月島陽の場合

 アクロポリスが解体され、8人のスター解散後、一般企業に勤めていた月島にマラソンの社会人チームの監督である石松賢章という男からスカウトされた。石松が監督をしているチームのスポンサーの中には月島が勤めている企業が入っていた。

「月島さん、元オリンピック選手候補だった貴方にどうしてもうちのチームに入ってほしいんですよ!」

 石松からそうお願いされ、月島は快く引き受けた。

 久しぶりのマラソンに、若干不安になっていた月島だったが、かつてマラソンに対して嫌な思い出があったが、8人のスターの仲間達のおかげで乗り越えられた。そのため、マラソンに抵抗がなく、チームのメンバーとも打ち解けられた。

 だが、ある事件が起こった。月島のチームメイトである鈴木のゼッケンが紛失したのだ。大会を1週間後に控え余計ピリピリしていた。

 鈴木は他のメンバーにゼッケンを紛失した事を伝えたが、もう1人のチームメイト松本が

「俺、鈴木さんが更衣室を出て行った後月島さんが後から入る所を昨日見ました」

「月島さん、本当なんだな?」

 鈴木と松本に問われ、月島は

「確かに行きましたが、僕は忘れ物があったから自分のロッカーへ取りに行っただけで他の方のには全く触れてません」

「は?お前元オリンピック選手候補だったからって調子こいてんじゃねーよ」

「してないです」

 その後も議論は続いたが、その日は何も答えが出ないまま解散した。


 翌日から月島と他のチームメイトはギスギスした雰囲気で練習していた。異変に気づいた石松は、鈴木と松本から訳を聞いて

「なんで月島さんが犯人だって決めつけるんだ?」

 石松が厳しく言うと

「だって月島が…」

 鈴木は返答に困っていた。

 石松は今度は月島を呼び出し、一昨日の様子を聞いた。

「監督、僕は更衣室に飲み物を忘れたから取りに行きましたが、他の方のには全く触れてません」

 月島は正直に言った。

「わかった。皆で手分けして探そう」

 石松がそう言うとチーム全員でゼッケンを探したが、その日は見つからずに終わった。


 だが、帰宅した鈴木は自分の鞄の中を見て驚いた。なぜなら、今まで自分が探してたゼッケンがあったからだ。

 鈴木は数日後、月島やチーム全員に謝罪し、それ以来鈴木が人を責める事はなくなり、また、月島もチームメイトとも元の良好な関係に戻るのだった。

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