理想郷の投影 3
化物に追われ、がむしゃらに駆け回っていたのが吉と出た。
今、凡太の目の前には小川が流れている。水流は街灯の光にきらきらと照らし出されていた。
これは例の道に違い無いだろう。周囲に光源があるだけでこれ程心強いと思った事は無い。
凡太は今までずっと足元を照らし続けてくれた勇敢な戦士を労い、指の腹で優しく撫で回した。幾度魔物に遭遇しようと決して凡太の懐から逃げ出そうとしなかった勇気ある者を最早小粒とは呼べない。
撫でる度にうっとりと目を閉じ、胸元のポケットに小ぢんまりと収まっている姿は昔懐いていた野良猫を彷彿とさせる。凡太は小さな戦友を黒猫と名付けた。
ずずず。黒猫と戯れていた凡太の耳に、流水音に交じって重量のある物体を地面に擦らせているような音が聞こえた。また、魔物だろうか。
隅に隠れ、その場を切り抜けるつもりでいた。
突然黒猫が目玉を鋭く光らせ、鰐の尻尾を浮かび上がらせるまでは。
七章 理想郷の投影 終わり
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