第7話 別れと出会い

 それから、僕たちは小舟をこぎ出した。岸からだいぶ遠ざかった。そこで僕たちの緊張の糸は切れたかと思うと、僕と姉さまは抱きしめあって泣いた。どのくらい時間がたったのだろう。泣き疲れた僕たちは気付くと眠ってしまっていた。

 

 川の流れに沿って、どのぐらい流されたのかわからない。そして、気が付くと正面には滝があった。僕は慌てて姉さまを起こす。飛び起きた姉さまは僕と共に脱出を試みるが、幼子二人が大自然の力にかなうわけもなく、僕たちは滝から落下した。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「痛!」


激しい痛みに僕は飛び起きた。


「ここはどこだ。というか何故僕はこんなところにいるんだ?」


記憶が全くない。自分が誰なのかも。どこから来たのかも。そして、名前すらも。

あたりを見渡すが、洞窟のような場所にいるみたいだ。ここにいるのは僕一人。


「ん?なんだこれは?」


首にぶら下がっているペンダントを見ると『ジョン』と文字が刻んである。

これはおそらく僕の名前なのだろうか?それから、僕は行く当てもなく、洞窟をさまよった。


しばらく歩くと正面から光が漏れている。出口が近いのだろうか?そして、その光に導かれるままに僕は歩き出した。洞窟を抜けると目の前には広大な大自然が広がっている。


しばらく森を見渡していると背後から声が聞こえた。


「あなた、どこから来たの?」


振り向くとそこには同年代くらいの女の子が立っていた。腰まで伸びた透き通るような銀髪に白い肌をした碧眼の彼女はどこか神秘的な美しさが感じられる。


「それがわからないんだ。ここにどうやって来たのか。自分が誰なのかも。」


「まさか、記憶喪失ってやつ!?」


「たぶん。」


「ふうん。ちなみにそのペンダントはあなたの?」


「うん。たぶん僕のなんだと思う。ここに『ジョン』という文字が刻んであるから、これが僕の名前なのかもしれない。」


「そうなんだ。じゃあ、あなたはジョンね!よろしくジョン!私はコレット!」


「はい、よろしく。コレットさん!」


「コレットでいいって。ところであなたはこれから行く当てでもあるの?」


「………」


「だと思った。じゃあ、私のところにおいでよ。」


「いいのかい?」


「ええ。困ったときはお互い様だもの。それに見たところあなたは年下だよね。こういう時はお姉さんを頼りなさい!」


「ありがとう!コレット!今日からよろしくお願いします。」

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