第6話 京劇の基本功について

 中国と言えば雑技団、と言う方も多いでしょうし、広大な大陸には武術なども含めて驚きの技を持つ人たちがたくさんいる、なイメージは割と一般的ではないでしょうか。同様に(?)、京劇役者の方々の身体能力も目を瞠るものがありますので、基本的な動きの幾つかについて、動画も交えて紹介してみたいと思います。百聞ひゃくぶんは不如いっけんに一見しかず、です。



https://www.youtube.com/watch?v=C_f68Yfq4Eo&t=641s

 足技の訓練、腰腿功ヤオトゥイゴンの参考動画がこちら。

 拙作中では腰腿功じゅうなんたいそうという表記にしたのですが、準備運動などでは決してない、これ自体が高度な筋力や柔軟性を要求されるハードな訓練だということがお分かりいただけますでしょうか。作中の描写としては、準備運動をしないはずはない、けれど「準備体操」「柔軟体操」とそのまま記述するのは雰囲気にそぐわないので、意味が異なることを承知で上記の表記にしたのでした。雰囲気作りと可読性と正確性のせめぎ合いはいたるところに転がっております。


https://www.youtube.com/watch?v=ea28J11Isp4

 続いては毯子功ダンツーゴンの参考動画がこちら。絨毯の「毯」の字を使うことから分かる通り、マットの上でやる一連の動作、という意味のようです。どう見てもマットだけでは危険なのでヘルメットや各種サポーターもしっかり装着して欲しいところです。が、皆さん軽々こなしていますね……知らないで見たら演劇ではなく武術の型と思ってしまいそうな、しなやかかつキレのある動きは同じ人間とは思えませんね。ちなみに京劇と武術には実際明らかな接点がありますが、そこについてはまた追って語りたいと思います。

 こちらの動画は各技の名前も表示してくれているので、ありがたく作中でも使わせてもらっています。が、ぶっちゃけた話、見ても何をしている技なのか分からないので文章で描写しようがないものも多々あったりします。


 上記ふたつの動画は、香港の演劇関係者組合・八和會館が広報の一環で作成したもの、ということのようです(なので著作権的には問題ないと思います)(京劇の演目そのものの動画も数多上がってはいるのですが、無断転載ではないという見極めがなかなか難しいので迂闊に紹介できないのがもどかしい)。

 ほかにも京劇の基本技(これで基本なんですよ……恐ろしい……)や衣装の着付けのし方(→https://www.youtube.com/watch?v=IvHE1IL4Evo&t=23s)も紹介してくれているので大変参考になっています。動画サイトで色々調べられる、今の時代で良かった……!



 ちなみに私は田中芳樹先生のファンですが、竜王の生まれ変わりの四兄弟を主人公にした伝奇アクション「創竜伝」シリーズで(特に終君の動きについて)「京劇役者さながらの」との描写がしばしば出てきた記憶があります。今回の作品を書くために付け焼刃とはいえ京劇の勉強をした結果、その描写の解像度が二十年越しで劇的に上がったことを最後に付け加えておきます。訓練もなしにあの超人的な動きができる竜堂兄弟はすごい、し、訓練によって竜王の転生体に匹敵する動きができる京劇役者もすごい、ということになるのでしょう。

 拙作の登場人物たちの身体能力について、最初は「盛り過ぎかな?」と思いながら書いていたのですが、実際の京劇の動きを見るうちに「これくらい大丈夫大丈夫!」になっていったりもしています。事実は小説より奇なり、ということでここはひとつ。

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