第3話 フラワービューティーズ

 「隊長のお名前と所属をお答えください……」 

 

 名前と所属…そう聞かれ記憶の糸をたぐろうとするも空回りするばかりで思い出そうとするも思い出せない。

 ただ頭痛がするばかり。

 

 「うう…」

 

 頭の包帯で巻かれた箇所を抑え目を瞑る。

 思い出せず申し訳ない気持ちのせいか見守る彼女の視線が痛い。

 

 だが…いくら考えても答えは見つからない。

 目を見開き彼女の瞳を見つめる。


 「分から…ない……です…。

 なにも…」

 

 彼女はそれを聞くと動揺をあらわにしうろたえていた。

 

 「記憶が…無い…のですか…?

 そんな…嘘です…。

 嘘ですよね? 隊長……

 冗談だって言ってください…」

 

 彼女はそう言い終わると同時に私の首に手を回し顔を近づけると口を開く。

 

 「私の名前はアリア…貴方の名前はアレン…」

 「アリア?…アレン?」

 「そうです…アリア。

 隊長がくれた大切な…大切な名前です…。

 もちろん隊長の名前も…。

 だから…もう…忘れないでくださいね?」

 

 そう言い終わるとアリアは私を優しく抱きしめ続けた。

 

 ……

 

 人が消え数十年と整備がされていない廃都市。

 今では植物の根がビルや道路のコンクリートを砕き緑が生い茂っている。

 

 普段は静寂に包まれている街だが今は銃声と爆発音が幾度と無く響き聞こえていた。

 

 「ローズ! ラベンダー!

 前方のエネミー軍に集中砲火!

 リリー!

 本部との連絡はまだ取れないの!?」

 

 「了解、ボス」

 「やってやろうぜ!」

 

 ローズ、ラベンダーと呼ばれた女性型2機のマシンドールは壊れた車や瓦礫の隙間から顔を出し手に持つ銃を使い前方の標的に向け射撃を始め。

 

 「中央司令本部!

 聞こえますか!?

 中央司令本部!!」

 

 リリーと呼ばれた少女型は背に背負う通信機器をいじり右手の無線機で通信を試みていた。

 

 「もう!何よ!!

 ここなら連絡が取れるって話じゃ無かったの!?」

 

 現在広場で銃撃戦を繰り広げている4人の部隊の中で唯一の人間である女性は頭を抱え遮蔽物に身を隠し目の前で鳴り響く銃声と爆発音にかき消されないよう大声でそう叫び身体を震わせていた。

 

 「もっ…申し訳ありません!

 もう少し時間がかかりそうでして…!」

 「リリー! もう少しってどれくらいだ!?

 この銃声でどんどん敵が集まって来てやがる!

 弾もそろそろ底をつきるぞ!

 ローズ! そっちの弾倉はあとどれくらいある!?」

 

 「あと4つだけ、正直これキツいね」

 

 ローズと呼ばれた機械人形は冷静に答え再び銃撃を始めた。

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