光、いや塔?があった。あそこを調べてみようか。


スルスルと段差を飛び降りる気分は小学生以来の感動がある。無駄に高いところから飛び降りる遊びをしたワンパクな思い出。それを思い出して自分はこんなに動けたんだなって、着地後も痛くはならない。


たまに動画サイトで流れてくるパルクールは命の危険を感じてない異常者の遊びにしか見えなかったがこんなの味わったらやって見たくもなる。あまりに爽快だ。


通りに着地。びっくりして尻餅をついているレッサーを踏みつけて首元に一刺し。光になって消えていく。


その後の通りに出たアウトローは仮想ホブゴブリンとして丁重に全て葬り去った。


武器は短めの斧だったり剣だったり。あんまり長い得物だと扱いづらいのかな、身長的に。


中にはうまく部下を使うアウトローに時間を使わされたり一撃食らいそうになることもあった。そこで判明した拡張機能の『防護質量』の効果。バリアだ。振り下ろされた斧の刃が腕に当たる寸前で停止している。


硬質な音と共に斧は弾かれ、がら空きになった胴体に蹴りを叩き込んだ。態勢を崩した敵に対する封殺コンボはもはや手慣れたもの。立ち上がることを許さずに仕留め切った。


「ふぅ────危なかった」


アビリティページを確認。HPの100あった数値が半分を下回っている。HPはそのままバリアに充てられるのね。


拡張機能はこれでほとんど効果が判明したのかな。思っても見ない防御機能にホクホク顔の俺。アウトローの斧なら後一発は耐えられるだろう。


今のバリアの感覚で動かせそうなのが分かったし。体の中で動かすMPと同じようにHP、バリアの形状が変化する。武器になりそうなほど鋭くならないが『防護』の名前の通りなら質量攻撃に使えそうだよね。


だが体の周りを膜のように覆っていて、切り出すことが難しい。これが実現したら現状のMPよりも魔法らしいことが出来る。


細々と試していこう。


その決心をした時、閑静な街に銃声が鳴り響いた。

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