群れ・・

窓から見下ろせば 大都会・・

人々の群れ・・

いつかTVで見た おさかなの大群みたい・・


前も・・後ろも・・右も・・左も・・

さかな・・さかな・・魚・・魚・・


前が止まるから止まる・・

周りが横に行くから横に行く・・

さかなに考えなどない・・

周りの考えを自分の考えだと勘違いしているだけだ・・


離れるな・・離れるな・・離れるな・・

距離を保て・・距離を保て・・距離を保て・・

その隣も・・その隣も・・その隣も・・

合わせろ・・合わせろ・・合わせろ・・


大都会・・人々の群れ・・

窓から見下ろすと・・

人の社会もおさかなの社会も変わらない・・

・・・・

・・・・


「何を見ているの?」

そう言って友田さんが私の肩を抱く・・


「友田さんの責任ですよ・・私はこういう関係にはなりたくなかったのに・・」

「ずるいなあ・・僕の責任にしちゃうわけ?・・」


「私は酔っていたから・・」

「そんな言い方はずるいよ、由美子さんも誘ってたじゃあないか・・」

そう言って私を抱き寄せ首筋にキスをする。

彼は大人の男だ・・

女の扱いに慣れている・・


私はこちらから仕掛ける肉食女子なのに、友田さんには逆にやられた。私は誘惑される快感に酔って 身を任せてしまったのだ。

  


「これが末広真奈美の行動パターンなんだよ。出社と退社の時間帯とか利用する美容院・良く行く本屋・食堂・・休日の過ごし方が書いてある。」

そう言って友田さんはタブレットを見せる。


「さすがに探偵社ですね・・ これ、私のスマホに送ってくれます?」

「うん、Gmailに送っておくよ。」

そう言って流し目で私を見る・・


その・・キムタク気取りが気にさわる・・・




  ◇    ◇




「こんばんわ。」

私は偶然を装って声を掛ける。


「あ・・浜崎刑事さんですよね。」

と驚いたように私を見る。


「末広さんでしたよね・・この店に良く来るんですか。」


末広は警戒した面持ちで答える。

「ええ、時々ですけど・・浜崎刑事さんも良く来るんですか?」


「やめてよ、刑事さんなんて・・今は私的な時間なんだから。私ね・・BLが好きなのよ。何かねBL読んでいると別の世界に居るみたいで心が解放されるのよね・・末広さんもBL?」


「あ、はい。私もBLを探しに来たんです。浜崎さんもBL好きなんですか?意外ですね・・」


「あっ、時間だ! 私ね、この近くで待ち合わせをしてるの。じゃあね・・」

私はここで切り上げる。ファーストコンタクトは見切りが大事なのだ。


  ◇   ◇


数日たった日曜日の事だ。私は広末を尾行している・・

末広真奈美はぶらぶらとショッピングをしている・・

本屋に入りそうだ・・


私は先回りをして本屋に入りBL本のコーナーの前で本を探す振りをする。今日は濃い目の化粧でハイヒールだ。彼女は気が付いてくれるだろうか。


「こんにちは。浜崎さん・・今日は決まってますね。」


「あら、末広さん、又会いましたね。今日は私 お休みなのよ。あなたも?」

私は驚いたと言う風にそう応える。


「ええ、私もなんです。でも、びっくりしました。浜崎さんってハイヒールを履くとモデルさん見たい。別人かと思いました。」


「私 背が高いからね。でも末広さんも今日は何か可愛い・・ファッションのせいかなあ。」


「私、休日はこんな感じなんです。」

と、末広は屈託なく微笑む。警戒している様子はない。


「ねえ。BL好き同士でお茶でもしない? 何か用事でも?」


「いいえ、今日は暇ですから・・」


「じゃあ、行こうか・・」

と私が目で誘うと・・


「うん・・」

そう頷いて真奈美は笑顔を見せる。その仕草しぐさががとても可愛い。

彼女の方が私よりかなり年上なのだが・・



喫茶に入ると私はメロンソーダのクリームフロートを注文する。

「私も同じのを。」と彼女が言う。

真奈美は私を見ながらニコニコしている・・


「末広さんって私より年上でしょう?何だか私より可愛いね・・」

私がそう言うと、それには答えず 彼女は言う。


「私ってカッコ良い女性が好きなんです。浜崎さんってモデルみたいで、しかも刑事でしょう・・まるでアニメの登場人物見たい。」


「私が? そう見えるんだね・・」


「自分で気が付いていないんですか? 浜崎さんって超カッコ良いんですよ。すれ違う人が横目で見ているもの。」


そこまで言われるとちょっとくすぐったい。

「本当に? ちょっと誉め過ぎじゃあなあい。」


それには答えず、真奈美が言う。

「私達って友達になれますよね・・」


「そうだね、BL繋がりの友達にね。」


「本当に?! 嬉しい!!」

真奈美は満面の笑顔でそう言う。雰囲気と言い言葉使いと言い彼女の乗りはアニメの世界の乗りだ。何かのキャラに嵌まっている感じがする。


「ねえ、次の休日にデートをしようよ。なんか話が合いそうだから・・」

私がそう誘うと彼女は顔中を笑顔にして

「うん!」とオーバーに頷く・・

とても可愛い・・

これもアニメで見たような情景だ・・


彼女の素顔は完全なアニメオタクだったのだ。




   ◇   ◇



その日私は強めのメイクをして ヒョウ柄のコートを着た。足元は赤のハイヒールだ。鏡の前に立つと全く現実離れをしていて笑える。まるでアニメの世界のイケイケ女だ。

でも末広真奈美は喜ぶはずだ・・


「お待たせ!」

私が声を掛けると、振り向いた真奈美は目を見開いて、

「すごーい!カッコ良いじゃあ無いですかあ!」

そう言って私と腕を組んでくる。


真奈美はまるで彼氏にでも話すように甘えたアニメ声で言う。

「ねえ・・ご飯を食べに行こうよ。私お腹がぺっこぺこ。」


「じゃやあ寿司屋でも行こうか。食べたい量だけ食べれるから。」

「うん!」

真奈美は背が低いので私を見上げるように返事をする。

めちゃ可愛い。


食事をして満腹になると、アニメのフィギュアを展示している店などを見て回る。

・・どうしてアニメのフィギュアってエロっぽいんだろう・・

・・若者はエロの対象が人間からアニメに移っているのだろうか・・

・・現実の人間よりフィギュアの方が妙に生々しい・・


「ねえ、浜崎さん・・私の部屋に寄っていく?」


「良いけど、近いの?」


「うん、タクシー止めるね。」


タクシーに乗ると途中でコンビニに寄って 果物やスイーツを買う。

彼女のアパートはけっこう遠く、30分ほど掛かって到着した。近くに公園や学校が有る、閑静な住宅街のアパートだ。


「お邪魔しまーす・・」真奈美の部屋に入って驚いた。

壁一面が棚になっていて アニメ漫画で埋め尽くされている。

「凄いねこの本・・何冊有るの?」


「分からないです。中学生頃から本が捨てられなくって・・コーヒー入れますね。」

部屋は綺麗に掃除がされていて、それを見れば彼女の性格がわかる。


「この部屋・・男の匂いがしないね。彼氏は居ないの?」


「私・・リアルな男は苦手なんです。会話もダサいし・・リアルな男には恋愛感情が湧かないんですよ。」


「あ~、何かわかるなあ・・だからBLなのね。」


「だってボーイズラブっていけない事でしょう。だから清純なんですよ。周りが理解してくれない状況が本当の愛を育てるのです。そう思いませんか?」


「確かにね・・周りが理解してくれない状況だと愛がクッキリ浮かび上がるかもね・・しかもタブーだと刺激もあるもんね。でも腐女子って何に萌えるんだろう・・真奈美さんはどう思うの?」


「何なんだろう・・これはリアルな恋愛じゃあ無くて・・ファンタジーの世界観なんですよ。私はファンタジーの世界に居たくって どっぷりって感じかな。」

そう言って真奈美は笑った。


「ねえ、真奈美さんはジャニーズと会う機会が有るでしょう? 今回の騒動をどう思っている?」


「あれはですね・・あれは子供が相手ですから・・犯罪ですよね。」

真奈美は低いトーンでそう答える。


「そうだよね、酷い話だよね。でもさあそれが切っ掛けになってBLなった子たちも居るんじゃあないかと思うのよ・・それはどうなんだろう?BLはダメって言うの?」


「それは・・」と真奈美は口籠くちごもる。


「正直に言うとね・・私の元彼がBLだったのよ。それでその関係に巻き込まれてどちらとも関係してしまったのよね。そこからBLが好きになったの。」


「え、そうなんですか? 凄ーい! 素敵じゃあないですか。そういうのって憧れます。」


「でもね・・私ってジャニーズを見るとBLを連想するのよ。それって捉え方が世間とずれているのかもね・・」


「そうでも無いですよ、ファンクラブの女性の大半は私たちと同じですから。だってジャニーズの魅力ってそこでしょう?!・・だから私はジャニーズを使ったBLドラマを企画したんです。その結果は大当たり。視聴率も高かったし・・みんな感じている事は同じですって・・」


「そうだよね・・あのBLの雰囲気が良いんだよね。」


「そうなんですよ。BLの雰囲気が妄想を刺激するんです・・私の中では○○君と○○君はBLだったりして(笑) 腐女子の中にはジュリー景子が手を出したのなら絶対キモイから許せないって言っている人が多いんです。男同士なら良いけどね・・」


「え、腐女子の集まりが有るの?」


「LINEです。オープンチャットですよ。腐女子集まれ~みたいな・・自分が腐女子って恥ずかしくて言えないじゃあないですか。だから匿名で盛り上がるんです。ジャニーズ好きの腐女子集まれ~ とかね(笑)」


「なるほどね・・腐女子ってジャニーズファンが多いのかあ・・」


「私は殆どだと思いますよ。アニメオタクの3割ぐらいは腐女子でジャニオタだと思います。」




アニオタの3割とは驚きだ・・

それが事実なら大変な人数になる。

この女たちはジャニーズ性虐待をBLととらえているのかも知れないのだ。


女性のレイプ事件を好奇の目で見る男性が居るように、ジャニーズ問題をBLとして捉え それを好む女たちがいるという事だ。いや、ジャニーズ北川氏をBLの教祖だと思っているのかも知れない。ジャニーズのBLを育てたのだと。


アニオタの人口が1000万人と推計される現代・・

300万人の女がBLを好み、その目でジャニーズを見ているのだとしたら空恐ろしい。


芸能事務所が視聴率でテレビ局を支配し、BLの文化で多くの女性を支配する・・

多くの隠れ腐女子が、ジャニーズ性被害問題を好奇の目でとらえ楽しむ・・

隠れた腐女子文化が・・闇にうごめく怪物のように育っている・・


大人の世界なら、数ある異常な性癖の一部だろう・・

しかし、子供の性被害を性癖として許し、何も無かったことにする・・

芸能界とテレビの癒着は、残忍な性の怪物を育てる土壌となっているのだ。


恐らく日本はこの恐ろしい問題を徐々に無かったことにする・・

被害者の事より、ジャニーズを残す事の方が大事なのだ・・

それで良いのか?

こんなバカな日本で良いのか?


何か対抗手段はあるのか・・

ネットテレビはこの怪物に勝てるのだろうか・・

私は友田さんに何て報告をすれば良いのだろうか・・







****

登場人物


浜崎由美子➡刑事

友田大樹➡キムタクモドキ

末広真奈美➡末広涼子モドキ


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