第3話 婚約者セレネイ

 2年なんてあっという間にすぎるのね……


 私は9歳になり、私の可愛い妹2人も5歳になったわ。今では私がデザインして作られた服やドレスしか着なくなった双子の妹は、いつも私にベッタリとひっついてくれてるの。

 幸いにして私は廃太子となったから、お勉強も通常の貴族がするような程度で構わないし、武術については騎士たちが私の見た目に騙されて、物凄く優しく教えてくれるから、ちょうど良い休憩時間になってるの。


 そんな私も9歳になった事でいよいよ隣国からセレネイ様がやって来る事になったのよ。

 セレネイ様は私より一つ下なんだけど、前世のゲームでは儚く大人しい少女だったわ。本物のセレネイ様はどうなのかしら? 

 私はワクワクしながらお待ちしていたの。

 

 そうそう、お母様は私が演技していると今も信じてらっしゃるけれども、何年もこうして過ごすうちに私自身はもう身も心も【オネエさん】になってしまったの。ただ、バイセクシャルは変わらないけれどもね。だから私は美少女のセレネイ様を全力で愛して見せるわ。


 隣国から来られたセレネイ様はそれはそれは可愛らしい美少女で、でも私を見る目は儚いと言うよりは期待に満ちた眼差しに見えるの…… どうしてかしら?


 我が国では王族は婚約者が出来たなら、例え何歳であろうとも同じ部屋で過ごす事になるのだけど、今までの長い歴史1500年の中で間違いが無かったのはお互いの専属メイドが成人するまでは同室で過ごすからなの。勿論、私とセレネイ様もそうなのよ。


 部屋に入った私とセレネイ様はお互いを良く知る為にお話する事になったの。


「セレネイ様、ようこそいらっしゃいました。私が婚約者となるカイル・ウォン・ヒルデリック、9歳です。ゴメンなさいね、驚かれたでしょう? こんな姿でお出迎えして。でも、私は心も女性だからどうか許してちょうだいね」


 一息にここまで私が言うとセレネイ様は首を横にブンブンと振りながら興奮して喋り出したの。


「あっ、あの!! ワタクシがカイル様の婚約者となる、セレネイ・クリュ・フォローです!! ふつつか者ですが、どうかよろしくお願い致します! でも、本当に良かったです! こんな優しそうなオネエ様が婚約者だなんてっ!! ホントに夢のようですわっ! カイルオネエ様とお呼びしてもよろしいでしょうか? あ、もしかしてオネエ様は心が女性だという事は男性しか愛せないんでしょうか!?」


 今、気がつきましたってお顔でそう言うセレネイ様を軽くハグしてその耳元で専属メイドに聞こえないように私は囁いたの。


「大丈夫ですわ、セレネイ。私は男性も女性も両方、愛する事が出来ますの。でも、こうしてこんなに素敵な婚約者が出来たんですもの、セレネイを力いっぱい愛する事をここに誓いますわ……」 


 ドサクサ紛れに呼び捨てにしたけれど、私の愛の告白に耳まで真っ赤にされたセレネイは本当に可愛いわ。


「あの、ワタクシ、実は…… 男性が怖いんですの…… でも、カイル様のお姿を見て、この方ならば大丈夫だと安心してしまって…… 本当は外見で決めたりするのはダメだと分かってはいるのですけど…… でも、心もお優しいカイル様に、ワタクシはもう堕ちてしまいましたの…… どうか、末永くワタクシを可愛がって下さいませ……」


 キャーッ、本当にこんな可愛らしい娘を何でゲームの中のカイルは嫌がらせなんてしたのかしら?

 私にはこれでもかと愛でて、愛する事しか出来ませんわ!


 こうして、私とセレネイの愛は始まりましたのよ。双子も【お姉さま】が2人になったととても喜んでくれたの。良かったわ。


 何故か弟で王太子であるアースからは憎悪の眼差しを向けられるけれども、私とセレネイの仲の良さはもう王宮全体に広まっているから、アナタの出る幕はないわよ。


 弟のアースも婚約者が決まったわ。もう一つの隣国であるアゲンスト国の第一王女様よ。

 これもゲームとは違う展開になったわね。本当ならアゲンスト国の第一王女は大国であるゴールッフ帝国に嫁いで行く筈だもの。

 やったわ! 私はまた一つ課題処刑回避を乗り越えたようだわ!

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