第2.5話 恐怖と憧れ
「シーちゃん!!」
私が姉さまとすぐに会えたのは本当に運が良かったんだと思う。
私はもともとリアルでは友達は少なかったし学校にもほとんど行ってなかった。けど姉さまだけが私を助けてくれる。
<Moon・Licht・Online>の世界に入って、姉さまと会えて、「あ、やっぱり姉さまが私の支えなんだ」って思った。
そんな姉さまに「どーしても一緒に冒険したい人がいるの」って言われて、気になった。
友達も多くてフレンドリーな姉さまだけど、その人は姉さまにとって友達としてだけじゃない気がした。
私は会ってみたかったから2つ返事をして会うことになった。
「おーい!こっちー!」
怖かった。
見た目もそうだけど、姉さまと仲良さそうにしているのを見て
そんなわけないのに
姉さまが私を大切に思っててくれてることはわかっていたのに
また1人になる気がして
怖かった。
「初めまして。私はネネ。シルラちゃんと同じ[クイーン]で[踊り子(ダンサー)]。見た目は竜人見たいだけどあまり怖がらないでくれるとうれしいなぁ」
話しかけられて気づいたけど、ネネさんは少し低めで落ち着く声をしていた。
街を歩きながら話すことになって、ネネさんは私に気を遣ってたくさんお話をしてくれたり、質問してくれた。
姉さまとはゲームのβテストで知り合ったらしい。話せば話すほどいい人なんだと分かった。
いや、いい人なのはもともと知ってた。だって、姉さまと仲良くなった人なんだもの。嫌な人のわけがない。
むしろ姉さまが2人に増えたみたいで嬉しさすらあった。そんなとき…
「ねぇネネ、よかったら私たちとパーティー組まない?」
姉さまがネネさんをパーティーに誘った。
けど、ネネさんはパーティーやギルドが苦手らしい。私にもわかるぐらい顔に出てたから相当なんだろう。
でも私は、もっとこの人を知りたいと思ったから、勇気を出して言った。
「わ、私も!ネネさんみたいな方と一緒に冒険してみたいです!」
声が震えた。聞きずらかったかもしれないけど言いたいことが言えた。
ネネさんは少し間をおいて了承してくれた。
なんで嬉しいんだろうと思いながら笑みが零れた。
「ネネ~出てきたよ!」
この世界に来た初めて[外]に出た。
モンスターとの戦闘はゲームの時と変わらない。体が覚えてるから大丈夫。
私は全力で2人のサポートをする。
姉さまとは何回か一緒に戦ったことがあるから戦い方は知ってるし強いことも知ってる。
ネネさんはすごかった。
即興のパーティーだからってことを考えて、私が支援しやすくするために攻撃する前に大きくジャンプしてくれた。
そのおかげで簡単にバフをかけられた。[踊り子(ダンサー)]の戦い方を知らないから無難に【式神 鏡凛】を使った。
ネネさんは音楽を奏で、踊るようにオークを倒していった。スキルは使っていたしバフものっていた。
けど…それにしても速すぎた。
私がネネさんに驚いていたとき。
「きゃああああ!!!」
無意識に大声が出た。それもそのはずだ。急にモンスターに吊り上げられたら誰だって叫ぶだろう。
私は悔いた。戦った後に周りの確認をするのは私の役割だから。言い訳の出来ない油断。
ただ、そんな悔いてる時間は全くなかった。
気づいたら私はネネさんの腕の中にいて、私を吊り上げていたモンスターは分散されていた。
「大丈夫?シルラちゃん」
「ぁ、ふぁい」
「そっか、それならよかった」
意味の分からない返事をしてしまった恥ずかしさより何が起こったのか分からない放心状態があった。
ただこの人は、普通に冒険してる[踊り子(ダンサー)]とは別格なんだと感じた。
「おーい、そこのお姉ちゃんら。今消えたモンスター倒したのあんたらか?」
男の人の声。ネネさんはゆっくり私を降ろしてくれた。
どうやら声をかけてきたのは4人パーティーでPKをしに来た人達らしい。ネネさんの顔を見ると、嫌そうな苦い顔をしていた。
「…正直この3人なら負ける気はしないけど。さすがに連戦だからね」
ネネさんはこう見えてすごい分かりやすい人なんだって知った。
ネネさんが心配してるのは私だ。多分[外]に来てからずっと。
この2人の足手まといにはなりたくないから!追いつきたいから!
「私なら大丈夫です!お2人のサポートは全力で頑張ります!」
今度は油断しない。
全身全霊をこの2人に!
私のやることは情報整理とサポート。
姉さまが得意の煽りをしたから、相手の前衛の2人が突っ込んできた。落ち着いて後衛の支援を待てばいいのに。
こっちは人数不利だから、まずは全体のステータスを底上げするために【術式 彩曄】を使う。
姉さまがヘイトを稼いでくる間にネネさんが攻撃する。さっきのモンスター戦と同じだ。
違うのは、ネネさんがジャンプをせず味方にしか聞こえない声で詠唱したこと。なんでもないその行動が信頼してくれてるんだと思って嬉しかった。
私はその信頼に応えたい!
ネネさんが走り出す直前に詠唱する。
「【カウンターオブロック】!」
「【式神 鏡凛】!!」
姉さまとほぼ同時に詠唱して、同じこと考えてたみたいでふふってなった。
そのあとはあっという間だった。
もはや相手が可哀そうにまで思えた。
4人のうち3人はすぐに倒されて、最後の1人は姉さまのスキルの効果が切れて、なにか喋っていたけどその人も首を切られて「赤の竜姫」という言葉を最後に残して分散した。
かっこいい。
私は今日1日でこんなにも人のことを憧れる日が来るとは思ってもいなかった。
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