第12話 天からの使者
人が消えてから数十年、地下鉄のホームはかつて避難してきたであろう人々の私物や生活ゴミが無造作に落ち散乱している。
そして白骨化もしくは異臭を放つ遺体も。
アレンは携帯用のペン型ライトで辺りを照らしそれらの光景を目の当たりにした。
そしてその光景を見て感じる。
彼らはきっと恐怖に支配されていたのだろう。
生きたいと思いここへ避難したが、食料は数日で底をつき救出も来ない。
地上からは彼らの不安を煽る様に戦闘…得体のしれない奴らの音や振動が今のように聞こえていたのだろう。
どれ程の恐怖…だったのだろうか。
希望も無くただいずれ必ず来るであろう死、別れと言う名の恐怖は。
ここに倒れている彼らは耐えきれなかったのだろうこの空調設備も止まり当時は多くの人がごった返し蒸し暑く空気も薄い閉鎖されたこの空間。
中にはいずれくる死よりも自らで死を選ぶ者達もいたのだろう。
小さな小部屋では何かを燃やしたであろう焦げた地面、不完全燃焼した材木と遺体。
ホームや線路には首に紐がついた骨、遺体が供養されることも無く放置されている。
アリアが安全だからとここを選んだがその顔が曇っていた事を思い出す。
きっとアリアはこの景色を見せたくは無かったのだろう、あの時、合流地点での惨事も。
そう考えながら目を瞑りアリアの帰りを待っていると遠くから響いてくる足音が聞こえた。
「クソ! なんで俺がこんな目に会わなきゃいけねぇんだよ…。
最悪だ…ここは気持ち悪い死体ばかりだしふかふかのベットも温かいコーヒーもない…。
俺の使えねぇ機械人形共は全滅しやがったし…。
はぁ…早くノアに帰りたい…。
上流階級である俺のハクをつけるの為とはいえ来るんじゃなかったな…。
いや…親父に無理にでもURランクの機械人形共を連れてくる事ができてさえいれば…」
そんなブツブツと聞こえてくる独り言を聞き目を開けるとトンネルの奥から明かりと共に一人の男が歩いて来るのが見えた。
……
「一体何だこれは……!?」
「嘘でしょ…一瞬で…」
人類最後の砦、ノア。
それは地下奥深くに作られた地下都市の名前である。
その都市は地下にあると言うにも関わらず地下に広大な空間を掘り、作る事でまるで地上の都市を思わせる程の景色を創り出していた。
巨大なビル群を照らすのは人工の太陽と人工の空。
驚く事にその都市では人工的にではあるが雨や雪、霧といった環境変化を行う事も可能だ。
そんな都市の他にもノアには階層わけされた、軍事防衛施設、下級層、上流階層。
と複数に分けられ。
人類の保護とバランス、安定を維持し続けている。
その内の軍事、防衛を統括する階層の中央施設、中央司令部では巨大なモニターにいくつもの画像と動画が表示、再生されていた。
それらはフラワービューティーズのメンバー、リリーより送られた情報と、アレン、アリアが搭乗していた輸送機から送られてきた物だ。
そこに映るのは未知の兵器、光の槍を持つ、光に包まれ天使の翼を持つ何かが映っていた。
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