作戦名 【猪野天音ちゃんのアレが好きすぎて困っちゃう】

「今からブリーフィングを行う、作戦名 【猪野天音いのあまねちゃんが好きすぎて困っちゃう】各人、手元のタブレット画面を参照して欲しい!!」


 執事の皆川がリムジンの運転席から無線で指示を送る。

 私は後部スペースに設置されたドレッサーから戦闘服を取り出した。


 黒と白のコントラストがキュートな十字架ワンピ。

 不思議の国のアリス好きな天音ちゃん、その性癖をガンガンに攻めてみよう。

 頭のボンネットを調整しながら皆川に作戦内容の修正を告げる。


「皆川!! 現時刻をもって作戦名を変更します。【猪野天音ちゃんのアレが好きすぎて困っちゃう】に修正をお願いするわ!!」


「さよりお嬢様より伝令、繰り返す、作戦名、【アレが】のセンテンス挿入、併せてデータ更新、については追加ファイルを送信した!!」


 皆川がテキパキとリムジンの運転席から無線で指示を送る。


「皆川、例のモノを……」


「……はっ!!」


 リムジンの応接スペース脇に備え付けられたジュラルミン製の棚が自動で開き、

 中から白い煙と共に依頼したアレが出て来た……。


「けほっ、けほっ!? み、皆川、ドライアイスの演出は次から要らないわ」


「さよりお嬢様、この世には様式美と言う物が存在します。そうお約束ですな、水戸黄門が最初から印籠を出すとか、うっかり八兵衛がしっかり仕事してるとか興ざめですから……」


 何故に例えが水戸黄門推しなの、皆川は……。


「我が本多グルーブ科学特殊研究所が総力を挙げて開発に成功しました!! さよりお嬢様ご依頼のアレでございます……」


 やっと煙が薄れ、私は中身の箱を慎重に取り出した。


「おおっ!? これは期待がふくらむわ……」


 ずっしりと重い感触に大きいつづらを選んだ昔話の主人公みたいな気持ちになった。


「皆川!! 箱をここで開けてもいい?」


 思わずキラキラとした目で箱を凝視してしまう。

 期待におもわずロリータファッションに包まれた胸を膨らませた……。


「さよりお嬢様、その装置には活動限界時間が有りますので、現地で展開した方がよろしいかと……」


 皆川が申し訳なさそうな声でこちらに視線を落とした。


 そうね、慌てる何とかは貰いが少ないって言うし……。


 はっ、私も皆川の格言とことわざ癖が伝染うつってしまったのか!?

 気を付けないと格言ハラスメントで訴えられてしまうわね。

 最近は何でもハラスメントになっちゃうから。


「了解、では現地で展開するわ、制限時間がどれ位なの?」


 「保護トランク自体が充電バッテリーになっております。本体をトランク内アダプターにセットすると急速充電を開始しますが、本体のみでの時間が二十四時間が限度です」


 それだけ持てば作戦完了まで充電の必要は無しね。

 待っていて天音ちゃん、あなたにコレを装着してもらうから、

 一人ほくそ笑む私は、天音ちゃんとの会話を脳裏に思い浮かべていた。


 *******


「……天音ちゃんってだよね?」


 中総高校の中庭で私は天音ちゃんとお昼のお弁当を広げていた。


「う、うん、まだまだ男装女子としては初心者マークだけどね……」


 私はその言葉にある疑問を抱いてしまったが、

 そんな恥ずかしいこと、私の口からは聞けないよぉ!!


「あ、天音ちゃん、おっぱいの存在は下着でうまく消しているの分かったけど、

 下半身はどうなっているの? そのおちん……」


 私は恥ずかしさで真っ赤になる、耳まで火照るのが自分でも感じられた。

 箸で摘まんだ、おかずの魚肉ソーセージをブラブラさせながら……。

 可憐な乙女としてはちょっとわざとらしいか?


「ははっ、さよりちゃん。おっぱいと違ってソコは手つかずだよ。今のところ特に大きな問題はないかな?」


「駄目っ!! 天音ちゃん、女装男子を極めるならその部分は外せないと思うわ。そんなんじゃ片手落ちだよ~!!」


「そうかな? もし出来たとしても大変なお金が掛かりそうね。うふふっ、さよりちゃんにお願いしちゃおっか。なんて冗談だよ♡」


 その時は他愛のないお友達同士の会話だった。


 でも今は違う!! この秘密兵器があれば……。


 *******


 ぴんぽんぴんぽん!!


 はやる気持ちが抑えられなくて天音ちゃんの家の呼び鈴を連打してしまう。


「はい、どなたでしょうか? あっ、さよりちゃんいらっしゃい!!」


 天音ちゃんが、玄関ドアを開けてくれた。

 こぼれんばかりの笑顔を見ておもわず悩殺されそうになり私はじゅるり!! と想像上のよだれを拭き取った。


「天音ちゃん、約束の品物を持ってきたよ!!」


「……ありがとう、そうだ!! きょうはお父さんもお兄ちゃんも居ないの」


 ちゃっチャーンス到来!! いきなり一回目から作戦成功なの!?


「さよりちゃんの今日のお洋服、すっごく可愛いね。思わずみとれちゃったよ……。まあ、立ち話も何だから天音のお部屋に上がって!!」


 よしっ!! つかみはОKだ。


 ……天音ちゃんのお部屋に入るのは初めてだ。

 ドキドキしちゃうな、一体どんなお部屋なんだろう?


「殺風景だけど、あ、ベットに腰掛けててイイよ。待っててね、今お茶用意してくるから!!」


 天音ちゃんが階下に降りたのを確認してさっそく作戦を開始する。


 まずはベッドに潜り込んで、布団をくんかくんかっ!!

 天音ちゃんのか、香りっ!! 柑橘系の匂い、一体どこのブランドだろう?

 その甘い中に本来の天音ちゃんの匂いがする!!


 だ、たまらないよぉ、次に天音ちゃんがいつも使っている枕が目に入った。


 うひゃあ、私にとってはとてつもないお宝だ!! 


 ぼふっ!!


 勢いよく枕に顔からダイブして、からのくんかくんか……。

 いい匂ーい!! 胸一杯に大好きな天音ちゃんの香りを包まれる。

 ああ、このまま眠りたい、抱き枕になって天音ちゃんに抱きしめて貰おうか?

 駄目駄目、さよりそれじゃあ変態よ……。

(充分変態だけど……と一人ツッコミをしてみる)


「さよりちゃん、何やってるの?」


 ベッドでごろごろ芋虫になっていたら後ろから突然声をかけられた。


「きゃあああっ、あ、天音ちゃん、い、いつからそこに!?」


 ヤバっ、いつも私は引っ込み思案なキャラなのに本性を見られてしまった!?


「今日暑かったでしょ、だから一緒にお風呂入ろうって誘いに来たの」


 えっ!! 今なんて言ったの天音ちゃん一緒にお風呂?


「やっぱり一緒は恥ずかしいかな、さよりちゃんは?」


「と、とんでもないよ今日は記録的に暑かったから……。ま、まあ天音ちゃんがどうしてもと言うのなら、さより入ってもイイかな?」


 あまりのチャンス到来に言っていることが支離滅裂になってしまう。

 皆川にまた作戦の変更を連絡しなければ……。


 作戦名 【猪野天音ちゃんがすぎてアレを持つ手が震えそう】って。



 次回 【天音ちゃんとお風呂で身体の隅々まで洗いっこ♡】 に続く。


 ☆☆☆お礼とお願い☆☆☆


 ここまで読んで頂き誠にありがとうございました。


 もし少しでも面白いと思ったら


 評価の☆や♡・作品フォローをお願いします。


 ※この作品をもっと楽しめる下記作品も併せて読んで頂けると嬉しいです。


 https://kakuyomu.jp/works/16817330650563390099


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る