◆依存系の義妹

「分かったよ、愛海。でも、ここでするのはダメだ」

「……なんで? お兄ちゃん、わたしを愛していないの?」



 少し不安気な眼差しと殺意の兆しを俺に向ける愛海。

 半年前から愛海は、俺に依存するようになった。しかも、異常なほどに。


 理由は分かっていた。


 俺があの時、愛海を助けたから。



「お前の気持ちは分かっている。でも、だからこそ大切にしたいんだ」



 けれど、愛海の目は死んでいた。



「だめだよ、お兄ちゃん。今のままだと他の女の子に取られちゃう……」

「気にしすぎだ。俺を好きな女子なんていないさ」



 ここまで気にかけてくれているのは、愛海だけ。俺に他の女子の陰なんてありゃしない。でも、なぜか愛海は酷く気にしていた。


 どうして?



「不安なの。不安で不安で仕方ないの」

「大丈夫だ。俺は愛海しか見てない」

「本当……?」

「ああ、本当だって」


 俺はそう断言した。

 だって、それに間違いなんてないのだから。


 だが、予想外の事態が起こった。


 廊下の奥から規則正しい足音が響いた。その足音の主はこちらへ向かってきて、こうつぶやいたんだ。



「……見つけた。早田さなだくん」



 その女子は俺の苗字を呼んだ。

 あれは同じクラスの……!

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