私と母

年末だから、母が私を誘ってくれて、

ちょっと高い中華料理店に連れて行ってくれた。


久しぶりに母と対面したが、正直なにを話せばいいのかわからない。

だって普段会話しないし。


母がじっとこちらを見て様子を伺っているが、どうすることもできない。


手元のジャスミン茶を飲むと、気持ちが少し落ち着く。


静寂が続く。


またジャスミン茶を飲む。

小さな器からジャスミン茶が無くなり、ポットみたいな奴から、ジャスミン茶を注いだ。


隣の席にも親子がいて、母とその娘が楽しそうに雑談を交わしていた。

ああいう風にはなれないな。


母の後ろには金魚の絵が飾ってあって、綺麗な絵だったからそれを眺める。

またジャスミン茶を啜った。


こんなんじゃだめだ、

いつも家にいない母だが、父親がいない家庭だから、必死に家庭を支えてくれている。

金銭面での支援はしてくれてるし、それなりにいい学校にも通わせてくれている。


だから、こういうときくらい、なにかしらの会話をして、それとなく感謝を伝えなくちゃいけないんだ。


いつ話を切り出していいのか考えるうちに料理が運ばれてきた。

中華料理特有の油っこい料理だ。

見るだけで胃もたれしそうだ。


なんの会話もないまま、料理を無理矢理

口に運ぶ。

味はまあ、美味しい。

けど、これを書いている現在味を思い出せない。


結局会話がないまま、食事は終わって店を出た。高い店のはずなのに、全く料理を頼まないために、金額はそうでもなかった。

店泣かせな親子だ。


店を出て少し経った時、私のお腹が急に痛くなって、トイレに行った。

油っこい料理を食べて、お腹の調子が悪くなってしまったんだ。


10分くらい腹痛と戦った。

やっと痛みが治まって、出ていくと母の機嫌が分かりやすく悪くなっていた。


「あなたのトイレを待つためだけに、10分も

 使わせてくれてありがとう。」

結構辛い嫌味だ。

でも、そのくらいだったらまだ許せる。


「そんなんじゃ恋人にも嫌われるわ」

私が直近で振られたことを知っての発言なのだろうか。

私の中で何かが折れた。


私は、母とは分かり合えない。

親子だけど、きっと無理だ。



まず第一に、私は中華料理が嫌いなんだ。

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今日の憂鬱散歩、稚拙にて 三角 @sankaku102

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