第25話 炎虎との決着
聖獣化したタクと、四つ星魔獣である炎虎。
ステータス的には、全体的にタクの方が少しずつ上回る。
しかしタクには、優奈の呪力供給という、いわば「時間制限」が存在する。
タクが通常の妖魔に戻ってしまうと、攻撃手段は何も持たない、単なる「ぬいぐるみ」になってしまう。
優奈の能力底上げも元に戻ってしまうことになる。
そうなると、三回生、四回生が不在になってしまった今、勝ち筋がほぼ無くなってしまう。
それを理解しているからこそ、タクが必死に攻撃をたたみかける。
その鋭い爪で互いを牽制、ダメージを与えるが、炎虎も同様に爪で攻撃してくるためにやはりダメージを受けてしまう。
互いに接近攻撃型だが、炎虎には特殊な能力がある。
タクの「突撃」を躱して、一瞬の隙を見つけた大虎は、その身を炎で包んだ。
一見すると焼身自殺でも図っているように見えるが、そうではなく、炎虎自身にダメージはない。
「特殊能力『炎鎧』だ、近づいただけでダメージを受けるぞっ!」
タクが優奈や他の精霊達に「念話」で伝える。
こうなるとタクも迂闊に近づけないのだが、それだとタクに残された聖獣化時間を無駄に消費する。
「水流爆っ!」
滝が横に飛ぶように、大量の水が炎虎に浴びせられ、衝撃によりダメージを与えると共に、炎の勢いが弱まる。
呪力が豊富なハルカによる、彼女得意の水系魔法だ。
その隙を見計らって、タクが再び「突撃」を繰り出した。
今度はまともに炎虎の胴体に直撃し、その巨体は横倒しになった。
すかさず優奈が接近し、斬撃波を放ってさらにダメージを与える。
「優奈、近づきすぎだ! それに君があまり呪力を使うと俺が聖獣体でいられる時間も短くなるっ!」
タクが警告を与える。
「分かりましたっ! でもタク様、無理しないでくださいね!」
彼女は素直にタクの言葉に従って、一旦引いた。
タクとしても連続攻撃でたたみかけたかったが、「突撃」は放った後のタイムラグが大きく、また、弱まったとは言え「炎鎧」に接近した事によるダメージが少なからずあった。
「突撃」自体も、自身にダメージが残る捨て身の技だ。
-----------------------
名前:タク (モデル:オオカミ)
状態:聖獣体
契約巫女名:優奈 (ユナ)
生命力:5927 / 7402
呪力:1980 / 2443
戦闘力:1438
呪術攻撃力:823
防御力:801
素早さ:333
特殊能力 咆吼、威圧、狼爪、狼牙、突撃
-----------------------
名前:炎虎
ランク:四つ星
状態:憤怒
生命力:3260 / 6550
呪力:720 / 1025
戦闘力:1335
呪術攻撃力:628
防御力:612
素早さ:301
特殊能力 咆吼、虎爪、虎牙、噛み砕き、突撃、炎吐息(ファイアブレス)、炎鎧、炎球
-----------------------
と、ここでタクに柔らかい光が降り注ぐ。
ハルカによる、「生命力回復」の呪術だ。
それを真似て、他の精霊巫女達からも同じ呪術を使用してきた。
タクのことを恐れていたサルの精霊巫女、キヌからさえも。
これでタクの生命力はほぼ全回復した。
これに焦ったのが炎虎だ。
素早さでも、タクの方が若干上回っている……つまり、逃げられない。
蓄積されたダメージも、かなりのものとなっている。
炎虎は、最後の切り札、とばかりに自身の二本の牙を伸ばした。
それは刃のように鋭く、鈍く光っている。
タクは、前世で、図鑑か何かで見たことのあるサーベルタイガーを思い出した。
それより遥かに長く、研ぎ澄まされている印象だ。
おそらく、これが「虎牙」の特殊能力。
しかしそれなら、タクの聖獣体にも似たような能力があった。
彼は「狼牙」を発動した。
タクは、自身にも「虎牙」同様、長いオオカミの牙が、刃のように生えたことを察知した。
炎虎はその姿を見て若干怯んだが、追い詰められているその大虎にとって、戦う以外の選択肢は残されていない。
数秒間、にらみ合っていたが、タクの方が先に仕掛けた。
後がない炎虎は、互いに衝突する寸前に飛び上がってその牙で大狼の体を切り裂こうとした。
それを読んでいたタクは、同様にジャンプした後、体を捻り、空中での軌道を逸らすと共に姿勢を横倒しにして牙を炎虎に当て、そのまま一閃した。
聖獣体の渾身の一撃を受けた炎虎は、大ダメージを負った。
それでも豊富な生命力を全ては奪われず、追撃を逃れるためになんとか立ち上がった。
その首元に、銀狼が食いついた。
グワアアァ、と苦しみの声を上げるが、炎虎に逃れる術はない。
いや、一つだけ可能性がある……炎をもう一度纏って、食いついている忌々しい狼にダメージを与えるのだ。
しかし、それをハルカの「氷結」が阻む。
体を氷が覆い、「炎鎧」がうまく纏えない。
-----------------------
名前:炎虎
ランク:四つ星
状態:衰弱
生命力:141 / 5902
-----------------------
「優奈、今なら残った呪力を上乗せして攻撃すれば倒せるっ!」
必死で炎虎の喉笛に噛みつき、自身も身動きが取れないタクがそう指示をした。
「はいっ!」
優奈は、ありったけの力と呪力を込めて、形状を槍に変化させた狼牙剣を炎虎の頭部に突き立てた。
炎虎は、一瞬目を大きく見開き、次にその瞳から輝きを失った。
そしてついに、その巨体は崩れ落ちた。
-----------------------
名前:炎虎
ランク:四つ星
状態:死亡
生命力:0
-----------------------
一、二回生は、四つ星魔獣「炎虎」を撃破した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます