第30話 勇者をたたえる式典

keiさんはお城中庭の門前に立っています。

左にはリーダーさん、後ろにはおやっさんとトラネコさんです。

異世界の騎士のような出立!。

「keiさん、キラキラして見えますよ。」

孫にも衣装。とはこの事です(孫がいても良さそうな歳ですが…)。

さめはkeiさんの肩に乗っています。

keiさん達はルシファーさんをやっつけて、平和を取り戻しました。

今日は、その戦果を労い、功績を讃える式典です。

「この襟、苦しいー。フックを外して良い!」

「ダメです!学ランだと思って我慢してくだい。」

普段、寝巻きで仕事をしちゃう人には、窮屈かもしれません。「ほら、keiさん勲章を貰えるんですよ!」

「あっそうだった(^^)v」

ニコニコしてます。

同じく正装を嫌がっていたリーダーさんは、緊張してるのか黙ったまま微動だにしません。


30分前…

「やだー、魔法使いはローブを着るの!この服って重いし苦しいー。」

もう一人も。

「お坊ちゃん、お似合いですよ。」

おやっさんが苦労しています。「だってよー、ゲリラがこんな軍服をきるか!」

「やっぱり、ゲリラだったの!」

イリーさんが間髪を入れずツッコミます。

「坊ちゃん、亡くなられたお母様が見たらお喜びになりますよ。」

おやっさんも、かつては商人!

急所をついています⤴︎

「かあさんか…。かあさんは俺が何をしても褒めてくれたよ。勲章をもらう!なんて話したら泣いて喜んだだろうな。」

おやっさんの思うツボです。

てか、マザコン!

おかあさんも、おかあさんで息子に対してヘラのような依存心?

「そうだ、keiさん!keiさんも勲章を貰えるんですよ。」

イリーさんの言葉にニコニコし始めました。

「重くない。重くない。はい、サーベル!」

イリーさんが腰にサーベルをつけてあげてます。

「えー、なんでサーベル??」

「騎士の勇姿、素敵よ!」

イリーさんに『素敵』と言われても、ぜんぜん表情を変えないkeiさん。

もちろん、イリーさんがその場を取繕うという気持ちが、keiさんにも見え見えなのでしょう。

「魔法使いは、杖とローブと相場は決まってるんですが…。」

B級ですが…

「あれっ魔法戦士は制服にサーベルじゃないのかしら?」

「魔法戦士の装備は、バサーで売っちゃったもん!バンガードコート着てるかも(^^)/」

ほんと、面倒な魔法使いです。でも、keiさんの言う通りです。魔法使いにナイトな正装にサーベルは違いますよね。

剣豪イリーさんの趣味趣向なのでしょう(-。-;

「keiさん、ご褒美ももらえるそうですよ。」

さめは助け舟の一言を出しました!

「ホント!」

ニコニコ、ニコニコo(^^o)

イリーさんからグッドのサインが送られてきました。

「keiさんはご褒美に何が欲しいのかしら…?」

さらにイリーさんが追い打ちをかけます。

「keiは市場でキッチンカーを出店する許可が欲しいかな。」

数千人の命を救って、キッチンカーの営業許可ですか(・_・;

「市場の商業権ですね。お父さんに頼んでおきます。」

ニコニコo(^^o)

ニコニコしてる場合じゃありません。

日本に帰る事を忘れてませんか…?

まぁ、いいや。keiさんも式典に相応しい騎士様の様相です。

「俺がさ、運動会の徒競走で一番になったんだよ。その時のお袋の喜びよう。なんか、思い出しちゃったよ。オムライス美味かった!」

おやっさんも罪作りです。リーダーさんは涙でグシャグシャです。っていうか、おやっさんまで肩を落とし涙を拭っています。

よぼど人望が厚く慈愛に満ちた方とおもいます。

「さて、式典に出かけますよ!」

イリーさんがカツを入れます。

「リーダーさん、いつまでも泣いていては、亡くなられたお母様に勇姿をご覧いただけませんよ(カツ)。」

リーダーさんは涙を堪えながら背筋を伸ばしています。

「keiさんは何をうかれているんですか!」

ニコニコ ニコニコ ニコニコ

「式典に赴きますよ!」

2人ともイリーさんに背中を押されています。

本当だったら国王の隣に座って「お父様、この者達は…?」なんて、のたまわっていれば良いものを(-。-;

ホント、面倒見の良い方です。王女、自らエスコート役です。

たかたたぁーん

つくつくーん

ととととぉーとぉとぉとぁー

ぱんーっぱ はんばん

ぱんーっぱ はんばん

トゥツ-トゥツトゥツ-

つるっるトトツぅ~る

城の中庭で吹奏楽団のファンファーレが鳴り響きます。

そして、オーケストラが英雄を讃える楽曲を奏ではじめます。

この曲!

冒険者を讃えるに相応しいといえば…

誰しもが高揚したと聞く、あの冒険RPGゲームのタイトルミュージックです。

ご褒美に目の眩んでニヤけたkeiさんのお顔が、ファンファーレで、キリリ!

私にまかせなさい!みたいな顔つきになりました。

ゲームの音楽が、人を律する力を持っていると言う事です。

とくにkeiさんに、この曲は効果的面!

イリーさんがクスクスと笑っています。


そして、門が開きます。

いくつもの花火が打ち上げられ、人々が歓声をあげました。

左右にローブが張られ、たくさんの人が声援をあげています。keiさん達の名前を叫び、手を振っています。

この式典に参加した人は、百数十倍の確率のジャンケンで選ばれた栄誉ある人々です。

イリア王女!と叫ぶ声もたくさん聞こえています。

あっそうです。

エスコートではありません。イリーさんは事件解決にもっとも尽力された人でした。

さめは人々の歓喜の声に圧倒されてクラクラしてきます。

keiさんとリーダーさんは固まっています。

「さぁ。」と言って、イリーさんが会場に招き入りてくました。

赤い絨毯がひかれています。

案の定、リーダーさんの手は足と左右同時に動いています。keiさんはバラバラ!

トラネコさんがイイ事を考えたようです。

「行進じゃないんですから、無理に手を振らなくてもイイですよ。」

手を降らなくてもイイ!と言われても二人とも、なにも分かってないでしょう。

「前後に手を振らず、みんなに向かって手を振って、声援に応えてあげてください!」

名案です。

あっ。

「前をむいたままじゃ無く、みんなの方を向いて手を振ってください。」

ロボットのように首が周り民衆の方々に向きました。

「ほらっ笑ってください!」

さめも口を出してしまいました。

笑った顔がひきつっていますが、どうにか形になりました。

歩む絨毯の先にはステージが造られています。

そのステージの中央に3段程登る位の台があり、王様が王座につかれています。

王座の両脇にはジェイクさんとエルウッドさん。王座の台座の横にはグラバさんが立っていました。

ステージの前に着くと片膝を付き、頭下げて、王様に敬意を示します。

なんかもー、異世界チック!

そして、イリーさんだけが頭を上げて、王様に報告します。

「国家転覆を企む宗教家を追放し、囚われていた国民を解放して参りました。」

凛々しい!

「イリア、あと美しい女性が2人いると聞いているが…?」

イリーさんが頭を上げて、王様の問いに答えます。

「二人は疲れのせいか、体調が優れず式典は辞退されました。この後の祝宴で王様にご挨拶される。とのことです。」

王様は頷きました。

「女性でありながら、たくさんの武功をあげたと聞いている。残念だが、祝宴を楽しみにしよう。」

ほんとうはたくさんの人に囲まれるのが、恥ずかしかったんです(^◇^;)

「皆、顔をあげなさい。ご苦労であった!では、褒美を取らせよう。」

会場は静まり返り、心地よい風が流れています。

慣れてきたのか、疲れたのか、keiさんもリーダも落ち着いています。

「イリアはこちらに来なさい。」

ステージにはもう一つ椅子が用意されていて、イリーさんはステージに上がり椅子に座りました。

椅子の横にはテーブルがあり、なにか置かれています。

たぶん、イリーさんがご褒美をくれるみたいです。

「反政府軍リーダーのドロテア、腹心のランバル、商人トラネコ。諸君らには国家功労勲章とナイトの称号を授けよう!」

大きな声援と拍手が湧き上がります。

てか、リーダーさんの名前って、ドロテアさん!

いかにも反政府軍、いやヨーロッパの騎士にも似た名前です(^◇^;)

「トラネコさん、壇上にお越しください。」

イリーさんが勲章と称号の証書をもって立ち上がります。

そして、ランバルさんにリーダーさん。

3人が名誉を授かり、王様のいる台座の隣に並んでいます。

「賢者kei、そなたは遠方の日本からやって来て、縁もない我が国を救ってくださったこと、誠に感謝の限りがない。さらに王女イリアと行動を共にして、娘を守ってくれたことも、父として礼を言い尽くせない気持ちである。」

マジ異世界なんです。

こんな挨拶、現代では化石です。

でも、王様からそれほどに感謝されてるんだと思います。

でも、さめは不思議に思い始めたことがあります。

keiさんは知らないことですが…

堕天使ルシファーさんとお知り合いのイリーさんが、B魔のkeiさんを頼りますか?

結果としてはkeiさんの偶発的な超越ヒーリングで、たくさんの人を助けました。

それはイリーさんのシナリオの中には無かったことでは?

イリーさんも何か特殊な能力を持っていると推察するのです。

その能力を国民に知られたくない。

たがら、見た目には自称魔法使いの中二風なkeiさんを利用した!

でも、それでも疑問は残ります。

ブラウザーゲームのプロフィールに魔法使いと書いてあったからと言って、keiさんの民宿に1カ月もアルバイトに来ますか?

お父さんが病の床にふせっている時です。

もし、keiさんに『あのプロフィールは嘘なんですー。魔法使いじゃないよ!』と言われたら元も子もない、時間の無駄です。

keiさんが魔法使いだと言うことは知ってた?

イリーさんの能力がわかりません。

これ以上は根拠のない憶測なので発言を控えます(さめキリリ!)。


「keiには国家特別功労勲章と伯爵の称号を授けよう。」

kei伯爵(^◇^;)

イリーさんから名前を呼ばれてステージに上がりました。

勲章をつけてもらい、伯爵の称号を受け取りました。

「いまさら称号など、何の役にも立たないが、気持ちだけ受け取ってもらいたい。それと皆に褒美を出そう。」

^_^ ←keiさん

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