第47話 能力を沢山つけてみた

「おー! きたきた!」


 ふとステータスを確認した俺は目的の能力らしきものを獲得していることに気づいた。


 《大虐殺者》

 範囲攻撃の攻撃範囲をかなり広げることが出来る。


「ふむ。かなり……か……どんなもんだろうな」


 《乱れ撃ち》は範囲攻撃ではあるが、どちらかと言うと俺にとってはランダム攻撃に近い。全体で射られる矢の数だけしかダメージを与えられないからだ。普通なら全部命中しないのかもしれないけど、俺の現状ではそうではない。《シャインスコール》も同じだ。だから範囲がどれくらい広くなったか確かめる術は今の俺には無いということ。


「ま、とりあえず装備を作ってみてファーストに試して貰えばいいか」


 マリンもファーストも自分で装備を作って欲しい時は、有余るほどの素材を俺にくれるのだが、今回は俺が作りたくて作ってるだけ。二人の負担なんかかけたくないから、今の俺が作れる範囲での装備がいい。それに今回は・・・どれくらい素材を使うかわからないからな。貰った素材が無駄になるのは避けたい。


「ということで今の俺の作れるところだと『ソーサリーコート』ってところかな」


 この『ソーサリーコート』は素材は全部雑魚モンスターでよく、俺にとって集めやすい。そういう防具の中でもなかなか強い方だ。作りやすさと能力のバランスが取れている。見た目も魔法使いに最適……ま、見た目は好きに変えられるんだけど……


「んで、出来た『ソーサリーコート』がこれなんだが……」


 と、俺は『ソーサリーコート』の能力を確認する。


 ────────────────────


『ソーサリーコート』(32)


 DEF:52


 DUR:780/780


 WT:45


 Skill (6)



 ────────────────────


 親の顔より見た『ソーサリーコート』の能力値。ここからSkillを埋めていく。とは言っても今回付けるのは一個しかない。当然大虐殺者だ。その為に作ったんだからな。


「まずは一気に六個埋めるか」


 と俺は『合成』で『ソーサリーコート』に次々と《大虐殺者》を付与していく。間もなく六個のSkill枠は《大虐殺者》で埋まりきった。


「で、ここからが本番だ。このSkill枠が埋まった『ソーサリーコート』にもまだまだ《大虐殺者》を付与してく」


 そう、俺はSkillの最大値を超えてもまだ能力を付与出来ることに気づいた。とは言っても、限界はある。段々と成功率は減っていってしまう。それは『合成』を実行する前に画面に表示されるから、0%になったら限界という判断だ。どっかの黒い本みたいに小数点以下の確率を俺は狙うつもりはない。


「まず一個目……」


 既に六個の《大虐殺者》が付いている『ソーサリーコート』から再度『合成』で《大虐殺者》を選ぶと成功率が表示されている。その数値は九十%だ。とはいえ、俺の体感だと五割くらいは失敗してる感じがある。


「よし……成功! じゃあ二回目……」


 一回目は無事に成功した。続けて二回目のチャレンジだ。次の成功率は七十%と低くなっている。体感だと三割くらいしか成功してない。ロボットが出てくるシュミレーションゲームの命中率と同じで、表示されてる確率なんてあてにならない。


「あれは、99%の命中率は外すし、回避率99%は被弾するからなぁ……と、今回も成功か。よし、次!」


 三回目のチャレンジは三十%となっている。これはもう成功しないに等しい。


「ってほらな! 失敗しちゃったよ」


 三回目のチャレンジは失敗だった。そうすると、Skillは全て消え去って、しかも枠は無くなったまま元に戻ることはない。ただのゴミと成り果てる。


「ま、想定内だけどな。はい! 次だ!」


 と、二個目の『ソーサリーコート』の製作に取り掛かる。が今度は最初の九十%で既に失敗してしまった。


「次!」


 失敗……


「次!」


 失敗……


「次!」


 成功……成功……失敗……



「次!」


 失敗……


「次!」


 失敗……


「……ほらな、やっぱり九十%とかあてにならない」


 と口にして見たもののやることは変わらずにただただ『ソーサリーコート』を作るだけ。生憎『ソーサリーコート』の素材は大量に集めてある。足りなくなったらまた集めればいい。


 延々と作り続けた後、とうとうその時がやってきた。


「うし! 出来たー!」


 五回目の成功率五5%の壁を乗り越えて、六回目の成功率は0%となった。俺でもさすがにここから先追う気はない。


「しかし、危なかったな。『ソーサリーコート』の素材ももうすぐ尽きそうだった。ま、終わったなら全然OKか」


 十万着は作れるくらいの『ソーサリーコート』の素材も殆ど無くなってしまったが、目的の物が出来たし俺は満足だ。


「ファーストは……オフラインか……ま、後で渡せばいいか。ふぁぁぁ……さすが疲れたし、俺もログアウトするかな」


 渡すべき人物がログアウトしていることを俺は確認すると、一気に眠気が襲ってきた。次に会った時に渡そうと決めて俺はログアウトしたのだった。

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