第36話 武器に能力をつけてみた
「さてと、こんなもんかな」
俺は『マジックロッド』に《ジャベリン》と《速記》の能力を付けた。《ジャベリン》はアローの強化版のような魔法で数倍の効果範囲を持ってそうな矢……というべきだろうか? ともかくそんな魔法を魔法陣から放出する魔法だった。《ジャベリン》はいつの間にか取っていた。何回かは知らないけど、恐らく《アロー》の使用回数で解禁されるのだろう。
《速記》はどうも魔法陣構築にかかる時間が短くなる能力のようだ。これも気が付いたら持っていた。とあるタイミングから魔法の放たれる速度が早くなっているように思ったから、その時なのだろう。半分とまではいかないけど、体感で三分の二くらいにはなってそうだ。《ジャベリン》は自身で購入したりして持ってれば、付与しても意味の無いスキルになるが、《速記》はある程度までは使える能力に思える。汎用性は高そうだ。『マジックロッド』は『樫の杖』と違って能力を二つ付けられるし、ちょうど二個の魔法系の能力を持てたからちょうどいいと、その二つとも付けた『マジックロッド』を俺は作った。
と、まあ作った『マジックロッド』の性能はこんな感じだ。
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『マジックロッド』(32)
ATK:14
DUR:120/120
WT:8
Skill (0)
《ジャベリン》《速記》
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『樫の杖』はATKが10なのとSkillが(1)だった。あとは一緒。『樫の杖』の若干の強化版といったイメージだろうか。あとは名前の横の(32)という数値。『樫の杖』の最大は(35)だったから少し低い。ランダム数値だから沢山作れば上を引けるのか、作る装備の難易度によって低くなりがちなのかは正直わからない。ただ、元のATKも『マジックロッド』の方が高いし、Skillの量から言っても『樫の杖』より強いだろう。
「で、これをファーストにあげて……と」
作ったからには役に立てないといかん。現状で俺の知る魔法を使うプレイヤーは一人だけ。
と、俺はファーストにコールを申し込んだ。
すぐに応じるファースト。
「ああ、今時間あるか?」
「あ、これから『バルム火山』でボス戦なんです。どうしましたか?」
ボス戦か、しかも俺の聞いた事の無い地名だ。
「ああ、忙しいなら後ででいいよ」
「大丈夫よー。一緒にいるのは私たちなんだし」
ファーストの背後から聞きなれた声が聞こえる。アンバーがひょっこりと画面に顔を出してきた。
「アンバーもいるのか? じゃああとはマリンか?」
またも画面外から顔を出していたのはマリン。元々マリンの友達だったのだから居ても当然だ。
「はい! どうしましたか?」
「いや、装備作ったからあげようかなって」
「『殻の鎧』で充分ですよ!」
ファーストは顔をブンブンと横に振っていた。どうやら『殻の鎧』はお気に召しているようだ。
「ああ、すまん。武器の方だ。何か良い武器持ってるなら特に……」
俺が言い終わるのを待つまもなく、ファーストは食い気味に反応をしてきた。
「欲しいです! あ、でも……」
これからボス戦だって言ってたな。俺を待たせるのが悪いと思ってるのかもしれない。まあ、そこまで時間はかかんないだろ。
「ああ、じゃあ終わったらでいいよ。俺も『聖都ハイディア』に戻るからそれからで……」
と、俺はコールを切った。
どうやらファーストはマリンとアンバーと一緒にメインシナリオを進めているみたい。場所は『聖都ハイディア』の近くではあるが、俺はまだ行ったことのない場所だった。つまり……
「俺より進んでるのか。まあ、それも当然か」
俺は一マップずつモンスターを潰していったり、作れる物を確認していきながら進行させている。メインシナリオで入る経験値はモンスターを倒して手に入る量よりも多い。手伝って貰ってメインシナリオを進めた方がレベルも上がるし、より戦いやすくもなる。先に行けば強い装備も手に入りやすくなるだろう。手伝ってくれるフレンドとかがいれば先に進めた方がいいのが道理だ。例えフレンドがいなくても、街で頼めば誰かしら手伝ってくれる雰囲気はこの『Lunatic brave online IV』にはあるし、実際に街ではそういう声も多く聞かれている。それは俺がやっていた『Lunatic brave online』の頃から変わらないのだが……そういうプレイヤー同士で助け合う様子が好きだから長く続けられていたのだけれども。
「ま、俺は俺で楽しんでるから何も問題はないんだけど……さて、戻るかな」
俺は待ち合わせ場所の『聖都ハイディア』に向かって歩き出した。
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