第7話 贈り物

 宴会も終盤を迎え、女どもは一斉に食べ終わった皿を下げ洗い、後片付けを始めた。そろそろ帰り支度を始める娘達の家族達。新太郎は昨年の反省を込めプレゼントを用意していた。反省はしていたが自分の口から昨年は悪かったなと言わない。古い人間と言われようが子供達には親として威厳があると思っている。

その代わりと言う訳でないが年賀はそれぞれ頂いたが親は御馳走が最高のおもてなしと考え特に土産を持たせた事がない。たが昨年の反省もあり、みんなに不愉快にさせた為、お詫びでないが、何が良い物かと考えた末、娘達の旦那三人と長男の嫁(藍子)にプレゼントする事に決めた。しかし何をプレゼントすれば良いか悩んだところ、最近は便利なものがある。ネットショップで調べて買えば何でも揃う。ただ特注品なので調べらたらネームを入れてもらえるらしい。思いついたのは昨年の暮。本来なら翌日に届くものだがネーム入りなので一週間を要した。それでぎりぎりに届いたばかりだ。娘の旦那三人はワインだ。勿論安物では意味がないと木箱入りで、しかも最大のミソは瓶に直接彫ったネーム入りと気の利いた品物である。最近のネットショップは坊さん以外なんでも用意してあると言うから驚きだ。


 例に依って〆の挨拶は長男の幸太郎が行うことになっている。

「今年も良き正月を迎える事が出来ました。それもこれも父と母の努力があったからこそ。ありがとうございました」

話が終わると新太郎は用意して置いたプレゼントを出した。

「こうしてみんなが集まってくれるのは親として大変喜ばしい事であります。娘達や幸太郎が暖かい家庭を築けるのも旦那や嫁さんのおかげです。そこで今日は親から感謝の気持ちとして用意させて頂きました。どうか受け取って下さい」


妻の典子にも知らせて居なかったから大人全員が驚きの表情を浮かべる。

「それでは伴侶の皆様方だけですが息子と娘が世話になっているお礼です」

男性には名前入りのワイン。長男の嫁さんには電動ネイルケア/ネイルシャイナーセットと化粧品セットだった。それぞれ三万以上する品である。四人は思いがけないプレゼントに涙を浮かべる者もいた。特に長男の嫁は驚いた。

「お義父さん、本当に嬉しいです。これって爪を磨くものですよね。嬉しいわ。爪を磨くのは若い子の特権だと思っていたのに夢のようです。それに高級な化粧品、本当にありがとうございます」

「いやいや柄にもなく年寄りが若い女性に何を贈って送って良いか迷ったけど喜んで貰えて良かったよ」

長男や娘達は何も貰っていないが伴侶への心遣いが余程嬉しかったのか感激していた。次女の夏美が驚きの声をあげた。

「お父さん。電動ネイルケアって知って買ったの? 驚いたわ。お母さんなら分らない事もないけど」

「夏美、父を古い人間と思っちゃいけないよ。私だってパソコンは使えるし。ネットで調べて買ったんだよ」

「え~~お父さんがネットショップで買ったの。いゃあ、お見逸れしまたぁ」

 みんな大笑いした。すると長女の麻美が笑顔でこう言った。

「嗚呼、先を越されたわ。実は私達兄妹夫婦で相談して決めたんだけどお父さんとお母さんにプレゼントがあります」

えっと新太郎と典子は顔を見合わせた。

「たいしたものではないけど今年結婚四十五年でしょう。サファイア婚式というらしいけど、今まで何も出来ず御免なさい。今回はお二人に別府温泉で日頃の疲れを癒して来て下さい。勿論往復グリーン車です。奮発したんだからぁ」と笑う。

「えっ驚いたなぁ、昨年の暮れ家内に別府温泉の話をして居た所だよ」

「そうなのよ。嬉しいわ。だって新婚旅行に行った思い出の地だもの」

そう言いながら二人は目にいっぱい涙を溜めていた。


つづく

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