失望


不倫報道には国中で盛り上がるのに、性被害には無関心な日本社会・・

被害者に好奇な目を向けるが 誰も被害者には寄り添わない・・

だから100人レイプされても4人しか告発しないのだ。


何でこんな国なのか・・

刑事の私がいくら本気になっても、被害者が私について来ないのだ。


恐らくこれは戦後の日本の立場に関係が有るように思う。

GHQに支配されていた日本では当時米兵によるレイプが多発していた。

これはウキで調べれば容易に解る。


戦後アメリカ軍兵士による強姦や売春により”GIベビー”と呼ばれる混血児が大量に生まれていた。混血児の多くは父親が誰か分からず、むろん母親からも歓迎されず、母親の親族や地域社会からも排斥された為に、日本は戦前には禁止されていた人工妊娠中絶を認めたぐらいなのだ。


米軍による占領終了後の昭和33年になっても、アメリカ兵の婦女暴行事件の件数は1878件だった。たった1年間でこの数なのだ。

毎日5人がレイプされていたのだ・・


そして・・

それを日本人は許容した・・


戦争に負けた者には権利が無い・・

力がある者には従うしかない・・


弱い立場の日本人の常識は壊れ・・

ねじ曲がってしまった・・

レイプされる方が悪いのだと・・


日本の右翼といわれる人たちですら、アメリカ大好きなのだから、皆が

壊れてしまったのだろう・・

そして・・

恐らくそのレイプの許容が日本の文化になってしまった。

でなければ、いくら何でも100人に4人は少な過ぎる・・





   

◇    ◇




その日、吉田さんが血相を変えて事務所に入って来た。


「マリアが石原の元から逃げたんです。探り過ぎて疑われたそうなんです。今こっちに向かっています。どうしましょう!?」


私が言う。

「取り合えず私が守るよ!ここに来れば大丈夫。」


すると友田さんが、

「吉田君、橘さんに電話してくれる?!直ぐに来てもらおう。」


吉田さんが電話を掛ける。

・・「橘さんですか。ライフの吉田です。申し訳ないんですが直ぐにこちらに来てもらえませんか。緊急事態なんです。はい・・・あ、そうです。早い方が良いですね、よろしくお願いします。」・・



私が吉田君に聞く。

「マリアさんはいつ頃こちらに来るの?」


「多分もう直ぐですね。」


「付けられるって事は無いの?」


「それは無いでしょうね。マリアはしっかりしてますから。」




そんな話をしているとマリアさんが探偵事務所に到着した。

皆んなが緊張感を持って彼女を見る。


彼女は髪を2色に染め分けた、言はゆるお水系の美人で・・

私を見ると、

「こんにちは~、浜崎さんですね。」

と陽気な雰囲気で挨拶をする。


私もこんにちわと挨拶を返すと、彼女は吉田さんの方を向いてスマホを取り出した。


「じゃじゃーん! これは石原のスマホだよ~ん。」

と笑いながら言う。


「おいおいおい!!シムが入って無いだろうね!」


「大丈夫。そんなヘマはしないから。シムは外して別に持っているから。この中には石原が連絡する相手の連絡先が入っていると思うよ。私ね・・これを手に入れたから逃げたんよね。石原は今頃気が付いて焦っていると思うよ。」

とマリアは上機嫌だ。


「だけど・・お前は狙われるぞ。」

「守ってくれるんでしょう?!」


「もちろん守るけどさあ・・マリアの居場所がばれたら守れないかもよ。奴らはネットの闇サイトから殺しを依頼するから・・」

と深刻そうに言うが、マリアはまるで意を解せず言う。


「何を心配してるのよ。私は馬鹿じゃあ無いから大丈夫だよ。」


「でもマリアの写真を石原が持っているだろう?それを廻されたらマジでヤバいよ。」


「大丈夫だって。髪型も変えるしね・・メイクも変えるから・・誰にも分からないよ。」



その時誰かがドアをノックした・・

友田さんが応対をする。

「橘さんお待ちしていました。」

そう言ってソファーのあるコーナーに案内する。



「こちらは警視庁の浜崎刑事です。」

と橘さんに私を紹介して・・

そして・・

「こちらはたちばな警護けいご探偵事務所の橘さんです。橘さんは以前は警視庁の職員だったんですよ。つまり私たち3人は警視庁繋がりになりますよ。」

と言う。


たちばなさんは屈強な体系で姿勢も良いのだが・・

だが、どう見ても60代はかなり回っているように見える。しかし眼光鋭く武術系の男の雰囲気が有る。


たちばなさんが言う。

「私は警視庁を定年退職後に 友田君に誘われて警護けいご探偵たんてい事務所を起業しました。若い社員も数人居ましてね。警護を中心に主に都内で仕事をしています。」


すると友田さんが補足するように言う。

「今はね、世の中が不穏になっていて警護の仕事が多いんですよ。内では警護まで手が回らないから 橘さんに協力してもらっているんです。裕福な老人や弱い子供が狙われる時代だから、警護の依頼は案外と多いんだ。学校の送迎とか 企業のオーナーの警護とか現金や貴重品の輸送とか、橘さんの事務所ではいろいろな仕事をされているんですよ。」


そして

「マリア。こっちに来て!」

と友田さんが呼ぶ。


マリアさんが部屋に入ってくると、

たちばなさん、警護をして欲しいのはこの女性なんですよ。マリアはお金になる情報を握っていて、それで相手に狙われそうなんです。見つかれば恐らく消されますね。」


「なるほど・・命を狙われるからには相当の秘密なんでしょうね。」

「相手は3人で、3億に相当する情報ですね・・」


「それは大変だ。成功報酬1千万で募集を掛けたら何十人も殺し屋が応募しますよ。しかもこちらからは殺し屋が誰かはわからないのに・・相手にはマリアさんの写真がある。変装してイメージを変えるしかないですよね。」


「大丈夫です。そういうのは得意ですから・・」

とマリアさんは他人事のように言う。


橘さんが言う。

「先ず住所を変えてください。あ、スマホもね。ヘアスタイルは思いっきり変えた方が良いですね。もちろん職場も変えなきゃあなりませんよ。」


「その辺りを含めて全て橘さんにお任せしたいのです。」

と友田さん。


「解りました・・マンションには内の社員を行かせます。マリアさん・・あなたは当分私の事務所で生活してください。保護をする為の部屋が有りますから。暫くはそこで大人しくしていて下さい。」

たちばなさん。


「えー・・退屈しそう・・ ちょっと大袈裟過ぎない?!」

とマリア。


「マリア・・お前が殺されたら、俺たちが立ち直れなくなるから・・暫くはいう事を聞いてくれ。」

と吉田さんが説得すると。


「本当にそう思ってくれてるの?! 分かった、大人しくするよ。でも遊びに来てよ!」




橘さんはコーヒーをグッと飲み干すとおもむろに立ち上がって言った。

「それでは友田さん。早速仕事に掛かります。」


そしてマリアの方を見て言った。

「それじゃあマリアさん。一緒に行きましょうか。」


マリアさんは立ち上がると

「は~い、パパ。」

と言って橘さんの腕に腕を絡める。

相変わらず能天気だ。


二人が部屋をでて行くと吉田さんがあきれ顔で言う。

「ったく、人は心配しているのに!」




   ◇    ◇




最近万引きの通報が多くなり、何故か私が出向くことが多い。

増えているのが老人の万引きだ。生活苦というより痴ほうが原因の事が多い。本人はレジを済ませたと思っていたりする場合が多く、泥棒扱いを受けたと逆に怒ったりするのだ。


病気は警察の仕事ではなく、病院の仕事なのだが・・本人には痴ほうの自覚は無いから厄介だ。こういう場合は家族が対処するのが基本だが 一人暮らしの老人も多く徐々にボケていく場合は、様々なトラブルを起こすようになる。


その日も80才位のお婆さんが憤慨していた。

「本当に私はお金を払わなかったんですか?私は1万円持ってたのだから・・見て下さいよ。ほら、お金が減っているでしょう。」

「でも、レシートが無いのだから・・払ってないのだと思いますよ。お金は他の店でも使ったんじゃあありませんか?」


その女性は電車を乗り継いで新宿まで来ているのだ。話し方もしっかりとしていてボケているようには見えない。しかしボケは突然始まるものでは無く、徐々に認知機能がおかしくなってくるのだ。


「お店の方も事情を理解してくれたのですから・・一度病院に行って診断を受けた方が良いと思いますよ。」

私がそう説得すると女性が私に言った。


「主人が亡くなってから、私一人なんですよ・・一人で家を守って来たんです・・」

女性の目からは動揺が読み取れた。


「大丈夫ですよ。都にはこういう場合の相談窓口が有りますから。あなたが困らないように対応してくれます。・・私の知り合いも居ますので・・お婆さんの自宅に出向いて相談に乗ってくれますから・・大丈夫ですよ。」


そう言いながら私は思った。

シャキシャキした元気なお婆さんなのに、今後がどんな人生になるのか心配だ。徐々に認知機能が落ちてきて、体力も失われるのだ。


都内には沢山の老人が暮している。

二人で楽しく暮していても最後は一人になるのだ・・


そして誰でもが徐々に機能を失っていく・・

誰でもが通る道なのだ・・





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