第31話 ご褒美


ご褒美にニコニコのkeiさんです。

「ちなみにkeiは褒美に何が欲しいのかな?」

いきなり、王様…!

なんて答えたらイイか、困りますよね(・・;)

「keiは市場でキッチンカーしたい!営業許可欲しいです。」

王様が褒美を出す!と言ってるのに、何を言ってるんですかね。

あっ、keiさん…?

本当にザウラクに残るの?

「keiさん、市場の商業権は私が組合の人に相談することになりました。ご褒美は別ですよ。」

ザウラクに残る件、イリーさんと話がついているんでしょうか?

「おれはヘリが欲しいな!」

リーダーさん、グラバさんに睨まれています。

「私は街でのんひりと隠居が出来る住まいと、共済年金をいただきたい!」

おやっさんです。

隠居(-。-;

共済年金(-。-;

ザウラク政府にも共済年金があるんですか?

反政府軍のおやっさんはもらえないと思います!

いや~、グラバさんはうなづいています。

「私は港に倉庫を頂きたく思います。」

もちろん、トラネコさんです。適切で相応な希望です。

「ヘリはむつかしが、皆の希望を叶えられるよう検討しよう。」

王様はちょっぴり困り顔です。

「keiはどおしようかな?keiの住んでるとこは、雪がいっぱい降るので、大きなホイールローダーが欲しいと思ったんですけど…。ヘリコプターとか、ホイールローダーとか、重機はダメなんですか?」

ああ、keiさんはやっぱり日本に帰るつもりのようです。

「そうか、やっぱりkeiは日本に帰るのだな。」

王様はkeiさんにザウラクに残ってもらいたいようです。

「皆に私から頼みがある。」

王様が立ち上がりました。

「まずはトラネコ。そのほうの商才と情報網を、通産省に入省して活かして欲しいのだが、いかがなものか?」」

トラネコさん、即答です。

「ありがたいお誘いですが、私にも顧客という、大切な方々がおります。入省はご勘弁ください。でも、後押しをいただけるのなら、国益のためにご期待に添える働きをいたします。」

トラネコさん、異世界アニメチックにカッコいい。

「そうか、ではオブザーバーを頼むとするか!」

王様は残念そうです。

「期待しておるぞ!」

王様もわかってると思います。トラネコさんは役人になるより、自由に商業をしていた方が国益になるんだど思います。


「ところでドロテアにランバル、反政府軍などしていないで政府軍に入らないか?」

だだだっ、反政府軍の「反」をとっていきなり政府軍(^◇^;)

「おうさま、勘弁してくださいよ。毎日、制服を着て6時に出勤なんて、おれも仲間もできないすって(-。-; 」

ですよね〜。

「なかなか、私の要望は受け入れられるな。そちらは砂漠も砂漠を走る街道も熟知しておる。制服も出勤時間も無く、自由に街道の安全を守ってくれるだけでよいぞ。」

「堅苦しくなく、自分らで勝ってにやらせてもらいますよ。」

またまた、王様は残念そうです。

この人達を取り込めたら、治安も国益も、さらに向上することと思います。

keiさんと同様に勝って気ままが好きなんでしょう。

「彼らにもフラれてしまったな!ところでkei…。」

keiさんにも、何かあるようです。

「keiにはグラバの後任として、執務長をお願いしたかったのだが…。kei、ザウラクに残らないか?」

えー!

さめもビックリ‼︎

集まっている国民代表の皆様が、どよめいています。

もちろん、keiさんの活躍を期待してのどよめきです。

keiさんが執務長(^_^;)

ザウラクでは官房長官のような役職です。

「グラバから仕事を学んでもらい、後任を任せたいと思っているのだが!」

うだつの上がらないkeiさんにとっては、素晴らしい提案です。

「keiが政府の偉い人ですかー?ダメダメ!ありえませんって(^^)v」

なんで、ピースなんだか訳のわからない人です。

嬉しいけど受け入れられないみたいな感じ?

keiさんが高校生のときのことです。化学部の顧問の先生から意外な提案をされたことがあったそうです。

「二部でもいいから理系の大学に入って、助手として働きに来ないか?卒業後は教師にしてやるよ。」

学校をサボってばっかりのkeiさんにはタナボタです。

ところが…

まったく、同じ反応!

「keiが教師ですかー、ダメダメo(^^o)」みたいな…。

あっ、そうだ!

「keiさん、ザウラクにも憧れの共済年金があるみたいですよ。」

小声で囁きました!

keiさん、憧れの共済年金です。

でも、ぜんぜん聞く耳を持ってません。

「keiはゲストハウスのオーナーなんです。ご常連さんもいるんですよ。keiのゲストハウスに泊まりに来て、お話しするのを楽しみにしていてくれるんです。」

それはそれ!

自分により良い選択をしてください。と、さめは思いました。「keiはお母さんから受け継いだゲストハウスを辞められないなー。」

王様は腕を組んで考えているようです。

「民宿は人に任せてはどうだろうか?なんだったら日本語の出来るものを向かわせるが。」

そうしましょう!

困窮世帯から抜け出すチャンスです。

「お客様はkeiとおしゃべりしに来るの…。」

トルネコさんが一歩踏み出しました。

「王様。私もですが、お客様には主人が直接対応するものです。王様も毎日、世界中を飛び回っていらっしゃるじゃありませんか。」

王様の傾げていた首が、さらに傾きました。


沈黙してます。


突然、意を決したかのように王様が立ちかありました。

「では、勇者たちよ。祝宴を楽しみにしておるぞ!」

横に並んでいる勇者たちに微笑んでいます。王様はまだみんなへの提案を諦めていないのでしょう。

祝宴に持ち込みです。

「皆のもの、最後にもう一度、勇者たちに深謝の意を示そう!」

中庭は民衆の感謝の言葉で溢れかえっています。

また、花火がたくさん上がりました。

王様は「ほんとうにありがとう。」と言いながら、みんなと握手を交わすとステージを降りて行きました。

人々の声援はいつまでも続きます。

さめは、なんか、やっと終わった感で、疲れが込み上げて来ました。

「さぁ、皆さん!行きましょう。」

また、赤い絨毯を歩き中庭を退場します。

声援に答えて、笑顔で手を振って答えています。

無事に終わりました。


さて、王様の野望が渦めく祝宴が始まりました。

シェフさんの作った豪華なお料理が並んでいます。

異世界チックな宮廷料理です。

ところで王様が床に伏せっていたのは、シェフさんが料理に薬剤を入れていたからでした。

その後も点滴に細工をしたりしていたそうです。

暗示によってシェフさんは操られていました。

いつもと変わりのないシェフさんなのに、何かのきっかけで他人の指示どおりに行動していたのです。

あっあのサンドイッチ!と思ったのですが、そのような指示は暗示されていなかったのでしょう。

洗脳され暗示をかけた者も逮捕。シェフさんは医療機関で検査されました。

いまは国軍の監視下の元、厨房に復帰、腕をふるっています。

ほんとキラキラと輝いているようなお料理です。

keiさんは大喜び!

「ずいぶんと久しぶりにまともなものを食べてるかもo(^^o)」

食べまくってました。

keiさんの蕎麦やパン、煮物や煮魚も、かなりイケてると思いますが…。

ひととおり食べ終わり、満足そうです。

そこへ、ジグムトさんが丸めた図面のような物を持ってきました。

広げてkeiさんに見せています。

和風旅館の外観のスケッチのようです。

「どうでしょう?」

ジグムトさんがkeiさんに意見を求めています。

「内観はタタミ、トコノマ、ランマなど日本固有の物があるようですから、keiさんの意見を聞きながらと思いまして。」

keiさんは、へーって顔で感心しています。

「ぜひ、ハイランドリゾートでkeiさんに民宿を経営してもらおうと思っています。」

えー!

keiさんも困り顔。

「これじゃあ、ゲストハウスじゃなくて高級旅館ですから…。」

ジグムトさんは腕を組んで、高級旅館のスケッチを見ています。

「それにkeiのゲストハウスハウスは日本に…」

「それはなんだね。ジグムト君?」

王様が割り込んできました(-。-;。

「ハイランドリゾートでkeiさんに民宿を経営してもらいたいと思い。施設課に民宿の外観をスケッチさせてきました。」

王様に図面を指差し説明を始めています。

「だから、keiは日本に…」

「keiさん、これはいいじゃないか!民宿を経営しながらグラから国務を学べば良い。」

keiさんの言葉をさえぎり、王様は勝ってに話を進めています(・_・;

「でっジグムト君、どのくらいの収益が見込めるんだ?」

「収容が50人クラスの民宿を作り、一泊の宿泊料を1人食事付きで30万(日本円)ぐらい、稼働率80%でも…」

keiさんに関係なく、話はどんどんと進て。

「だから、keiは日本に帰るから…。」

遮られないように早口で喋るkeiさん。

「なんだね、早口で聞き取れなかったな?」と、とぼける王様。

「王様、おれたちの名前が決まりましたよ。」

ちょうどイイところにリーダーさんがやってきました。

王様はkeiさんを気にしながら、リーダーさんの話を聞いています。

「でっ、名前はなんとしたのかな?」

「青の旅団!」

「なんで、青?」

青?旅団?

「青い空みたいに広くて自由、砂漠の象徴って感じですか!」

いっしょにやってきた司令官さん。

「犯罪者について、彼らと連携しようなんて話になりましてね。」

トラネコさんも酒瓶を持ってやってきました。

「王様、彼らの選択はまんざら間違っていなかった様子です。」

keiさんの民宿の話しが遠のいていきます。

「商人達から護衛の依頼の話が出てきていますよ。」

祝宴には各地の豪商さんも来ています。

トラネコさんてば、さっそく青い旅団を売り込んでいるようです(^◇^;)

ザウラクって、そんなに盗賊いるの?リーダーさん達だけだと思ってた(-。-;

「おっkeiさん、バトルするか!」

トラネコさんが困り顔のkeiさんの顔を覗き込みました。

「kei、いっぱい飲んだし、食べたので、テラスで休んでくる。」

「なんだ、残念だな!」

飲む気満々なトラネコさん、淋しそうにグラスをテーブルに置きます。

「もう少し民宿の話しをしないか…」

慌てる王様。

「keiは日本に帰りますから…(´・-・`)」


賑やかな祝宴を離れ、keiさんとテラスに出てきました。

ザウラクの夜景は静かです。

繁華街があるわけでもなく、賑わっていた市場も日暮れで閉場。

keiさんは、そんなザウラクの夜景を見ながら、思い出にふけっている様子です。

疲れている、というより淋しそう。

keiさんの好きなRPGゲームの哀愁に満ちた、あの音楽が流れてきました。

オーケストラの人たちは、keiさんの様子を見て演奏してました(^◇^;)。

するとイリーさんがやってきたりして…

あっ、ホントにやってきました。

「keiさん、ありがとうございました。おつかれさまです。」

うつむきkeiさんは沈黙しています。

「もう、終わっちゃいましたね。」

「うん…。」

ところでオサキさんや猫魔王さんはどうしているんでしょう?

あー!ですよね(^^;;

男性達に囲まれています。

二人とも、keiさんの顔を潰さないように満面の笑顔で対応しています。

「kei、困っていたザウラクの人たちには申し訳ないけど…。冒険がもっと続いてたらイイと思ってる。」

「わたしもですよ。今、思い返せば、ワクワクする初めての冒険でしたから…。」


イリアです。

父や政府の人たち、改め青の旅団、トラネコさん。

みんながkeiさんに帰らずにいて欲しいと考えています。

もちろん、わたしもです。

けれども、keiさんには民宿があり、そこにはkeiさんのお客さんがいて、keiさんの世界があるんです。

様々なコミニケーションの能力を持ちながらも、keiさんは自分の世界に引きこもりることを望んでいるようです。

人と関われば、期待に応えよう!とする。

そんな人です。

自分でも解っているんですね。

だれとも親しく関わらず、仕事としてお客様と良い関係を結ぶ。

keiさんには、それだけで充分すぎるのでしょう。

keiさんを慕う人たちを、わたしはたくさん作ってしまいました。

keiさんが、いちばんに望まないことに、巻き込んでしまいました。

もう、明日にはkeiさんは日本へ帰ってしまいます。

日本在住のザウラク国民には、国王の勅令を出しました。

帰国をお出迎えしないように!

keiさんが早く日常に戻れることを祈っています。

でも、わたしも早くザウラクに戻って来て欲しいと思っています。


イリーさんは物悲しげに遠くを見つめています。

「イリー、またお手伝いにきてね。」

「もちろん、いつか必ずあそびに行きますよ。」

「あそびにじゃなくて、お手伝い!」

“いつか”はkeiさんの辞書に“二度と無い事象”と記されています。

「いつかなんて言わないで来てよ。これから裏岩橋は紅葉の季節だよ。すごいキレイなの!冬になれば東京でも見られない白銀の世界、雪っもふもふ。スノーボードも楽しいよ。kei、公認インストラクターですから(えっへん)、教えてあげるよ。」

二度と無い事象に抗っています。

「そうですね…。」

王女であり、医大の研究員、イリーさんも民宿を手伝うほど暇じゃ無いと思われます。

その後は思い出話に花が咲き盛り上がっていました。

少しkeiさんにも元気が戻って来たようです。

きっと、またイリーさんと楽しく過ごす時があるんだと思います。

“きっと”という言葉も、keiさんの辞書には“二度と無い事象”と記されています。

砂漠の冒険日誌もそろそろおわりです。

さめも寂しい気分でいっぱいです…

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