第38話
▫︎◇▫︎
そして、勝負の日はあっという間にきた。その間に、マリンソフィアとアルフレッドの恋は一切進歩することもなく、幼馴染という距離感のままだった。
馬鹿でクズでアホでどうしようもなく悪寒が走る王太子は、ほとんどやっていない公務をほっぽり出して毎日のように『
だが、それでも諦めないのが馬鹿で実直ということしか取り柄がないと言っても過言ではない王太子の、ある意味素晴らしくいいところなのかもしれない。出禁を食らってからは、毎日20枚にも及ぶ恋文が届くようになった。ちなみに、それはマリンソフィアの目に届く前に、アルフレッドによってズタボロに引き裂かれ、油に漬けられた後で暖炉で燃やされることになった。
「………それじゃあ、あの馬鹿王太子を裸の王子さまにしに行くわよ」
「「………はい」」
嫌悪感たっぷりなマリンソフィアの声に合わせて、クラリッサとおチビちゃんの疲れ切った返事が返ってくる。
「あらあらクラリッサに、おチビちゃん、だいぶお疲れね。わたくしたちがこれからやることは歴史に名を残すのだから、もっと胸を張らなくっちゃ」
「………もうあの馬鹿殿の顔すら見たくないのですが………………」
「うちもー、もうあの気色悪い男のご尊顔なんか眺めとうないわー」
基本明るくてなんでも楽しんでいるおチビちゃんすらも、1ヶ月も馬鹿でクズでクソでアホで救いようのない王太子の相手をすれば、うんざりとしてしまう。それどころか、最近は王太子に関わる事案が耳に入ったり。目に見えたりするだけで、殺気立ってしまう始末だ。
マリンソフィアは思いっきり苦笑してから、心を一気に入れ替える。
「………わたくしも、あの男に触れたくないけれど、今日は今までの成果を発表する日なのよ。しっかりやらなくちゃならないわ。
さあ!職人、そして女優魂を見せてやろうじゃないの!!」
「「はい!!」」
マリンソフィアを筆頭とした『
▫︎◇▫︎
「次にマントよ!!早くなさいっ!!」
マリンソフィアの怒声に合わせて、今回のために特別に外国から輸入した透明の布を王太子に着せていく。本当は本に従ってすっぽんぽんにしたかったが、流石にそれだと騙されてくれない人間が出てしまうため、マリンソフィアは妥協案として外国から透明な布を輸入したのだ。
着せ終わると、マリンソフィアは満足気に頷いた。見事なまでの、『裸の王子さま』だ。背中の透明な生地に縫い込まれた『
「う、うむっ、完璧な仕上がりだな。白く美しい、ぬ、布地にエメラルドを砕いた布地でできた差し色が大変美しい。『
「まあ!お褒めにいただき光栄ですわ。それでは、わたくしどもはこれにて!!」
「あ、こらっ、」
「ごっきげんよう!!」
笑うのを必死に耐えていたマリンソフィアとクラリッサ、そしておチビちゃんはマリンソフィアの言葉に合わせて、全力疾走で馬車を使って店まで戻った。
ちなみに、馬車に入った瞬間に、マリンソフィアにクラリッサ、おチビちゃんはお腹がはち切れんばかりに爆笑した。
「「「ぶふっ、あははははっ!あはははっ!あははははっはははは!!」」」
『
「だめっ、お腹が、ぶふっ、ふふふっ、あははははっ!!」
「てっ、店長、ふふっ、あはっはっ、笑いすぎっ、ふふっ、ですわっ、あはははっ!!」
「あはっはははっ、ぶふっ、王太子はん、馬鹿すぎへんっっ?」
「「「それに、ひよこちゃんぱんつだなんてっ!!ぶふっ、あはははっははっは!!」」」
3人がここまで笑うのには、理由があった。そう、王太子の珍妙なぱんつのせいだ。あんな簡単なトリックに騙されただけでも爆笑ものなのに、まさかぱんつが真っ白ブリーフに可愛らしいひよこちゃんの刺繍がいたるところについているだとは誰も思うまい。
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