第17話 導火線
2年後
「諸君!我々民はずっと貴族たちの圧政に耐えてきた。しかし、我らのような第三階級には重税を課し、聖職者や貴族などの第一、第二階級は広大な土地や財産を持つにもかかわらず、免税されている!これはおかしいことなのだ!持たざる者から多くを搾取し、持てる者からは徴税しない。これは人道に反している!」
「そうだ!なぜ奴らの生活が成り立っていると思っている!我々国民の犠牲の上で成り立っているのだ!」
「今こそ立ち上がろう!持てる者が多く負担し、持たざる者の負担を減らすことこそが、正しき国のあり方だ!」
「そうだ!やろう!我々の声を議会に届けよう!」
王都の市民広場の男の演説に多くの貧民が賛同している。
聴衆の数は徐々に増えはじめ、都中の市民がこの演説に賛同した。やがてそれは、貴族議会の耳に入ることとなった。
「議長、都では市民たちが皆集会を開き、議会に貧民の待遇改善を訴えております。」
「規模はどれほどだ?」
「王都中のほぼすべての市民が参加しています。」
「フン。愚か者どもが。憲兵団を派遣し、即刻ふざけた集会をやめさせよ。」
「しかし、憲兵団の介入で奴らは解散するのでしょうか?」
「発砲許可をだそう。従わぬ者は銃殺しても構わん。そうだな。初めは威嚇射撃だ。所詮奴らは学のない馬鹿の集団だ。すぐに恐れおののくだろう。」
その後、広場に憲兵団が市民に向けて威嚇射撃をする。
「解散せよ!貴様らのしていることは国王陛下への反逆行為である!今なら、罪には問わん!即刻解散を命ずる!」
「おいおい、やばいんじゃねえのか?奴ら発砲してきたぞ。」
市民の多くに動揺の色が見えた。しかし、一人の男の声が場の空気を変える。
「我々は決して、銃剣に屈したりはしない!今こそ、立ち上がるのだ!」
その刹那、聴衆の群れは議会への行進を始めた。
「止まれ!脅しではない!従わぬのなら、命はない!」
「そんなことで、我らは屈さない!」
バーン!
その時、一人の男が撃たれる。
しばらくの沈黙の後、市民の勢いは増した。
「ふざけるな!俺たちを暴力で黙らせる気か?」
「行くぞ」
「おおー」
一人の市民が声を高らかに上げると同時に、市民たちは憲兵団めがけて一斉に走り出した。
「第一陣!装填!放て!」
バババババーン
銃弾の嵐が次々と市民を打ち抜く。数多くいた市民も銃弾の前に倒れる。
市民たちに動揺の色が現れる。
「おい、このままだと俺たちは犬死にだ。生きてこそ自由の価値があるんじゃねえのか?死んだらおしまいだ。」
そして、残った市民たちは手をあげ、降参した。
憲兵団の隊長が声高らかに問うた。
「お前たち市民を先導し、王国へ反逆をした者よ。名乗り出るのだ!さすれば、ここにいる市民の罪は問わん!」
市民たちは下を向いて黙り込む。
しばらくの沈黙の後、一人の壮年の男が名乗り出た。
「私だ!」
「お前を連行する!」
そして、その男は連行された。黒髪黒目の青年はその光景を群衆の中から見ていた。
政治犯が収容される巨大要塞に連れてこられた男は強引に牢へ放り込まれる。
ドサ!
「お前は裁判の後、おそらく反逆罪で死刑の判決がくだされるだろう。わずかな命だ。そこで、おとなしく悔い改めるんだな。」
看守の男はそう言うと、その場を後にする。
しばらくしてから、看守が歩いて行った方向から多くの悲鳴が聞こえる。
「うわあああ!」
ザシュ!キーン!ドサ!
「何かあったのだろうか?騒がしいな。」
壮年の男がつぶやいたと同時に悲鳴が止む。
コツコツコツ
悲鳴が止んだ後、こちらに足音が近づいてくる。
その足音が壮年の男の前で止まった。
男は顔を上にあげる。そこにいたのは黒いコートを身にまとい、東方風の刀を帯刀してい人影だった。さらにその人影の顔をよく見ると、それは黒髪に透き通るような黒色の瞳をした色白の青年だった。
ソウルアビリティ revenge of the losers ただ仁太郎 @tadajintaro
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