第4話 2023年 お正月Ⅱ

 

主な登場人物 

 園井新太郎 七十一才 妻 典子 六十八才 長男 幸太郎、妻 藍子 、長女 麻美

 次女 夏美 三女 亜樹 四女 陽子(教師)

 

 今年も園井家に正月がやって来た。例によって当たり前のことである。 

この園井家は東京都足立区西新井にある。最寄りの駅は東武大師線、西新井駅からたった一キロの引き込み線で西新井大師参拝の為に出来た大師駅前であり、都内なのに無人駅で自動改札機も、自動券売機もない不思議な駅。管理は隣の西新井前で精算出来る仕組み、よって改札を素通りそのままホームに入り電車に乗り降り出来る。左に行くと埼玉県川口市、右に行くと千葉県松戸市が近い。どちらかと言うと東京の田舎のような場所だ。近くには西新井大師があり関東三大大師のひとつだ。園井家は西新井大師から逆方向に進むと荒川が流れ土手添えは区民の憩いの場所の公園がある。その近くに園田家があり、敷地は広く百坪以上ある。先祖代々受け継いだ土地で新太郎は園井家の七代目に当たるそうだ。昔は大地主でかなりの土地があったそうだが代が変わる度に財産分与などで、とうとう百坪ちょっとまで減ってしまった。それでもこの辺では土地が広いだけに庭は立派である。


 園井新太郎は七十一歳になる。幸い子供にも恵まれ長男の幸太郎と下に三人の妹、更に十才以上が離れた四女の陽子がいる。現在、京都で中学の教師をしいて、たった一人独身である。遠く住んでいる事もあり今年も新年会には来られない。暇を見て年一度は実家に帰って来る。陽子を除きそれぞれが世帯を持ち子供も居る。新太郎からみれば孫が十二人も居ることになる。息子、娘の連れ添えを合わせれば総勢二十人が押し寄せるから、嬉しいどころではなかった。それでも孫だから可愛いが、なにせ数が多すぎる。


昨年は孫達が暴れ、ひと悶着があった。

 庭は荒らされ大事にしていた盆栽は壊され七福神の置物(現役時代、社長賞貰った物)まで破壊され、ついに堪忍袋の緒が切れ孫達を怒鳴りつけてしまった。怒りが収まらず子供の躾が悪いと娘達まで怒鳴りつけた。

「お前達は、普段子供にどんな教育をしているんだ」

 それが売り言葉に買い言葉。孫を叱ったら娘達が反旗を翻し、怒って新年会の途中で孫を連れて帰ってしまった。散々な昨年の正月になった。

 新年会は散々なものとなったが後日、長男の幸太郎夫婦の計らいでなんとか仲直り出来た苦い思い出である。


つづく


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