第2話 カイル王子、廃太子になる
僕の計画は上手くいった。5歳の誕生日の2日前に倒れて高熱が出たフリをしてベッドで三日三晩寝込んだんだ。
母上は前回と同じように心配してくれたが、父上は今回は見舞いにも来てくれなかった。
それはそれで好都合だったので、僕は母上にこれから僕の言動が可怪しくなるけど心配しないで下さいと伝える事が出来た。
そして僕は高熱が冷めて目覚めたフリをした時に専属メイドとの会話を始めた。
「カイル様! 良かった、お目覚めになったのですね!!」
「うーん、アラ、私ったら、まーたお熱を出してしまったの? 心配かけてゴメンねぇ、メイリー」
「カッ、カイルさ、ま、?」
産まれた時から私専属のメイドだったメイリーが私の言葉に固まってしまったわ。どうやら上手くいきそうね。
「ヤダッ! どうしたの、メイリー? そんなに驚いた顔をして?」
私の口からスラスラ出てくる女性口調にメイリーが目を見開いて口に手を当てて驚愕している。
「カイル様! どうなされたのですか? いつもの凛々しく賢いカイル様は何処に!? ハッ、大変だわっ! カイル様、少しだけお待ちくださいねっ! 直ぐに奥様をお呼びしてきますのでっ!!」
そう言って部屋を飛び出しながらメイリーは奥様ーっ、大変ですーっと大声を出しながら母上の部屋に向かった。
直ぐにやって来た母上は私の口調で察したようだ。
「カイル…… もしかして高熱が原因で、心が女の子になってしまったの?」
母上にそう聞かれたけれども、私はそれを否定する。
「お母様、何を仰るの? 私は前から女の子ですわ!」
そう、これも全ては自分が生き残る為よ。私はコレからの人生を【オネエさん】として生きる事で処刑される運命から逃れて見せるわっ!! 母上には事前にお知らせしていたにも関わらず、不安そうなお顔をされたけれど、私は気にせずに【オネエ】を全開にするの!
「メイリー、着替えるわ! 準備してちょうだい」
私の言葉に今まで着ていた男物の服を持ってきたメイリーに私は言う。
「違うわ、メイリー! その服は何? 私に相応しい服を用意しなさい! 直ぐに用意出来ないなら
私の指示に母上まで目をシロクロさせてるけど、ゴメンなさいね、お母様…… 私は処刑されたくないの、だからどうか許してちょうだい……
こうして、第一王子にして王太子だった私の事は直ぐに父上や重臣たちにも知れ渡り、緊急会議が開かれて、晴れて私の廃太子が5歳の時点で決まったのよ。
ゲームでは処刑されるギリギリまで王太子だったから、
第二王子である弟のアースは気味が悪いって言って近寄って来なくなったし、良い作戦を思いついたものだわ。
私の容姿は幸い美少女と呼べるぐらいの美少年だから、前世の【男の娘】になっても見た目は
そうして何とか2年を無事に過ごした私は7歳になったわ。ゲーム補正を何とか乗り越えて、ゲームでは選べなかったストーリー展開をしている私。
ゲームでは弟のアースにしか懐かない筈の双子の妹が私に懐いてくれたのは嬉しい誤算だったわ。
私が服飾職人にデザイン画を渡して作らせた、ゴスロリドレスを見た2人が、勇気を出して私に頼みにきたのがキッカケよ。
私が7歳、妹が3歳だったけれども、2人とも私の事を【お姉ちゃま】と呼んでくれるの。とても可愛らしい美幼女2人にそう言われるとグッとくるものがあるわね。
それと私は皆に隠れて自分を一所懸命に鍛えたわ。物理的に何かされても対抗できるようにね。勿論、筋肉をつけ過ぎてゴリマッチョにならないように細心の注意を払ったわ。
こうして、一つの課題をクリアした私にゲーム補正は次の課題を目の前に突きつけてきたの!?
そう、婚約者問題よ! コレを何とかクリアしなければ私は処刑されてしまうわ!
こんな風になった私にゲーム補正はそのままの婚約者をあてがってきたの。
隣国の第二王女のセレネイ様よ。ゲームでは私の婚約者としてやって来たセレネイ様は何故か私に嫌がらせをされて、それを慰める弟のアースと恋仲になるの。そして、私のした嫌がらせの証拠を集めてから私を公衆の面前で糾弾して、婚約破棄を勝ち取り、アースと新たな婚約を結び結婚して目出度し、目出度しって形になるのよね。
その際に目障りな私は王国の外れにある教会という名の囚人収容施設に送られる事に決まるんだけど、その道中でアースとセレネイ様の命令を受けた騎士により殺されてしまうの……
でも、今の私は違うわっ! ゲーム補正になんか負けたりしない! ちゃんとセレネイ様を愛して見せるわっ!
私は気合も新たに2年後に我が王国にやって来られるセレネイ様を待つ事にしたわ。
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