第24話 他の金策を思いついてみた

 俺はセフトの街の領主であるカッパに会っていた。あれ? 名前なんだっけ? カッパじゃなかったような……まあいいか。


「トーマスから報告があった。ブライトン農場に化け物が現れたそうだな……」


 その門番のトーマスに会ったら、ここに来いって言われたんだよな……とさすがNPC。俺のことなど構わず話し続ける。


「今までこんなことは無かった。モンスターは街中になど入ってこなかった。何が起きてるか調べてくれるか?」


 おいおい。いきなり頼み事かよ。普通そんな大事なことを見知らぬ冒険者に頼むか?


 と、俺は思ったけど、目の前に出てきた選択肢は『はい』しかない。『いいえ』連打で遊ぶことは許されてないみたい。


 俺が『はい』をタップするとカッパはそのテカった頭頂部を何度も俺に見せつけてきた。


「うんうん。ありがたい。街への人々の出入りを見ているトーマスなら詳しいことを知っているかもしれない。頼んだぞ」


 と、会話はここまでか。で次はいつものトーマスさんね。はいはい。街の入口にイドーイドーっと……

 当然トーマスは変わらず街の入口に立っている。


「変わったこと? そりゃ、冒険者さんがブライトン農場で化け物を倒してくきてくれたこと……え? それ以外に? うーん……旅人が減ってるくらいか……あ、そうだ!」


 するとトーマスは何かを思い出したかのように、ポンッと手のひらを叩いた。


「旅人が減ってるといえば、少し前に街に来た人が何か言ってたなぁ……東の山がなんたらかんたらって……リーゼの酒場にでもいるだろうから聞いてみてくれないか?」


 リーゼの酒場? マップを見てみるか……ってここだな。


 俺はマップを確認すると、リーゼの酒場と書いてある場所がある。目的地はそこらしい。行けばイベントが進むのかな? と言うか誰に話しかければいいんだろ? と、リーゼの酒場まで行くと、一人だけ名前が浮いているNPCが居た。

 俺は恐らくこいつだろうとアタリをつけてそいつに話しかけてみた。


「ん? 俺に用か? 何か聞きたいなら必要なこと、あるだろ?」


 またまた目の前に選択肢が。『奢る』『奢らない』か……どうせ奢らないとストーリーが進まないんだろうな。別にお金に困ってないし、ここはちゃっちゃと奢っとくか!


「へへへっ! ありがとな! 聞きたいことだって? 東の山のこと? ああ、俺がセフト平原をこの街に向かって歩いてる時のことなんだがな、セフト平原の東にアルデス山ってのがあるんだ。普段は何の変哲もない山なんだが、いつもと雰囲気が違ってな。何か吼えるような声も聞こえて、気になって入ってみたんだが……やっぱ怖くなって引き返しちまったって訳よ」


 まあ、手がかりと言えばこれくらいか。とクエスト表を確認すると、『アルデス山の頂上を目指せ!』となっている。メインクエストの進行フラグが立ったみたいだ。この感じはまたボス戦かもな。


 となるとボス戦前に色々と準備しないと。まず必要なのはやはり回復薬。前は雑貨屋で購入をしたけど、今は違う。一度購入したことで『リバイブⅠ』のレシピも知っている。これはセフト平原に出る『ビー』というモンスター落とす『はちみつ』というアイテムが四個必要だ。


「ちなみにいくらくらいなんだろう……」


 と、俺はマーケットを開いた。見たところ、『リバイブⅠ』よりも『はちみつ』四個換算の方が高い。『リバイブⅠ』で100イクサ。『はちみつ』1スタックで1万くらいだった。ちなみに雑貨屋で売っている『リバイブⅠ』は300イクサだ。そう考えると『はちみつ』の値段は狩る手間を考えても割に合わないところだが、恐らく『はちみつ』は上位回復薬の素材にもなるからだろう。冒険を進めるにつれて『リバイブⅠ』では回復量が足りなくなる。その時に『はちみつ』を使って、もっと回復量の多い回復薬を作る。その需要があるから『リバイブⅠ』よりも『はちみつ』の方が高いのだろう。


「『はちみつ』も金策の手段になるかもしれないな。使う分を稼いで余裕があるようなら売るのもいいかもしれないし、『冒険者の服』を売るよりも効率的なら、『はちみつ』を集める方にシフトしてもいいかもしれない」


『冒険者の服』は『ふわふわの毛』が三十必要。『はちみつ』のドロップ率と同じでは無いと思うし、倒しやすさもあるとは思うが、単純に集める量は『はちみつ』の方が少ない。『冒険者の服』なら『ふわふわの毛』が1スタックで三つ作れるから3000くらいの値段になる。1スタック換算で『はちみつ』の方が三倍は高く売れる。


「よし……『はちみつ』を集めて『リバイブⅠ』作り……終わったらアルデス山に向かおう」


 と、俺はセフト平原へとマップを進めた。

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