竜皇女、ドラゴ―ニャ

「本当に行くのかい?」

 お腹の底に響くようなバリトンボイスが聞こえた。


 白い肌。

 切れ長で金色の竜眼。 

 燃えるような赤い髪が肩の下まで伸びる。

 頭には、白いつるりとした二本の角が、後ろに向かって伸びている。

 180センチ近い身長。

 つややかな紅いドレスの腰からは竜の尾が伸びていた。


 見目麗しいドランドランの女性。


 ドランドラン皇国、第二皇女、”ドラゴ―ニャ”だ。


 宇宙船のブリッジに立っていた。


「ええ、行くわ」

「辺境地に、ちょうどよい無人の地球型惑星を見つけたもの」

 地球人が惑星改造で作ったものだが、戦争が原因で植民がされていない。

 地球とドランドランの国境に近いからだ。


「地球人とドランドラン、お互いを知らなさすぎるのよ」


「まあ、確かになあ」


 地球人のつがいを得て、仲睦まじく過ごす竜の娘たちが羨ましいわけではないわ。


「行ってちょうだい、お兄様」


「はいはい、わかったよ」


 大きな翼が二枚、小さな翼が四枚。

 両手足のある二百メートルくらいの大きさの黒いドラゴン

 その背中には、流線型の宇宙船が浮いている。

 紅く染め上げられており、銀色の螺鈿細工が表面を飾る。


 地球軍の分類では、”ワイバーンクラスドラグーンシップ”とされるサイズである。


「じゃあ行くよ」

 ドラゴンの小さな翼が羽ばたいた。

 宇宙を満たす物質《ダークマター》をく。

 掻かれたところが銀色に輝いた。


「ダイブイン」

 ドラゴ―ニャが背中の紅い宇宙船のブリッジで言った。

 ダークマター推進機関起動。

 紅い宇宙船の前部が白く円形に輝いた。


 ドラゴンの体が、銀色の波を立てながら宇宙に沈んで行く。


 通常空間からダイブ空間の四次元面に入った。


 タイムマシン型ワープ航法、”ダイブワープ”である。


 宙間魚類である”SAKANA”が生来身に着けているワープ方法を科学的に再現したものだ。


 ドラゴ―ニャを乗せた宇宙船と六枚翼の黒いドラゴンは、地球圏の辺境惑星に向かった。

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