第56話 次の方針を話しあってみた
「うーん……何故だ……」
「ま、言っちゃなんだけど仕方ないでしょう。まだ結成したばかりだし、三位も凄いのは凄いんだけどねぇ」
あれから約一ヶ月が経った。今回は俺たちは三位。その結果だけなら順位は上がってはいるのだが……
「でも、単純に『Jewelry』が抜けた結果じゃないか」
「とは言っても他には抜かれてないんだからいいんじゃない?」
なんだったらモヒカンは二位と逆転している訳でもない。本当にただ順位が上がっただけだ。
「うーん。腑に落ちない」
マリンもファーストもフレアも、後から加わってくれたアンバーも自分のシナリオ攻略そっちのけでダンジョンの攻略をしてくれている。それで順位が上がらないっていうのも。
「皆が自分のことそっちのけで頑張ってくれてるから、何とかしてあげたいんだけど」
「アオイがどうにか出来る事でもないでしょう。皆は皆で、アオイはアオイで出来ることしっかりやってくれてると思うわよ?」
「そうですよ! 私たちは私たちでやりたいからダンジョンの攻略してるんですし、気にしないでください!」
「でもなあ……」
アンバーもマリンも励ましてくれているが、せっかくだし、目指せるものなら上を目指したい俺は煮え切らない態度を取っている。
「ま、これ以上って言うなら人増やさないと無理でしょう」
俺の意図を察したアンバーが、だったら、といった様子でそう話す。
「勧誘か」
「ええ、何人か同じようなパーティーを組めるような人を何人も。ファーストのように極悪な範囲でフロアのモンスターを殲滅する人、ボス用の単体火力に優れた人。ワープを探し回る人。ま、最後は火力役がやればいいんだけど、課金アイテム手に入れられるなら、火力じゃなくても欲しいわね」
個々でログインしてる時間には限りもあるし、攻略できる人数を増やす必要があるのはわかる。その攻略メンバーは範囲攻撃を使える人を中心に揃えていこうってことだな。
「となると、もういくつかの『ソーサリーコート』が必要か」
「いくつかって? 人数分でいいでしょ?」
「ああ、ファーストにあげた『ソーサリーコート』は能力の付与に失敗していくつかゴミにしてるから。同じくらいは用意しておかないと」
「アオイでも失敗するのねぇ……」
「そもそもアオイさんにしか失敗すること
アンバーが何気なく呟いた一言に何故かマリンが語気を強めて言葉を返した。
「どういうこと?」
「アオイさんがファーストに作ってあげた『ソーサリーコート』見たことあります? 能力まで?」
「いや、無いけど……」
普段装備しているところは見てても、その能力まではファーストに見せてもらっていないようだった。そもそもSTRに全力で振ってるアンバーには興味ないことだったかもしれない。
「あれ、十一個能力付いてるんですよ?」
「さすがに騙されないわよ。『ソーサリーコート』は能力を六個までしかつけれないのよ? いくらアオイで……も……マジ……?」
アンバーは俺とマリンの顔を交互に見回した。どうやらその表情だけで伝わったみたい。
「なるほど。だから
「ま、マリンの言う通りらしいよ。俺も全然知らなかったんだけどね」
「そうすると暫くはクランメンバーを増やしたり育てたりする方に注力しないと」
「じゃあ私は心当たりに当たってみようかな? 『Jewelry』の人も何人かはまだクランに入って無いだろうし……」
「では私は各地を回って勧誘してみます」
「じゃあ俺は素材集めてくるよ」
「あ、素材集めなら私も手伝います!」
元気に手を挙げてくれたマリンを俺は軽く制した。
「いいよ。ファーストとフレアにはダンジョン攻略をお願いしといてよ。攻略を全くしない訳にもいかないし。アンバーは心当たりに当たったらファーストたちを手伝ってあげて」
「いや、勧誘終わったらアンバーさんも素材集めを手伝った方が……」
「いいんだよ。チマチマした作業は俺の役割だからさ。じゃーなー」
と、俺はその場を去った。
──────────────────────────────
「千や二千くらい、アオイならすぐ集まるでしょ?」
「百や二百だった?」
「もしかして万……?」
「ま、まさか二十万とか三十万集めようってアホな話じゃないわよね……」
「多分、そのまさかです……」
──────────────────────────────
「有り得ないでしょ!」
早速素材集めに向かう俺の背後から何故かアンバーの大きな声が聞こえた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます