第20話

歴511年皐月20日、東先道広浜国とうせんどうひろはまこく、音浜郡藻塩潟おとはまぐんもしおがた




 藻塩潟もしおがたは、広浜国の海岸南端に位置する、遠浅の海が広く沖合まで広がる場所である。


 南の広平国との境目付近には小さな岬から砂州が伸びて湾を作り、穏やかな波の浦を形成している。


 船の停泊には適しているので、かつてこの地まで遠征してきた朝廷の北伐軍が度々上陸した場所でもあった。




 その頃の名残で浦には朽ちかけた桟橋と掘り下げられた船溜ふなだまりがある。


 それに加えて、かつて北伐軍が一時駐屯した廃砦も未だ残っていた。


 しかし人は住んでいない。


 地勢も悪くないし土地も肥沃なので、森林を切り開けば良い田畑が出来るに違いないのだが、弁国海賊べんこくかいぞくの横行と街道の便の悪さから放棄されたのだ。




 藻塩潟は、海産物も豊かである。


 浜漁や漁労による魚類や甲殻類などの海洋産物も豊富にとれ、海草の類いも多く生えている。


 海草は瑞穂国人のごちそうの一つであるばかりか、藻塩焼きという方法での製塩にも役立つ。


 いずれは遠浅の浜を利用して塩田を開くとしても、当面は藻塩焼きで塩が造られるだろう。




「少将様はこの場所をご存知でしたか」


「うむ、まあのう……50年も昔に来ただけじゃが、まあ知っておるわい」




 偵察に出てこの地の状況を確認してきた本楯弘光もとだてのひろみつが問うと、行武は少しばかり居心地が悪そうに答える。




「かつて朝廷の北伐軍はこの地から上陸したのじゃ。わしが……わしは副将としてこの地に降り立ったのじゃ」


「北伐軍の副将!?」


「少将様が?」


「副将っていやあ中将ちゅうじょうか権大将ごんのたいしょうだろ?おれでも知ってるぜ」




 驚く弘光や少彦、山下麻呂に苦笑いを返し、それ以上は何も言わない行武。


 マリオンが何を今更と言った風情で見ているのはご愛敬だ。


 影では猫芝が肩を揺すって密かに笑っている。


 今でこそ少将という中途半端な位階に収まる行武だが、この地に北伐軍の副将としてやって来たというのが本当ならば、高位武官であったはずだ。




「……中将でも率いる軍は5000を下らないはず、その様な大軍を?」




 玄墨久秀くろすみひさひでがぽつりとこぼすと、それに反応して弘光が言う。




「その中将が副将という事は、率いていた人物は大将以上、兵は1万以上ですか……」


「まあ、そうじゃな……わしはヒヨコもいいところじゃったが、大叔父の梓弓成武あずさゆみしげたけが大将として兵2万を率いてこの地の征服に来たんじゃ。わしが分遣隊5000を率いて押さえた東間道なぞは、そのおまけみたいなもんじゃ」




 行武が遠くを見る目で話すと、一同は驚きを更に露わにする。




 50年前の最後の大戦。


 伝説ともなっている北辺征伐の当事者が行武だというのだ。


 この戦では夷族を支配して東先道の完全支配を成し遂げただけで無く、東先道に侵入していた大章国だいしょうこくの艦隊を撃退し、便乗していた弁国軍べんこくぐんを粉砕している。


 これ以降領土紛争は決着が付き、瑞穂国は有利な条件で大章国と講和を結んだ。


 その前の大王親征による鎮西の大戦で天楼国てんろうこくとの境目を確立したのと合わせ、瑞穂国が今の世の平和を謳歌する礎となった出来事でもある。




「ま、まさか少将様が……あの北伐大将軍梓弓成武と一緒に?」




 行武の説明に少彦が呆然とした様子で言う。


 ただ薬研和人が溜息を吐き、是安は下を向いた。


 和人は同世代故にその北伐の経緯を知っており、是安は行武に長く仕えているのでその事情を聞いて知っているのだ。




 そしてもう1人。




 口元に手を当てて驚きを露わにしているのは、雪麻呂だ。


 他の兵達も驚いてはいるが、これまでの行武の行動や言動から、過去に何か大きな功績を上げている事が少しは予想されたので、雪麻呂ほども驚きを大きくはしていない。




「梓弓の副将様……間違い無いのね……ああ」




 口元を押さえていた手を胸元まで下ろし、ぐっと両拳を握りしめると何かを決意したような表情で言う雪麻呂。




「どうした雪麻呂?女みたいな仕草してんじゃねえよ。気持ちワリイ」


「えっ?あっ?」




 同輩の納税人足から言われ、慌てて手を下ろす雪麻呂。


 それを訝しげに見てから、行武はふと周囲を見回した。


 今ここには自分に従う500名の兵と納税人足達のみ。


 かつてこの地に大船団を率いて、自分の縁故国である楠翠国なんすいこくは雄之湊おのみなとから大航海を経て降り立った時とは何という違いだろうか。


 浦を埋め尽くす船団から続々と降り立った、万を超える精兵達。


 きらびやかな戦装束に鋭い武具や兵器の数々。


 あの頃の時分は若く、自信に満ちあふれており、また数々の功績を上げてこの世の春を謳歌していた。


 あの日々がいつまでも続くと信じていた。




 今となっては最早過去の出来事であり、それこそ過去の栄光に過ぎない。




 一度踏み外した道に戻ることは、終ぞ無かったのだ。


 しかし、今こうして名誉と栄光をほしいままにしていた時に降り立ったこの場所に、再びやって来た。


 かつて率いた2万の兵は、今やたった500余り。


 兵や近しい配下の者達も自分の事を“あの”梓弓と知って驚いているようだが、今ここにいるのは落ちぶれた万年少将の老貴族だ。




 西方天狗せいほうてんぐであるマリオンや得体の知れない陰陽師である猫芝は、全盛期と言って良い時代の行武を見知っているどころか行動を共にしたこともある。


 2人の自分を熱っぽく見る目を思うと身の細る思いがする時もあるが、かつてこの国を縦横無尽に駆け回って戦功を挙げた梓弓若中将あずさゆみのわかちゅうじょうは、もう居ない。


 それでも、またこの地に戻ってこられたのは、僥倖以外の何物でも無い。


 それまで沈んだ雰囲気だった行武だが、突然天を仰いで笑い声を上げる。


 驚いて自分を見ている兵や配下の者達に、茶目っ気のある笑みを向けて行武は言った。




「ふふふふ、はっはっはっはっは。世の中分からぬものよな!」




 未だこれから為せる事はある、いくらでもある。


 老け込むのはそれからでも遅くは無い。


 自分には未だ体力も、知恵もある。


 そして何より付いてきてくれる者がいる。




「さあやるぞ!」




その号令におうと応じ、早速砦の修築に取りかかる広平軍団の500名、そして仮の駐屯地を整備するべく動く納税人足ら500名を見て満足そうに頷くと、行武はその一部を抽出させる。




「お主らには船溜まりの修繕をして貰おうかの」


「船溜まりでございますか?」




 是安が言うと、行武は頷いて言う。




「この地を北辺と京府を結ぶ基点と成すのじゃ、むろん、楠翠を経由しての。さすれば納税も船を使って容易に出来るようになるであろう。もちろん、故国への帰還も容易となるわい」


「殿様、経由地の楠翠国には公湊おおやけのみなとの雄之湊がありますが、京府にもそれ専用の湊を設けなければなりませぬぞ」




 是安が問題点を指摘すると、行武が何を言っていると言わんばかりの様子で応じた。




「ここに津司たる早速武銛が居るであろう?津司の本来の役目は津之司みなとのつかさじゃ。これ以上の適役はおるまいて」


「おう、大伊津は今でこそただの交易港だが、かつては戦船の船溜まりもあったいわば公湊おおやけのみなとよ。納税であれば利用するのは問題あるまい」


「公湊の役目を取り消したという話も聞かぬでのう」




 武銛の説明を補足する行武の顔は悪戯っぽい笑みで満たされている。




「少将様はそこまでお考えに……」




 少彦が行武の案に感心と感動を覚えてつぶやく。


 今まで民部省や大蔵省の官吏達が考えもしなかった事だ。


 官吏や貴族達は、税は納税すべき者が勝手に京府まで運んでくるものと信じて疑わず、その影でどれ程の手間暇と財貨が失われ、あまつさえ人命すら失われているという事を全く知らない。




 いや、知ろうともしないのである。




 彼らの興味は土地や人民に無く、それらの生み出す米や麦そして布や財貨のみだ。


 それらがどうやって生み出されるかについては興味を持たない。


 納税人足が京府に集まり、道ばたでの生活をせざるを得ない事態に追い込まれていることも、迷惑な者達だという思いしか持たず、安穏としている。




 当事者意識や危機意識がごっそりと欠落しているのが、今の瑞穂国の中央政府たる朝廷なのだ。


 その朝廷から派遣されてきている国司達地方官が、同じ態度で民政に臨むのは当たり前とも言える。


 苛税でもって財貨を集め、穀物を集め、不満を漏らす者は私兵や武民を使って暴力で黙らせる。


 きっちりと統制を受けた武力機関である国兵や軍団を解散させた結果が、統制無き暴力による収奪。


 これを是正し、民のための民政を取り戻そうと常日頃から考えていた少彦が、正に目指すもの全てを行武は持っている。




 民政に関する知恵と律令の知識、民との対話や意見交換に望む態度、貴族としての威厳を失わず、然りとて傲慢な態度を取るわけでも無く、民のため、国のために政まつりごとを行う。


 それが本来瑞穂国の朝廷が持つべきものであろう。


 残念ながらそれは失われて久しく、今体現出来ているのは皮肉な事に時代遅れも良いところの武人貴族、梓弓行武のみであるのだ。




「まあ、楠翠の連中や武銛の係累たる元水軍衆も、北辺との交易や交通は利があろう。力になってくれるに違いないわい」


「成程……殿様縁とのさまゆかりの楠翠国なんすいこくでございますか」


「確かに楠翠国からなら、すでに途中までの航路もありますし、京府ともそれ程離れておりません」




 是安が得心した顔で頷きながら言うと、少彦も言葉を足す。


 楠翠国は梓弓家の発祥の地で、かつて梓弓家が国造を務めていた縁もあって、未だ一族や縁のある者達が多く住まう。


 京府の南にあって、河川航路や外洋航路が古くから開けていた場所だ。




 かつては強力な艦隊を保持し、強兵で知られた楠翠兵を擁した梓弓家は、瑞穂国の草創期から発展期において大いに活躍し、武威を張った家である。


 残念ながら現在は行武のみが武略の有職故実と家系伝統を受け継ぐ。


 他の梓弓家の者達はほぼ文人貴族化しているが、出自が影響しているせいか何れも中級から下級止まり。




 むしろ楠翠国に残った一族の方が、位階はともかくとして富貴を誇っている。


 行武は、その商人や農家、船荷受として楠翠国で活躍している者達を利用しようというのだ。


 おまけに陸路であれば東先道から京府までは2月以上掛かるが、船を使えばその期間は劇的に短縮させる事が出来る。




 しかも、運べる荷物の量も段違いに増え、手間は大幅に減じられる事は間違い無い。


 難破の危険はあるものの、大量の穀物や布を運ぶのに船は実に便利で有用、且つ手頃な乗り物である。




「何も危険な冬場に船を出す事は無いわい、春先になって海が穏やかになってから船を出せば、野分風のわきかぜの嵐に巻き込まれる前には帰郷出来ようぞ」




 そう言うと行武は、再度指示を出す。




「そうと決まったならば、早速作業に入るのじゃ。弘光は砦の修築を司つかさどれ、是安と少彦は物資の管理と官倉の造営を監督せよ!重光は国兵50を預けるゆえに、周囲の警戒を怠るな……そして、わしが船溜まりの修築の監督をする」




 それぞれが指示を出されて散っていく中、雪麻呂が恐る恐る声を掛ける。




「あ、あの……私は?」




 今まで大人しく言われた作業だけをこなしていた雪麻呂が、自分から積極的に仕事を申し出た事に少し驚きつつ、行武は言う。




「うん?おう、雪麻呂か、お主はわしの供をせい。細かい伝令や連絡に走って貰うわい」


「は、はいっ!」




 その指示に対し、何故かとても嬉しそうな笑顔を浮かべて返事をする雪麻呂。


 行武は訝りつつも本人が喜んでいるのなら良しと、集まって来た国兵達に檄を飛ばす。




「よいか!北辺の冬は知っての通り厳しく訪れも早い!今の季節に船溜まりの底を浚さらい終えるのじゃ!残りの者は石護岸いしごがんを修繕せよ!」


「はっ!」




 行武の配下に入った国兵達は、早速鎧兜を外して筵の上に置き、代わって荷揚げされた中から鋤や鍬を取り出し始める。


 兵達が作業の準備に入るのを見ていた行武は、しばらくしてから兵達と一緒になって鎧兜を外し始めた。


 早くも準備を終えて海に入ろうとしていた山下麻呂が、その姿を見て心底呆れた口調で言う。 




「おいおい、爺さん……何する気だよ?」


「見てのとおりじゃ!まだまだ若いもんには負けぬわい!」




 すっかり武具を外し終え、上衣を取り払った行武は、70歳を越えているとは到底思えない立派な身体を外気に晒し、手前にあった掬笊を担いで不敵な笑みを浮かべる。


国兵達は行武の身体にも度肝を抜かれているが、作業に加わると言ってのける行武にも度肝を抜かれた。




「そうりゃあ!」




 周囲が戸惑っているのを余所に、行武は真っ先に船溜まりへと飛び込んだ。


 どぼんと大きな水音がしぶきと共に上がる。


 ぶくぶくと水泡が潮と共に立ち、しばらくしてから行武が笊一杯に海砂をすくい上げて浮かんできた。




「おう、意外と深いわい……こりゃ浚うのに少し骨が折れるが、それ程深く浚わんでも良さそうじゃの!」




 そう言いつつ、船溜まりから泳いで離れる行武。




「あ、あの少将様?」


「……少彦、殿様はああいう方ですから、止めても無駄でございますよ」




 行武の行動に驚いて駆け寄り、思わず声を掛ける少彦であったが、首を左右に振りながら付いて来た是安に止められる。


 雪麻呂もまさか行武がいきなり海に飛び込むとは思っていなかったのだろう、その秀麗な顔を呆けさせていた。




「何て爺だ……おい、野郎共!貴族爺に負けてんじゃねえぞ!広浜の男気見せてやれ!」




山下麻呂がそうかけ声を駆けると、付近にいた男達がおう!と威勢良く応じ、山下麻呂に続いて次々と海へ飛び込んでいく。


 水音が連続して立ち上り、潮と水飛沫をかき分けて男達が海底へと潜る。


 しばらくすると、笊や籠に海砂をすくい上げ、あるいはそれらを持った者に浚ってきた砂をぶちまけ、男達が威勢良く作業を開始した。




「ははは、相変わらずですな、少将様は」


「……全く、いつもこれですから、下の者は堪りませぬ」




 弘光の言葉に、重光は無表情で応えるが、それはとても参っているようには見えない。




「そう言いながら、お前、ああいうの嫌いじゃ無いだろう?」


「……無論ですが、何か?」




 そう言い合うと、男達は拳をぶつけ合って笑みを浮かべ、行武の指示に従うべくその場を離れる。




「ユキタケの悪戯好きは変わっていませんね」


 浜辺に近寄り、再び笊籠一杯の砂を掠ってきた行武に、護岸縁にしゃがみ込んだマリオンが満面の笑みを浮かべて話しかける。


 その脇では猫芝が相変わらずの様子で、しかしそこはかとなく呆れた雰囲気を纏っている。


「何を言うのじゃ、悪戯などでは無いわい」


「……楽しそうで何よりです」


 行武の言葉に少し考えてから、マリオンは顔に掛かった金髪をかき上げながら言うと、ふっと視線を遠くの山へ遣る。


 猫芝も山へと目を向けているのを見て、行武は言う。


「まだまだ猶予はあろう、今はことを起こさずとも構わぬ」


「そうですか」


「ふん、まあ、精々集まるのを待つが良い、それこそがお主の狙いじゃろ?」


 マリオンがゆっくりと頷き、猫芝が不満そうに腕組みをしながら答えると、行武はうんと一つ頷きながら掬い上げた砂を浜へと上げるのだった。




 天幕の一つ、その仲でも比較的小ぎれいな物がその2人に宛がわれていた。




「何たることか、ここまで報告が遅れてしまうとは……叱責どころの話ではない。軍監失格か……」


「何程のことか、慣れぬ船旅で船倉にて倒れておったのじゃから、無理は申すな」




 悔しそうに拳を握りしめ、真っ白な官製紙を見つめる久秀に、和人が呆れた口調で言う。




「未だ船酔いは治まっておるまい、この薬湯を飲むが良かろう」




 和人はなだめるような声色で取り置いてあった薬湯を竹水筒から木椀に注いだ物を久秀に差し出す。




「……かたじけなし」




 久秀は少し迷った素振りは見せたものの、その椀を受け取ると頭を下げる。




「心配せずとも毒など入っておらぬ、わしはこれでも医者の端くれじゃ。それに、あれの気風は知れたであろう?」




 ためらいの理由を言い当てたられた久秀が、気まずそうに椀へ口を付けるのを横目で見ながら、和人が天幕の外へ顔を向ける。


 その視線の先には、納税人足や国兵達と共に土嚢を和気藹々と歩く行武の姿があった。


 行武の肩に担ぎ上げられているのは、建材用の丸太。


 少将とは言え、征討軍の総大将がすることでは無いのだろうが、周囲の者達は皆そんな行武の行動を好意的に見ているし、何より本人が楽しそうに仕事をこなしている。




 さすがに書類仕事や全体の統括を全くしないわけには行かないので、あくまでも時間がある時に限られるが、行武は積極的に普請や労働に携わっているのだ。


 呆然とした様子でありながら、思案しているようでもある様子で行武の姿を見ている久秀に向かって、和人が再び口を開く。




「報告が遅れたのはお主のせいではない、思わぬ船旅に不覚をとっただけのことじゃ」


「……承知した」




 視線は行武から外さず、久秀は薬湯を飲み干して空にした椀を久秀に返すと、おもむろに筆を執って言葉を継ぐ。 




「確かに、書けておらぬ物、送れておらぬ物を今更あれこれ言ったとしても詮無きこと。精々言い訳を連ねることに致す」


「まあ、わしも同様に言い訳致すとするわい」




 文字通りの言い訳の言葉に、和人は悪戯っぽい笑みを返し、それを見た久秀がふっと軽い笑みを向けてから官製紙に向き直る。




「……報告は適切にせねばならぬ」


「然りじゃ」




 真剣な表情ですらすらと筆を運び始めた久秀を尻目に、和人は竹水筒に木製の栓を詰めながらゆっくりと踵を返し、自分の官製紙を置いてある場所へと腰掛けるのだった。


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