超依存系ヤンデレちゃん

桜井正宗

◆愛してる。

 血のついたナイフを向けてくる愛海まなみは、死んだ目で俺に微笑んだ。

 ここ、学校の廊下なんだけど……。


 だけど、今は放課後。

 空は茜色に染まっていて、ただ静寂があるだけ。


 人の気配なんてなかった。



「愛してる。愛してる。愛してる……お兄ちゃん」



 愛海は、俺を“お兄ちゃん”と呼ぶ。

 血の繋がりなんてないのに。

 ただ、年下ではあるけど――それだけだ。



「……愛海、やめろ」

「やめない。お兄ちゃんが好きだから……やめない」


「どうしたらいい」


「ここでシよ。いっぱい気持ちいことするの」

「……ば、ばか。そんなこと……できるか」

「だめ。愛海のはじめてをお兄ちゃんに貰って欲しいから……ね?」


 胸元に突きつけられる鋭利なナイフ。ギラギラ不気味に輝いて、俺はただ恐怖に怯え……息を呑むしかなかった。


 俺を唯一慕ってくれる存在は、愛海だけだ。

 だから。


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