艦長、小林龍太

 クラッシック、いやアンティークと言ってもいいような旧型の宇宙艦が青い惑星の上を飛んでいる。


 黒須重工製、三世代いや四世代前の雷撃駆逐艦。


 二百メートルくらいの群青色の艦の横には白い文字で、”豆狸まめたぬき”と描かれていた。


「もっとさあ、お互い話し合うべきだと思うんだよ~」


 170センチくらいの人のよさそうな男性が、へにゃりと笑う。

 黒髪黒い目。

 普通の容姿だ。

 名を、小林龍太こばやしりゅうたという。


「そんなこと言ってるから、こんな辺境に飛ばされるんですよ、小林艦長」

 初老の男性が応える。


「でもさ~副長~」

「戦争の始まりはコミュケーション不足だって歴史も証明してるよ~」

 彼は代々実践考古学者の家系。


 人類とドランドラン。

 はじめのうちは良かった。

 ドランドランは全て見目麗しい女性である。

 男性は今のところ確認されていない。

 そして、彼女らが一番に望んだのは、異種間結婚。

 地球人に、つがいを求めることだった。 


「でも、ドランドランにつがいに行った人類は一人も帰ってきてないんだろ」

「ドランドランは人を頭から食べるという噂だ」

「しかも何故か、つがいに地球人女性も含まれてるんだよな」

 初老の操舵士と初老の通信士、初老の航法士である。


 つがいに行った人からは、「幸せです、問題ないです」という返事しか返ってこない。

 それでも、たくさんの人がつがいとしてドランドランに旅立った。

 半世紀ほど経った後、衝撃の事実が判明される。


 ドランドランの女性は胎児と同じくらいの大きさの卵を産む。

 そして、産まれた子供は全てドランドラン星人になるらしい。


 このままでは、地球人類がドランドラン星人に乗っとられてしまうっ。


「と半世紀前の人類は考えたんだよね~」


「お、小林艦長の歴史講釈だな」

 老機関長のゲンさんだ。

 ちなみに最年長。


 人類側の、”つがいに行った人たちを返せ”という要求をドランドラン側は固くなに拒否。

 取り返すために人類は宇宙艦隊をドランドランへ派遣。

 その前に現れたのは、宇宙船を背中に浮かべた巨大なドラゴンたちだった。


「何故か、ドラゴンはほとんど人を殺さないんだよね~」


「あ~、その代わり捕虜も帰ってこないんだろ」

 だから、ドランドランは人を頭から食べるという噂が立ったのだ。


 結局、ドランドランからは地球圏に攻めてこず、今現在戦争は小康状態なのである。


「ん、艦長、ソナーに変な反応がある」

 初老のソナー士が言う。

「ははあ、巧妙に隠してるけど、こりゃあ」

 初老の雷撃手がソナーの反応を見ながら言った。


「ドラグーンシップがダイブ空間にいるな」

 あごに手をあてながら副長が言った。


 初老の乗組員たちは、全員五十年前の海戦の経験者である。

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