第8話 厳しい政治活動
はぜ、はぜ、息が上がるほどの疲労の中で、今日周った部活の五件目の事である。
『ボディービルダー部』の大きな看板がある。嫌な予感しかしない。
「伍代さん、資料は?」
「はい、部員は一人、活動内容は不明。何故、同好会として登録されているか疑問です」
よーし、入るぞ。ノックの後でドアを開けると。
「ひー誰です?怖い、怖い、助けて……」
はい?
それはTシャツに短パンのムキムキマッチョの女子が脅えている。悪い意味で予想が外れた。しかし、面倒臭いコミ障害には違いない。
「あのー第二生徒会の者ですが」
「なんですの?わたしは襲われるのですか?」
「いや、安心していいから」
「は、はい、信じます」
あーやっぱり面倒臭い。話を聞けば、極度の人間不信からボディービルダーを始めたとか。しかし、ムキムキマッチョになっても怖いモノは怖いとのこと。
さて、帰るか……。
「浅野さん、ここで逃げたら、人間失格です」
そこまで言うのか?
「だって、面倒臭い、コミ障害だもの」
「ふう~」
伍代さんが大きく息を吐く。
「ここは電話番号を交換として友達になっては?」
軍師の伍代さんの言うことだ、渋々、スマホを取りだして、電話番号を交換する。
「これで友達だ、我が第二生徒会の為につくしてくれ」
「ありがとうございます、ありがとうございます」
やはり、友達も居なかったか。疲れた、今日はもう帰ろう。
疲れて果てて、ぼっーとして駐輪場に向かうと。居たのである。そう、第一生徒会長こと『菊一 尚美』である。
「くくくく……これは偶然、負け犬の浅野さんではありませんか」
あー最悪だ、このタイミングで菊一に会うとは。
「それで何用?」
わたしは嫌悪感をぶち当てると。
「あら、色々活動しているらしくて、ほんの労いのつもりです」
菊一はヘラヘラ笑いながら答える。最近の零細部活巡りが耳に入ったらしい。
一緒にいた伍代さんが目をキリリとして。
「リコール活動の準備運動です。この高校は生徒過半数の署名があればリコール、つまりは再選挙です」
すると、菊一の表情が変わる。
「ゴミ、どもの分際で要らぬ知識をお持ちで」
「前回選挙で僅差、リコールの署名だけならそんなに高くない壁ですものね」
伍代さんが更に挑発的に言葉を選ぶ。この伍代さんが味方で良かった。絶対に敵にまわしたくないタイプである。
「不愉快ですわ、ごきげんよう」
菊一は自転車に乗ると去っていく。ふ~う、助かった。流石、第二生徒会の軍師だ。ところで、リコールって何?
その質問に伍代さんは「スマホの検索エンジンにかけなさい」と言う。
何かとても恥ずかしい気分だ。
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