　チャプター３８　鳥、雲。

　愛は鏡の前で嘔吐した。少ししてトイレを出た。

　身体に起きた変化に総毛立った。ありとあらゆる想像が頭の中を駆け巡る。自分が言われるであろう言葉、周囲からの目。親からの目。最近いよいよ強くなってきた愛に対する不信感。全てが襲い掛かり、感触がぞわぞわと蘇り、気付けばふらふらと教室に向かっていた。感情がぐるぐると渦を巻いている。爆発しそうだ。最近ではあんなに好きだった本にも集中して臨めなくなってきている。空が。空があるよ。鳥。自由。鎖。脚に、鎖が絡まっているように感じる。重い。上手く動けないよ。鳥。山。緑が。青が。ぶわりと視界に入ってくる。全身を撫でるふわりとした風。気持ちいいな。気持ち悪いな。昔、少しだけ会話したクラスメイト。先程向けられた目と言葉。あいつから言われた一言。感触。

　ああ、ぐちゃぐちゃ。気持ちいい気持ち悪い。どうしようどうすればどうでもいい。これから。これから。これから。どうしよう。どうすればいい。お腹のこれ。これは。だめだ。もう無理だ。無理だよ。パパ。ママ。わたしには。もう