第4話 運命

 私達は機械で作られた人形……。

 その使命は私達を生み出した人類を守り人類の奪われた世界を取り戻す事。

 

 その上で私達には2つの絶対ルールが存在する。

 一つは人に攻撃を加えてはいけない事。

 そしてもう一つはコントラクターの命令は絶対という事だ。

 

 「おい! 人間もどき!!

 盾になれ!!」

 

 そう言われ、どれ程の仲間が犠牲になったのだろう。

 この一言…たった…この一言に私達は逆らえない。

 

 「ぐぁっ…」

 

 長く共にしてきた大切な仲間の一人が今、無能な人間の為に盾となりまた動かなくなった。

 

 「おい休むな起きろ!!

 …ちっ……使えねぇ…。

 どいつもこいつも…」

 

 私達の使命は人類を守る事…。

 だからこんな人間でも守らなくてはいけない。

 例え大切な仲間が死んだとしても…守らなければいけない…。

 なんで……。

 

 「クソッ! クソッ!

 なんで俺がこんな目に、作戦は簡単なものだったんじゃないのか!?」

 

 動けなくなりこちらに必死に手を伸ばしている仲間を見捨て…私はコントラクターの手を引き遮蔽物へと誘導。

 

 そして私は敵との射線上に入り次の盾としての役目をはたす。

 

 ……

 

 命令者であるコントラクターを連れ全力で距離を取る。

 私一人…いや…部隊でも奴らと戦って勝ち目はない。

 

 隠れられる場所を探し中央司令部に通信を試みるしかない。

 

 今の現状を整理しどう行動すべきか導き出し行動する。

 

 だが…どう計算してもこの状況を突破し戦地を離脱する方法が見つからない…。

 

 ただでさえ戦線離脱不可能な状況なのに…。

 

 「早く俺を安全な所へ連れていけ!!」

 

 これだ…。

 

 「黙って走ってください。

 その声で更に敵がよってきますよ」

 

 奴らは特に人間を狙う。

 その為か銃声よりも人の声に反応する。

 なのでこの命令者、指揮官の行動は愚の骨頂…。

 これでは死にたいのか助かりたいのか分かったものじゃない。

 

 廃墟となったビルの間にある小さな路地を走り抜け大きな道に出ると地下鉄への入口を横目でとらえた。

 

 一か八か…このままでは確実に全滅する…なら賭けに出たほうがいい。

 

 「指揮官! 私はここで敵の注意を引き付け食い止めます!!

 ですので指揮官は地下へ向かってください!」

 

 地下鉄の入口を指差し、残り弾数の少ない銃の弾倉を素早く取り替え臨戦態勢に入った。

 

 「ふざけるな! 

 機械人形が俺に指図するな!!」

 「急いでください! 

 敵機来ます!!」

 「くっ……」

 

 爆発音がしビルが崩壊したと同時に無能な上司…指揮官は慌てた様子で地下の闇の中へ走り込んで行った。

 

 「ごめん…皆…私もここまでかも」

 

 前方の砂煙の中に見える多数の敵、そしてその奥に控える巨大な何か、瞳のような赤い光の群れを見つめ今まで破壊された仲間たちの姿を頭に浮かべ銃のトリガーに指を掛けた。

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