第6話 今年も孫達に落とし玉 奮発
他力本願は諦め自分でやるしかないと決めたが、料理の手伝いも出来ないし、昨年の失敗を繰り返さないように庭に頑丈な柵を取り付け入れないようにした。
「母さん、これなら大丈夫だろう」
「ええ私も確認したけど大丈夫だわ。もっとも孫達も昨年叱られたから分かっていると思うわ」
「まぁそう願いたいね。ところで俺、何か手伝おうか」
「いいのよ、貴方は接客という仕事があるでしょう。みんなを喜ばせてあげてね」
そして正月の二日、予定通り新年会が始まった。
妻はなに一つ文句を言わず二十人分と新太郎夫妻を入れて二十二人の料理を作り上げた。誠に頭が下がる。結局、新太郎は何も出来ずに終わった。
「今年も良い年でありましように。おめでとうカンパーイ」
昨年は乾杯と同時に孫達は大暴れした記憶が残っている。しかし今年は誰も別人のようおとなしい。
娘達の旦那も気を使って毎年来てくれる。聞いた処によると翌日は旦那の実家で新年会するそうだ。逆に娘達が旦那の実家に気を使う番だ。だから実家に来た時くらい羽目を外したい気持ちも分かる。それでも娘達はよその家に行きキチンと妻の役目を果たしているのか心配だ。そんな処へ長女の旦那がお酌をしに来た。
「お義父さん。おめでとうございます。今年もよろしくお願いします」
「いやいやありがとう。義雄くんも、いたらない娘で迷惑かけているんじゃないか」
「そんな事はありませんよ。良くやってくれています。ただ年々口喧しくなりましたがね」
「はっはは、それは私も同じ。亭主関白なんて今は通用しないし家内に上手くコントロールされているよ」
「そんなもんですよね。しかし女房を立てて置けば家庭は円満ですからね」
「いや立派だよ。なかなか出来る事じゃないよ。麻美も幸せ者だ」
他愛もない会話だったが新太郎は安心した。親としては娘が結婚しても死ぬまで自分の娘である。家庭円満である事が最大の喜びであり、もし離婚して家庭崩壊なんて事になったら心配で死んでも死にきれないと悩むのも親というもの。
リビングの隣にある和室の伏間を取り外しと二十畳になるが総勢二十二人ともなれば狭く感じる。今年の孫達は昨年と違い暴れ出し者が居ない。昨年のキツイ一言が効いたようだ。孫達全員にお年玉を配った。昨年は八万だったが今年から二人の孫が中学生になりお年玉を値上げした。大変な出費だが子供達や孫が喜んでくれれば報われる。
妻の典子も嬉しそうに娘達と語り合っている。毎年当たり前のよう、こうして新年会を迎えるが、これも妻の頑張りがあるからだろう。本当に妻には感謝する。
妻も若くないし、来年も再来年もこの新年会を出来るから心配もある。
しかし孫達は拍子抜けするほど穏やかだ。昨年は端正込めて作った庭を破壊されたものだが、これだけ大人しいと逆に心配になる。まさか「お爺ちゃんは怒ると怖いんだから」なんて言い聞かせてはいなんだろうなと苦笑する新太郎であった。
昨年は𠮟りつけたから怖いお爺ちゃんと思われたくないと奮発して十二人の孫に玩具を買ってあげた。孫達は大喜びだ。その笑顔を見るのは至福の喜びである。
怖いお爺ちゃんと思われたら孫が大きくなり、爺ちゃん所に行ってもつまらないからと、遊びに来なくなるも知れないと悩むほどだ。
つづく
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