【オネエ】さん無双劇
しょうわな人
第1話 カイル王子3歳〜
僕の名前はカイル・ウォン・ヒルデリック。ヒルデリック王国の第一王子なんだよ。僕は3歳で、今は専属のメイドと一緒に母上のお部屋に向かっているところなんだ。
母上の部屋に着いたらメイドが扉をノックする。中から母上専属のメイドの声がする。
「どなたでしょう?」
「カイル様が王妃様にお会いしたいと参りました」
僕のメイドがそう言うと直ぐに扉が開いて母上が出てきて僕を抱き上げてくれた。
「まあ、カイル。良く来てくれたわ。さあさあ、何かご用事かしら? それとも母に会いたかっただけかしら?」
僕を抱き上げて頬ずりしながら母上がそう聞いてくる。
「はい! 母上とお話したくて来ました!」
僕は3歳にしてハッキリと喋る事が出来るので、神童なんて呼ばれてるけど、何のことかは僕には分からない。でも僕の返事に母上が嬉しそうにしてくれると僕も嬉しいんだ。
そして僕は母上とお話する。けれども何故か段々と体と頭が熱くなって来て…… そして僕は意識を失ったんだ。
「カイル、カイル!! まあ、大変! マリア直ぐに侍医を呼んできてちょうだい! さあ、カイル母のベッドに行きましょうね」
後で聞くと母上は意識を失った僕を抱えて矢継ぎ早にメイドに指示を出して、僕をベッドに寝かせてくれたそうだ。
そしてやって来た侍医にも原因が分からないまま、僕は三日三晩寝続けたらしい。気がついた時に僕専属のメイドからそう教えられた。
僕が気がついた時には部屋には誰も居なかった。居なくて良かったよ。僕は自分自身に驚愕していたから……
「えっ? 何? この記憶…… えっと、日本人、
時間が経って混乱が少しおさまった頃に専属メイドが部屋に入ってきて、気がついた僕を見て涙を流しながら直ぐに奥様にお知らせしてきますと再度、部屋を出ていった。
僕はどうして王子に転生したんだろう? それもゲームだった世界で処刑される運命の王子に…… 僕は必死になって考えたけど、答えが出てくる筈もなく、考えるのを放棄した。そこに母上と父上が部屋に飛び込んで来たんだ。
「カイル! 目を覚ましたのね! ああ、良かった! 神さま、有難うございます!」
「カイル、無事か? 良かった! アメリアは心配しすぎて食事も食べなかったし、私も政務をしながら心配で、心配で……」
両親からの愛情溢れるその言葉に、僕は処刑されるなんて事にならないんじゃないかと思いながら、二人に謝罪した。
「父上、母上、ご心配をかけて申し訳ありません。でも、もう大丈夫だと思います。まだ少し頭が痛みますが、鈍痛なので」
僕の言葉に母上はホッとした顔を、父上は驚いた顔をした。
「カイル、鈍痛なんて難しい言葉を何処で覚えたんだ?」
父上からそう質問されたから僕は専属メイドに目配せして普段読み聞かせに使っている本を持ってきて貰った。
「父上、この本から学びました」
僕が父上に見せた本は、ヒルデリック王国随一の医師マーメラックが
それを見た父上だけでなく、母上まで絶句している。そして、父上は何も言わずに僕の部屋を黙って出ていった。それを心配そうに見送る母上。
「カイル、アナタは本当に聡明だわ…… でも聡明過ぎるの…… このままでは陛下に脅威と見なされていずれ殺されてしまうわ。だから、早めにバカになりなさい。今からでも遅くないからその聡明さを隠すのよ。じゃないと第二王子を産んだ側妃からも命を狙われてしまうわ」
母上からそう注意をされて僕は唐突にゲームの内容を思い出した。
そうだった…… 聡明過ぎて真っ直ぐ過ぎるカイルは第二王子のアースの計略にどのルートを通っても騙されて処刑されるんだった!?
僕はそんな運命はゴメンだから母上に言った。
「母上、分かりました。僕は5歳から少しずつ父上から見放されて、王太子でなくなるようになります。僕がどんな言動をしても母上は信じていて下さいね」
僕の言葉に母上は
「勿論よ、アナタは私の可愛い子なんだから。どんなに
そう力強く言って下さった。そして僕は、5歳からオネエさんになる事を決めた。計画はこうだ。5歳になる3日前に今回と同じように高熱で倒れた事にする。そして、目が覚めたらオネエとして目覚めていたという事にするんだ。
ゲーム補正によってコレでも処刑を回避出来ないかも知れないけれども、僕も何もせずに死ぬつもりは無い。だから、今から隠れて身体も心も鍛える事にした。
こうして、僕の無謀な挑戦は始まったんだ。
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