第2話

 自分の家に戻るとたしかもうすぐ誰かと約束していたことを思い出す。誰かとは情報屋のこと。名前は知らん。

 そう気付いた矢先に既に開いている入り口から一人の細身で中年の男と三人の屈強な半裸の男らが入ってきた。


「あんたリーダーさんか。漸く見つけたぜ? ずっとあんたを探していた」


「お前が情報屋か? 随分とやかましいボディーガードを連れてきたな」


「悪りぃがあんたはここで死んでくれ。俺たち情報屋はとにかく情報が命なんだよ。お前のせいで信憑性の低い噂ばかり広げやがって、仕事の邪魔をするのも良い加減にしろ! お前ら、相手は小僧一人だ。やれ!」.


 そう言えばすぐさま周りの三人は剣を振りかぶり俺を殺すつもりでかかって来る。全く、殺したいなら素直に言えば良いものを。

 俺は一人目の剣の振り下ろしを寸前で横へ回避すると、すぐさま横腹目掛けてボディーブローを打ち込み、痛みに苦しむ男の剣を奪い取り間髪入れずに首を落とす。


「一つ……」


「てっめぇ! やりやがったな!?」


 二人目の剣は斜め上から振り下ろされる。俺は重たい剣を力任せに振り上げ、相手の剣に擦り合わせるようにすることで、力を受け流したことで、体勢を崩す。「おっとっと」と頭が俺の背より低い位置に来たところで勢いよく後頭部へ剣を振り下ろすことで、また首を落とす。


「二つ……」


「ひいぃっ! おいおいコイツなんなんだよ! ただのガキじゃ無えじゃねぇか!」


「怯むんじゃねぇ! まぐれだろ! 早く殺せ!」


「うおおぉりゃああああ! 死ねえええぇ!」


 三人目は剣を真っ直ぐ構えて俺を貫こうと突進を仕掛けて来る。ならば俺は剣を足下に捨て、突進に対して懐に滑り込むように回避すると男の下腹部に向かって肘を打ち込む。

 男の剣を握る力が弱まった所でその剣を奪い、一回勢いよく胴体を切り裂き、大きくよろめく男の首を落とした。


「なんなんだよ……なんなんだよ!! いつもいつも俺の仕事を邪魔しやがって! お前は噂を広めまくって何が目的なんだ!」


「三つ……これで終わりか。そんなことより話があるんだろ? 俺を殺そうとしたのは俺が信頼に値するか試したかったんだろ?」


「は……? お前何言ってんだ……?」


 情報屋が俺を本当に殺したいとかいうのはこの際どうでもいい。だが、それ以外に俺に会いに来た理由が無いのなら俺が情報屋に用があることにするか。


「そうか。分かった。今からは俺がお前に依頼したい。情報屋なんだろ? 教会に関する知っていることを話せ」


「は……ははは……。畜生……結局利用されちまっってのかよ。あぁ、良いぜ。だが俺はあくまでも情報屋だ。それなりの対価を支払ってもらう」


「金か? ここじゃあ金なんてほぼ意味のない物だと思っていたが」


「ちげぇよ。あんたは俺にあんたの知っていることを話せ。それで俺はその情報を元に、俺が知っている情報に修正する。これでどうだ?」


 単なる情報交換か。いや、俺の知ることを修正するほどだ。よっぽど自分の情報に自信があるのだろう。


「良いだろう。じゃあ紙に書き出すから待ってくれ」


 俺は自分の家の隅にある机の上にある、積み重なった紙を一枚取り出して、インクの入った羽ペンで俺の知っていることを書き始める。そこで俺はふと考えたことを、手は止めずに聞く。


「そういやお前は字は読めるな?」


「当たり前だろ。情報ってのは聞いて見たことだけじゃ足りねえからな。文字くらいは読めるさ」


「それならいい……」


 そう言って俺は紙に知りたい全ての情報を書き出し、紙を情報屋に手渡す。


「これが全部だ」


「どれどれ……なるほどな。分かった。今修正してやるからちょっと待ってろ。そうだな。次の鐘が鳴る頃には作業が終わってるから、あんたは適当に暇でも潰しててくれ」


「分かった」


 情報屋は渡された紙を見つめると深く頷いたり、険しい表情をしたりと俺の知る情報を評価しているようだった。さて、どう修正されるか少し楽しみだ。なら言う通りに暇を潰してくるか。

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眠らない街 ルイン Leiren Storathijs @LeirenStorathijs

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