ファイアボール(美少女)
俺は、100万回転生して、
正確に言えば、1.26144の20乗回の
結局、卵椅子の持ち主は現れなかった。
俺以外には、卵椅子を使っている人間もいないらしい。凶悪な魔物が多出する森深くなので、足を運ぶ人間が俺以外にはいないのだろう。
卵椅子の正式名称は、転生器と言うらしい。
『本機の正式名称は、RR-1 改弐型、通称は転生器です』
卵椅子自体が、そう言っていたので間違いない。
1垓回撃っても、
俺は、他の初級魔術も撃ってみたい。
「転生器、人間というものは欲深いものだな。俺は、死ぬまで
浮気心というものだろうか?」
『ラウ様、『英雄、色を好む』という言葉もあります。1垓回も
「そういうものか」
『でも、なぜ、初級魔術なのですか? 中級や上級は?』
「
俺は、まだまだ、修行中の若輩だ」
『100万回も転生しておいて、よくそんなセリフ吐けましたね……普通は、1垓回も撃つ前に、
森の奥深くで、転生器と話すのにも慣れてきた。
当然のように、言葉を解する彼女(女らしい)は、顔なじみが全員いなくなってしまった俺の話し相手になっていた。
『では、ラウ様、人里に下りてみるのはいかがでしょうか?』
「人里……そこで、魔術を学ぶということか?」
ぷしゅうと、気の抜けた音で、転生機は返事を返した。
『私に残る
そこで、他の初級魔術を学ぶのです』
「よし、では、行ってくる」
『わーわー、ちょっとちょっと! お待ち下さい!!』
駆け出そうとすると、転生器に止められる。
『ラウ様、あなたは
それに、自分の身辺の世話をするのも一苦労な筈です』
確かに、言われてみれば、身の回りの世話は
「言っておくが、
『
「誰だ?」
『
俺は、首を捻る。
『ラウ様、私には、ありとあらゆる
「つまり?」
『私の中に、あなたが構築した
「つまり、それは……魔術を人間にするということか?」
『そのとおりです。
私の中には、人間がこう有りたいと思う理想形の
「いや、
『こじらせてますねぇ!!
良いから、とっとと、
どうやら、俺の意見を聞く耳は持たないらしい。
仕方なく、俺は、全力で
宙空に浮かせた火球を凝縮して、俺は、転生器の前に飛ばした。
『なんですか、それ!?』
「え?」
『急に太陽を練り上げるのやめてくれます!? なんだ、その熱エネルギー!? エネルギー問題、その一発で解決しますよ!? 人の身で、なんてもん作り出してるんですか!? 存在が災害どころか天変地異でしょ!?』
「ふふ、よせよ」
『いや、カワイク照れるな!!』
「じゃあ、入れるぞ」
『入れるな、そんなもん!! やめろッ!!』
急に言葉遣いが荒くなった転生器を無視して、俺は、
『いやぁああああああああああああああああ!! 壊れちゃぅうううううううううううううううううう!!』
「大丈夫か、なんか、ガタガタ言ってるぞ」
縦横無尽に揺れていた転生器は、一瞬、沈黙した。
見守っていると――ぷしゅうと、音がして、扉が開き――機内は、空っぽだった。
「ん?」
中を覗き込んで――背後に、気配。
振り向くと、美しい少女が
腰元まで伸びる
絶世の美が、少女の姿をもって、生まれていた。
「第三魔法、
綺麗な笑みを浮かべて、彼女は俺を見上げる。
「どうか、なんなりとご命令を――ラウ様」
「とりあえず」
俺は、着ていた上着を彼女に被せる。
「服を着ろ」
「も、申し訳ございません……」
全裸の少女は、恥ずかしそうに頬を染めた。
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