第33話 結界

 狐、竜の精霊巫女であるナツミ、ハルカは、それぞれの契約精霊がぬいぐるみの様な可愛らしい姿でいるところしか見ていなかった。


 しかしこの追い詰められた局面において、「聖獣体」と呼ばれる、希有な存在に同時進化したことに、唖然とした。


 それは優奈の契約精霊であるタクが大狼として既に聖獣体と成っており、さらに別の聖獣体である鵺と戦っているという極めて希な状況を目撃し、刺激を受け、さらに自分たちの契約巫女が死の淵にあるという特別な条件が揃ったが故の奇跡だった。


 タクが最初、聖獣体に成ったときは訳が分からず、大熊の四つ星妖魔と夢中で戦うのみだった。

 しかし、青龍と九尾の妖狐に進化した雪愛と凛は、即座に自分たちの身に何が起こったのかを理解した。


 自分たちのステータスを確認し、飛行能力があることを知ったユキアは、文字通り昇竜の勢いで空へと舞い上がり、自分の直下にしか結界を張っていなかった鵺の真横まで上昇して氷雪の吐息(ブレス)を吹きつけた。


 強力な電撃を溜めていた鵺のジュキだったが、その状況に理解が追いつかず、まともにその攻撃を受け、帯電を霧散させ、さらに翼による羽ばたきが鈍ったことにより落下していく。

 結界も解けてしまい、そのまま地面に叩きつけられた。


 一方、地上では、強力な呪力を得た九尾の妖狐、凛が、瀕死状態だった大狼のタクに回復呪法を施す。

 消費する呪力は多いが効果は非常に高く、一気に三割ほど生命力が回復したタクは、すぐに起き上がった。


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 名前:タク (モデル:オオカミ)

 状態:聖獣体 

 契約巫女名:優奈 (ユナ)

 生命力:2422 / 7825

 呪力:1205 / 2550

 戦闘力:1622 

 呪術攻撃力:977 

 防御力:853 

 素早さ:405

 特殊能力 咆吼、威圧、狼爪、狼牙、突撃

 

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 名前:雪愛(ユキア) (モデル:青竜)

 状態:聖獣体 

 契約巫女名:春花

 生命力:5333 / 5333

 呪力:6987 / 7525

 戦闘力:1222 

 呪術攻撃力:1220 

 防御力:722 

 素早さ:322

 特殊能力 飛行、吐息(ブレス):氷雪、吐息(ブレス):爆水、癒しの雨、濃霧、生命力回復 (LV3)、全状態回復 (LV1)、竜爪、竜牙、猛毒


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 名前:凛(リン) (モデル:九尾)

 状態:聖獣体 

 契約巫女名:夏美

 生命力:5333 / 5333

 呪力:5023 / 7122

 戦闘力:1233 

 呪術攻撃力:1203

 防御力:788 

 素早さ:350

 特殊能力 生命力回復 (LV5)、全状態回復

(LV2)、全状態回復

(LV2)、結界 (LV3)、幻惑、大火球、火炎竜巻、狐牙、狐爪、吐息

(ブレス):火炎


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 名前:ジュキ (モデル:鵺)

 状態:聖獣体 

 契約巫女名:夜見 (ヨミ)

 生命力:9087 / 10528

 呪力 :5255 / 11528

 戦闘力:2028 

 呪術攻撃力:1512 

 防御力:1132 

 素早さ:512

 特殊能力 咆吼、威圧、雷撃、轟雷撃、雷爆破、大雷爆破、結界 (LV5)、飛行

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 奇跡的な進化により、味方の聖獣体は計三体になったが、ジュキの能力値は依然圧倒的で、一撃で状況をひっくり返せるだけの直接攻撃、呪力攻撃に加え、高度な結界展開能力、豊富な生命力、呪力を持つ。


 不意を突かれて上空から落下、ダメージを受けたようだったが、それでも迂闊に近づけば反撃を受ける可能性がある。

 にもかかわらず、真っ先に突っ込んでいったのは、三割ほど生命力が回復したばかりのタクだった。


 なんとか体勢を立て直そうと起き上がった鵺のその隙を、大狼の長い牙が襲う。

 すれ違いざまに竜牙をまともに受け、倒れたところに、妖狐が「火炎竜巻」の大呪法を使い、鵺の巨体は炎の渦に巻き込まれた。


 ジュキの精霊巫女である夜見は、当初、上空からの一方的な攻撃で簡単に勝てると安心して見ていた。

 しかし現状、三対一という数的不利で、しかもその体躯は墜落。

 今や状況は完全に逆転してしまったことに取り乱してしまっていた。

 このままでは、自分の主(あるじ)が殺される――。


「ジュキ様っ! 精霊体に戻ってください! そうすれば不死身になります、死なずに済みますっ!」


 思わず叫んだが、鵺であるジュキの顔が一瞬、心配するな、とでも言いたげに笑ったように見えた。

 そしてその次の瞬間、炎の竜巻はかき消え、代わりに繭のような半透明の膜に覆われた鵺の体が出現した。


「なんて強力な結界……最大出力の火炎竜巻がいとも簡単にかき消された……」


 凛が呆然と呟く。

 その結界の内部では、鵺が強烈な稲妻を自分の体に纏わせている様子が見て取れた。

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