第37話 武器をあげてみた

『聖都ハイディア』で俺はファーストたちと落ち合った。アンバー勧めで路地裏の一角に置かれている木箱の皆で座っている。


「ほれ、これが作った武器だよ。早速送るわ」


 俺は一度『マジックロッド』を表示してからメニューを操作してファーストに渡す。


「ありがとうございます」


 御礼を述べるファーストの横に座っていたアンバーが、ファーストのメニュー画面を覗き込みながら呟いた。


「へぇ……『マジックロッド』かぁ。さすがと言うべきか……」


「どういう意味?」


 俺はアンバーの言葉の意味がわからなかったので、そう尋ねた。


「これは生産限定の武器なの。店でも売ってないし、ドロップするモンスターもいない。だから使う人も多くないわね」


 なるほど。そういうものか。確かモヒカンも生産関係を伸ばす人はいないって言ってたし、アンバーにしろマリンにしろ火力重視だ。ファーストもINT極で火力重視になっている。だから生産限定の武器はあまり使っている人がいないというのも納得だ。


「ちょっと見せてくれる?」


「あ、はい。どうぞ」


 ファーストは少し身体を仰け反った。そうしてアンバーはファーストの前に身体を乗り出して、メニューをポンポンと触っていく……すると突然アンバーの動きが止まった。


「…………」


「どうしたんですか?」


 不思議に思ってマリンが尋ねるがアンバーは微動だにしない。


「……………………」


「おい? アンバー?」


 俺も声をかけるが相変わらずだ。どうしたんだ?


「………………………………は?」


 アンバーは急に立ち上がって俺の肩をガシガシと揺さぶってきた。


「何よコレ! 強化値32っておかしいでしょ? 何やったのよ!」


「おいおい、落ち着けよって……で? 強化値?」


 俺は軽くアンバーを振り払って落ち着くように促した。アンバーは手を離してはくれたが、まだ興奮気味だ。顔が真っ赤になっている。


「この名前の横の数字よ!」


「あ、ああ、確かに32だったな。それが?」


 もう渡してしまったので俺には確かめることは出来ないけど、確かにそれくらいの数値ではあった。俺は全然気にしなかったけど……


「二桁ですら見たこと無いわよ! なのに32なんて……」


 アンバーはショックを受けているようだ。興奮気味でまくし立てたあと、疲れたのか肩を落として座った。


「でも、そう言えば前に貰った『殻の鎧』も33でしたよ。当たり前だと思って気にしてなかったですけど」


 と、ファーストの言葉である。それに続いてマリンも同意を示した。


「ええ、基本的に作った装備はそれくらいだと思ってました。他の人から装備を貰うことも無いですし。アオイさんから貰う以外に、まだ装備変えてないですし……」


 何の気なしにそう話している二人に堪らずアンバーは割って入った。


「何よソレ! ちょっと見せてよ!」


 マリンはまだしもファーストが『殻の鎧』を貰ったというのはアンバーには初耳だったみたいだな。『マジックロッド』だけでなく『殻の鎧』まで興味を示すとは。マリンの時は特に見たいとか無かったけどな。


「あ、はい。どうぞ」


 と、ファーストはまたもメニューを操作している。俺から貰った『殻の鎧』を見せてあげるのだろう。いや、俺からじゃなくて正確にはマリンから貰ったやつか。でも、アンバーの言うことを聞いて素直で良い奴だな。マリンのリア友なだけはある。二人とも良い子だ。まあ、見せるだけならタダだし。俺もファーストも誰も損はしない。うん。オールオッケー。


 でも、何か大事なことを忘れているような気がする……


 俺はふとマリンの顔を見ると、マリンと目が合った。俺もマリンも二人で首を傾げてしまう。多分マリンも同じようなことを考えているのだろう……何か大事なことを忘れているようような気がするって顔してるわ……ってそうだ! ファーストが持ってる『殻の鎧』はアレ・・が付いてる!


 と、その時アンバーが勢いよく立ち上がった。


「なんで《千発千中》持ってるのよーーーーーー!」


 のよーーーー!


 のよーー!


 そうしてアンバーの叫んだ声が辺りに響き渡ったのだった。

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