第49話 作った装備の効果をみてみた
「お、なんか前入った時と印象が違うな」
『クランダンジョン』に四人で降り立った俺は、つい周囲を見回してしまった。前はダンジョンと呼ぶに相応しい石造りの迷宮だったが、今は大きな湖にいくつもの島が浮かんでいるような感じだ。その島々を橋で繋いでいる作りだ。多分島々が部屋と同じで、橋は通路みたいなものだろう。
「大体百階毎に雰囲気が変わっていくんです」
俺の呟きにファーストがそう答えてくれた。
「あれ? 今は何階だっけ?」
「351階からのスタートです」
「よくもまぁそんなに潜ったな」
俺は素直に感心してしまった。俺たちのクランは作ったばかりでメンバーも四人しかいない。それで、この結果はかなり良いと俺には思えた。
「アオイさんから『クランダンジョン』の攻略は任されましたから。ずっと二人で潜ってました。たまにフレアに手伝って貰いながら。フレが手伝い欲しい時はどっちかが手伝って……」
「いや、他にも楽しみつつでいいんだぞ」
「アオイさんが
まあ、それを言われるとなかなか言い返せないな。俺は俺で装備を作ってて楽しんでるんだが、やはり少しは皆と遊びたい思いはある。が、ボス周回だと俺は足でまといになるのは明白だし、だったらソロで雑魚狩りしてる方が気が楽ではある。ってのはさすがに言えないか。ま、実際それでも楽しいは楽しいし。
「んー……俺は良いんだよ。皆が楽しんでくれれば」
「じゃあ僕たちも一緒です。それに『クランダンジョン』の攻略も楽しいんですよ? だから心配しないで下さい」
「っと無駄話はここに入る前にすべきだったな。すまんすまん。時間も関係してるんだったけ?」
と、俺は無駄話で時間を潰していたことを謝罪した。『クランダンジョン』の攻略には時間も関係しているのでは? と予想していたくらいだから、無駄話は攻略を開始する前にするべきだった。
「結果は出てないので時間が関係しているかはまだわかりませんが……それに二人はもう攻略を始めてます。大丈夫ですよ。それにアオイさんの話は無駄話なんかじゃないです。まあ、遅れたとおっしゃいましたが、僕は
ファーストは既に俺があげた『ソーサリーコート』を装備しており、その裾を持ち上げてそう言った。
「お、頼むわ。ってこの辺にはモンスターいないけど……」
既にこの島にはモンスターはいない。少し遠くの島にはいるようだけど、そこを指定出来るのかは距離の問題もあるだろうし少し疑問だ。
「《アースライザー》は発動を二つ選べるんです。対象モンスターを中心に発動させるのと、任意の地点を中心に発動させるのとの二つです。前者のはあまり離れたモンスターは指定出来ませんから……」
「なるほど。じゃあ後者の方を試してみるんだな」
俺の言葉にファーストはコクリと一つ頷いた。
「ええ、アオイさんも見てみたいでしょう?」
「ああ、二つか三つくらいの島のモンスターを吹っ飛ばせればいいかなと思うんだが……」
「ふふふっ! そうですね……まあ見てて下さい!」
何故かファーストが自慢げに微笑んだのが印象的だった。そして、フその言葉と同時に杖をトントンっと地に二度打ち付ける。
「え? え!」
少し離れた地面に現れだした魔法陣は急速にその大きさを広げていく……俺たちが立っている島を飲み込み、隣の島も一瞬で飲み込んでしまった。それでも止まる様子の見えない魔法陣はグングンと巨大化していく……
ドォォオン!
数十秒の後、凄まじい轟音をフロアに響かせて《アースライザー》が発動する。地から強烈なエネルギー波を噴出し、フロア全体が光り輝き白い闇に包まれて、眩しさで何も見えない。
光が止み目が慣れてくると、先程まで居たモンスターは見えなくなっていた。
「マリン? フレア? どう?」
「こっちのモンスターはファーストの《アースライザー》で消滅しました!」
「こっちもです! さすがアオイさん!」
何故かフレアが俺をさすがだと言う。が、俺はファーストが凄いとしか思えなかった。
「いやいや、凄いのはファーストの魔法だろう。そこでなんで俺の名前が出てくる?」
「いや、だって『ソーサリーコート』作ったのはアオイさんじゃないですか?」
俺は想像以上の威力と効果範囲に驚いたが、ファーストもマリンも、フレアですらあまり驚いている様子は無かった。
「なんで当然みたいな雰囲気で言ってるんだ? ファーストもフレアも驚いてただろう?」
「そりゃ、見たことも無い能力が見たことも無い数付いてたんで驚きましたけど、そもそもアオイさんの作った装備です。僕たちはその効果に驚くことは有り得ません。ま、フレアはまだわかりませんが……少し興奮してたようにも見えますね」
おいおい、俺の装備への信頼が厚すぎるだろ。他にも良い装備もいっぱいあるだろうに……
「ま、アオイさんの作った装備ですから、フロアの一つや二つ軽く消し飛ばすでしょうって思ってただけです」
俺が唖然としている様子からか、ファーストはゆっくりと説明を付け加えてくる。
「大体この『クランダンジョン』は一つの階層が500m四方くらいでランダムマップが生成されるんです。アオイさんの作った装備なら、それくらいの全部、効果範囲に出来てもおかしくないでしょう?」
至極当然といった様子に俺は本当にそうなのかもしれないと少し思うようになってきた。
「ふむ? そうなのか?」
「そうです、そうです。あ、フレアが次の階層へのワープを見つけたみたい。さ、次に行きましょう」
と、俺たちの身体は次の階層へ行くために段々と消えていった。
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