外事課
「友田さんは何処の所属だったんですか?」
「私は外事課です。」
「外事課?テロとかの?」
「いや、大使館担当です。」
「大使館って・・何するの?」
「大使館員は外交特権があるじゃあないですか・・だから彼らの警護を兼ねて尾行するんですよ。それと悪さをしないように見張るんです。」
「悪さをしても外交特権で逮捕できないのでしょう?」
「だから、尾行と言っても 見えるように尾行するんです。『見ていますから何もしないでね・・』って感じかな。朝、大使館の前で顔を合わすと、向こうから『ご苦労さん』って挨拶されますよ。形式的な尾行で退屈な仕事です。」
「でも、もし外交官が何か違法な事をやらかしたらどうするんですか?麻薬取引とか・・」
「まあ、その時は、署長に電話して待機ですね・・それでダメなら署長が上に電話して、それから更に上へ・・最後は外務大臣ですよね。それまでズーっと待機です。でまあ・・逮捕は無いですね(笑)」
「辞められたのは、そこで何かあったんですか?」
「外交官がらみで余計な事をやってしまったんです。違法な捜査を独断でね・・本来はクビなんですけどね・・依願退職って事で‥」
「そうだったんですね・・優秀な方なのにもったいない・・」
「いやあ・・ウンザリしていましたから良いんですよ。 ところで末広真奈美の件は、何か掴めましたか?」
「そうですね・・末広真奈美はやっぱり腐女子でした。彼女が言うにはアニオタの3割はBLオタクで同時にジャニオタなんだそうです。ジャニーズ北川をBLの教祖のように思っている人もいるそうです。・・BLオタクや腐女子の闇は密かに広がっているのかも知れませんよ。」
「そうなんですか・・ジャニオタと腐女子がジャニーズの味方なんですね。」
「そうでも無いんですよ。腐女子はジュリー社長が嫌いなんだそうです。女がBLを支配するのは許せないとか・・要するにBLに女の支配者はいらないってことなんでしょうね。」
「う~ん、何か良く解りませんが・・妄想の迷宮ですね。」
「そうなんですよ。調べれば調べるほど妄想と変態の迷宮なんですよ。BLアニメやBL漫画の販売数から見ても真奈美のいう事に信憑性は有りそうなんです。」
「そうなんですか、そのアニメの販売数とかBL漫画の発行部数などを資料にしてレポートを作成しますので、手伝って頂けますか?」
「良いですよ。・・あの・・先日の間違いは無かったことにしませんか。私は婚約者がいますし・・彼に悪いですから。」
「そうですね、婚約されているのは知っていたのに、お酒の上とは言え 誘った私が悪かったんです。いい女が居るとつい誘う癖があって・・自重します。」
そう言って友田さんは苦笑いをする。
・・本当は違う・・
又誘われるを願っている・・駄目な私だ・・
あなたが悪いんだよ・・キムタクモドキ・・
イケメンには強い筈なのに・・
◇ ◇
レポートの提出日に私にも立ち会ってくれと友田さんから連絡が入った。
事務所に着くとすでにクライアントは来ており私を待っていた。
「ご免なさい、遅くなりました。」
「お待ちしていました。皆さま、こちらがお話していた浜崎刑事です。」
友田さんが私を紹介する。
4人のクライアントはサッとと立ち上がり一人一人が私に挨拶をする。挨拶が済み私が席に着くのを見計らってコーヒーが運ばれてくる。
そしてクライアントの浜田という人が話し始めた。
「私たちは今回の事態を民主主義の崩壊だと考えています。権力者やテレビ局が民主主義のルールを無視して 世間の公序良俗を破壊したのです。私たちはインターネットと言う権力の及ばない場所で 正しい情報を発信し 情報の民主主義を守りたいのです。恐らくテレビや権力者はジャニーズ問題を
と私の目を見て言う。
友田さんが言う。
「はい・・正直言いますとね。私には荷が大きすぎる問題でしてね・・私の尊敬する浜崎刑事に、無理を言って協力をお願いしまして・・ジャニーズを取り巻く隠れた部分を取材して頂きました。それがこのレポートです。」
そして私に
「あの・・浜崎刑事、レポートの説明をお願いできますか?」
「あ、はい・・このレポートの資金の動きと大きさをご覧下さい。推定ですがジャニーズ事務所の得る売り上げは巨額でして資金のプールも1000億円を超えます。
東京都内と周辺に20棟ものビルも所有していまして資金力は大手企業と並びます。通常の営業利益はこちらに有りますが、他にもジャニーズのファンクラブも運営してまして、その会費だけも月に十数億円になります。
後こちらの資料にはファンクラブや一般のファンの推定です。日本に広がるアニメオタクの3割程度がBL・・つまりボーイズラブの読者でしてその中の大半が腐女子と呼ばれる・・ボーイズラブを見て興奮する女たちだと思われます。
こちらがBLアニメや BL漫画の販売数でして、この中に ジャニーズ北村を BLの指導者のように思う 腐女子の一団が居る事が推測できます。
この腐女子達はラインのオープンチャットでトピを立てて情報交換をしているようでして、ジモシーと言うアプリを使って近所の腐女子がグループを作って実際に会う事もあるようです。ですから私が腐女子を装えば簡単に潜入出来そうですよね。」
クライアントの1人が言う。
「なるほど・・この資金力が政治やテレビ局などを縛っているのですね。いやー凄いなあ。」
別のクライアントが言う。
「このファンの中に 性虐待を問題だと思わない人たちが いると言うのが驚きです。この人達は狂っていますよね。」
私が説明する。
「そうなんですよ、この人達はボーイズラブが好きですから、むしろボーイズラブを少年たちに教えたジャニーズ北村に感謝しているのです。手を出したのがジュリー社長なら許さないと言っているそうですから。」
1人が言う。
「うー・・異常だ・・・」
それを聞くと全員腕組みをして考え込んでしまった。
たぶん呆れて居るのだろう
「分かりました、貴重な情報を有難うございました。私たちの情報発信に使わせて頂きます。今後も情報収集を続けて頂けますか?」
「もちろんです、今後も協力させて頂きます。」
と友田さんが言う。
帰り際にクライアント全員が私に名刺をくれて
「有難うございました。失礼します。」と挨拶をして帰って行った。」
私が言う。
「みんな若いですね。若いのにしっかりしていて・・まだ日本も捨てたものじゃないですね・・」
「今回はね、かなり報酬を頂きましてね、由美子さんにも払いますよ。」
「いえ、規則でお金は受け取れないです。」
「ああ、そうでしたね・・じゃあ何か美味しい物でもご馳走します。食べちゃう物なら問題ないでしょう?」
「そうですね、じゃあ今から行きますか?私、お腹がすいちゃって・・」
「それじゃあ今から 美味しいお店に連れて行きますよ」
と微笑みかける。
・・何でそのタイミングでウインクするのよ・・
・・嫌だなあ・・キムタクモドキ・・
◇ ◇
それから1時間ほどして私たちはベッドの中に居た・・
セックスの嵐の後・・放心して天井を見ている。
「由美子さんは荒木君と結婚するの?」
「うん・・するよ。」
「好きなの?」
「うん・・好き。」
「じゃあ、こういう事は止めなきゃあね。」
「だから、友田さんが誘うから悪いのです・・」
「ずるいなあ・・又僕のせいにして。」
「私・・病気なんですよ。恋愛依存症なんです。」
「何それ・・」
「恋愛の初めはドキドキするでしょう。そのドキドキに依存してるんです。」
「ドキドキにねえ・・」
「だから友田さんに誘わないで欲しいの・・」
「でも誘われたいんだろ・・」
「うん・・誘われたい・・」
「悪い女だなあ・・」
「言わないでよ・・わたし泣きそうなんだから・・」
そう言った途端 私の目から涙が溢れた。
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