ジェンダーバイアス
見るともなく見ていた芸能人の結婚報告記者会見・・
「どちらが先に告白しましたか?」
「どちらの方が焼きもち焼きですか?」
「家ではどちらが威張ってますか?」
質問者の質問を聞けば 質問者の頭のレベルが分るものだ・・そもそも何でこんなに騒ぐのか・・TVも余程ネタが無いんだろうな・・そう思っていると質問者がこう言ったのだ。
「所で、奥様の手料理は食べられました?」
何だとお~・・!!
トップ女優の彼女が こんな売れてないイケメンの為に手料理を食わすのかよ!! つい突っ込みを入れてしまう。これこそがジェンダーバイアスなのだ。
ジェンダーバイアスとは、男女の役割について無意識に固定観念や偏見を持つことだ。 例えば、”女性は結婚したら仕事を辞めて家事や子育てに従事しなければいけない”とか ”結婚したら女は夫のお世話しなくてはならない”とか ”家事は女の仕事”という思い込みである。ジェンダーバイアスはとりわけ女性への差別を生みやすいのだ。
事も有ろうに全国版のテレビで このレベルなのだ・・テレビが嫌われる理由を製作者たちは分かっているのだろうか・・ 製作者の頭のレベルを疑ってしまう。
私が「奥様の手料理は食べられました?」に反応したのには訳があった。最近それに関連した事件が有ったのだ。
◇ ◇
妻の
「紅茶でも入れようか。」
と夫に声を掛けた。すると夫がこう言ったのだ。
「お茶は良いから早く夕ご飯を作ってよ!腹ペコなんだよ。」
疲れていて苛立った妻は言った。
「腹ペコだったらゲームなんかしてないで何か食事を作ったら!あなたは早く帰ってるんだから 晩御飯作ってくれても良いでしょう。」
すると夫は怒った声で、
「俺の母親はな、どんなに遅く帰っても晩飯は必ず作ってくれたんだ。変な事をいうなよ!」と言ったのだ。
その言葉にカチンときた妻は
「あんたねえ!私はあんたの母親じゃあ無いんだよ!そんなに甘えたかったら実家に帰ったら!」と突き放すように言った。
「何だと!!この野郎!!」
ゲームでテンションの上がっていた夫は ぶち切れて妻の顔をグーで殴ったのだ。口の中を切った妻は口の中に血が広がるのを感じて逆上した。妻はテーブルの上に有った果物ナイフを握ると 夫の胸に突き立てたのだ。ナイフは深く刺さり肺にに達した。
夫が倒れて動かなくなると妻は我に返って 慌てて救急車を呼んだのだ。夫は外傷性ショックで意識を失ったものの 救急隊員の処置が早く 一命をとりとめたのだった。
当然妻は殺人未遂で逮捕されたのだが・・私としては妻の
「私はあんたの母親じゃあ無いんだよ!」
彼女の言い分はもっとだ。10時を過ぎて帰ってきて あれをしろこれをしろと言われたら 私だってそう言うだろう。まして母親を引き合いに出されたらママの所に帰れと言いたくなる。
私は荒木君と同棲しているが・・彼は私と一緒に料理を作ってくれるし、洗濯もしてくれる。彼は母親に干渉されるのを嫌い 何でも自分でやる癖がついているのだと言う。私が体調が悪い時などは、何から何までやってくれるので、彼に申し訳ないと思ってしまう。私は彼女なんだから やって貰ったら申し訳ないと思っているのだ。ジェンダーバイアスは私にも掛かっている。
何から何まで妻にやってもらって 申し訳ないと感じている夫はどの位いるのだろうか?専業主婦ならともかく 共働きの男と女は 共同で家事をやらなければ女が参ってしまうのだ。
男目線から言えば
◇ ◇
男でもなく、女でもない奈々子の場合は ジェンダーバイアスはどう働くのだろう。
奈々子と一緒に暮らすようになって 部屋が見違えるほど綺麗になった。奈々子は掃除をするだけではなく 壁に自作の絵画を飾ったり テーブルや玄関に花を飾ったりするので とても快適な生活空間になってきたのだ。
「私は掃除とか苦手なんだよね 奈々子が居てくれると 部屋が超綺麗にになって・・ これってセンスの違いだよね。」
私がそう言うと、
「まあね・・私はいちおう美大卒だからね。偏差値の低いお馬鹿大学だけどさ(笑) 造形とかデザインとか部屋のレイアウトは真面目にやったから・・」
「彫金とかも大学で習ったの?」
「いや・・卒業後に就職したアクセサリー関連の会社で習得したと言うか・・壊れたネックレス部品を直す部署で彫金などの技術を習得したのよ。」
「素敵な会社じゃあないの・・ どうしてその会社を辞めたの?」
「私がXジェンダーだって知れたから・・まあ、気持ち悪がられたと言うか・・適当な理由を付けられて解雇されたんよ。」
「それで・・ それからどうしたの?」
「お祖母ちゃんのブティックで店員をしてたのよ。だけどお祖母ちゃんが急に倒れて、急に亡くなったから・・ ブティックは息子さんが引き継いだんだけど、私は息子さんに嫌われてたから・・」
性的マイノリティを それが理由で解雇する会社は無い。 別の理由を付けて解雇するか、働きにくい雰囲気を作って本人が辞めるように仕向けるのだ。そのやり方ならば 会社の体裁は保てるし法的責任は問われないからだ。法律で差別を禁じても抜け道などいくらでもある。
「私はデザインとか造形の方から考えるんよね。ただ綺麗に掃除するだけでは満足しないのよ。部屋のレイアウトから考える癖があるから・・」
私たちの話を聞いていた荒木君が口をはさんできた。
「部屋のレイアウト・・ それって大学で勉強してたの?」
「美大はデザインとか造形とか部屋のレイアウトなんかも研究範囲なのよ。」
荒木君がぶつぶつと独り言のように言う。
「そうなのか・・デザインに造形・・レイアウトか・・ 」
荒木君が父親に電話をしている。
『そうなんよ・・デザインとか部屋のレイアウトとか・・いや、知らなかったんよ。今聞いて・・そうだろう?・・うん・・いちど話してみたら良いよ。』
電話を切ると荒木君が奈々子に言った。
「あのね、いま父と話したんだけど・・父の会社で奈々子のセンスが役に立たないかなと思ってさあ。もし出来るんなら・・いや、もしそういう事になれば親も喜ぶし、僕も嬉しいよ。」
「でも私に出来るかなあ・・建築科じゃやあ無いからね・・でも大学でやった事が役に立つんなら嬉しいよ。」
「うん・・父は乗り気だよ。週末にこっちに来るって言ってたから。」
奈々子は荒木家の養子になっているのだから、彼女がお父さんの仕事を覚えれば・・それはお父さんは嬉しいだろう。この話がうまくいけば奈々子の進む道が開ける。私は自分の事のように期待が高まってきたのだった。
◇ ◇
荒木君のお父さんが言った。
「奈々子がね・・やる気が有るのなら専門学校に入って欲しいんだよ。学校は八王子に有るんで、高尾の実家から目と鼻の先だから 自宅から通えるんだよ。2級建築士なら2年で取れるし、4年頑張れば1級だって取れるんだ。会社で仕事を覚えながら学校に行けるんだから・・もちろん社員なんだから給料は払うんだよ。」
「私でも大丈夫なんですかねえ・・偏差値とか・・」
「ああ、大丈夫だよ。AO入試なら殆ど受かるから。私の知り合いが学校に居るのでね。何の心配もいらないよ。私の会社の社員として行くんだから 学費は会社の経費として支払うから学費の心配はいらないしね。」
お父さんの誘い方が上手く 奈々子はすっかりその気になった。そして間近に迫ったAO入試の申し込みをすることになり、その為に早急に奈々子は 高尾の実家に引っ越しをすることになった。
「奈々子の部屋は直ぐに準備するから・・出来るだけ早く越してきてくれよ。お母さんが聞いたら泣いて喜ぶぞ。」
そう言ってお父さんは意気揚々と帰って行った。
・・引っ越しの前日・・
私達は最後の夕食を三人で食べた。三人で暮らした時間がとても楽しく、奈々子が部屋を出て行くと思うと 私は寂しくてしょうがない。
「奈々子が居なくなると私し寂しいわ・・やだ、何か泣きそう・・」
「私、週末にはこっちに泊りに来るから・・」
見ると奈々子も目から涙が溢れている。
「おいおい泣くなよ、そんなに遠くじゃあ無いって・・」
と荒木君が笑うのだが、私は寂しくて胸が苦しい。胸がつかえて御飯がのどを通らない。
「荒木君・・私、今夜は奈々子と一緒に寝て良いでしょ?」
「分かったよ、今夜は抱き合って寝たら良いよ。」
と荒木君は苦笑している。
その夜私は奈々子のベッドで奈々子に添い寝をしたのだった。
それが間違いだった・・
私は奈々子と抱き合っている内に、私の淫乱に火がついてしまったのだ。奈々子も興奮して・・私は奈々子の興奮したものを受け入れてしまった。
混乱しながら私は直ぐにイッテしまい、奈々子も私のお腹の上に出して果てたのだ。
激情が去り我に返ると私はひどく動揺した。こんな筈ではなかった・・きっと荒木君には聞こえている・・私は混乱した頭を整理しようと焦った。
奈々子が言った。
「だめだよ・・荒木君に謝ろうよ・・こんな秘密はダメだよ。」
奈々子の言う通りだ、こんな秘密は許されない。彼は奈々子との動画は見ている。誤れば許してくれるはずだ。
「そうだよね・・こんな秘密はダメ。でも私が誘ってのだから、私が謝るから・・」
私はそう言ってベッドを出ると荒木君の部屋に入った。私は荒木君の側に行って静かに言った。
「ごめんなさい・・わたしが奈々子を誘ってしまったの・・」
「うん・・聞こえていたから・・」
荒木君は私を抱えて優しくキスをしてくれる。私はほっとして彼の体に腕を廻す。その時私の後ろで声がした。
「由美子は悪く無いから・・私が由美子の体にキスをしたから・・」
いつの間にか奈々子が部屋に入って来ていたのだ。
荒木君が言った。
「大丈夫だから、奈々子もこっちにおいで・・」
奈々子がおずおずと近寄って来る。荒木君は奈々子の手首をつかんで自分の方に引き寄せる。そして奈々子を抱えると奈々子にキスをした。見れば奈々子はうっとりとして荒木君の愛撫に応じている。
それを見ると私の淫乱に火が付いてしまう。私は荒木君と奈々子の間に割り込んで荒木君にキスをする。そして奈々子に指図した・・
「奈々子・・荒木君にフェラをして・・」
奈々子が荒木君を含むと、荒木君が切なく ああ・・と吐息を吐く・・
嬉しかった・・
私はこうなる事を望んでいたのかも知れない。これで安心して奈々子を送り出せる。そして荒木君が私の変態に合わせてくれたことが嬉しくて 私は激しく彼の唇を求めた。長く長く・・長いキスをして唇を離すと・・彼が言った。
「ああ、イク! イッテしまう・・・」
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