第27話 スコピヨ姫の抜け道
スコピヨ姫の部屋は使われていませんでした。
この部屋のテラスは周辺を監視するのに良い場所だと思うのですが、誰もいません。
荒れ放題です。
破壊されたと言うより風化した感じです。
「ここだね!テラスがあるー!」
「keiさん、気をつけてください。テラスに出てはいけません!崩れ落ちるかもしれませんよ。」
まぁ、高所恐怖症のkeiさんがテラスに出て、はしゃいだりしないでしょう。
「これが玉座ですな。」
オサキさんが石で作られた大きな椅子を見ています。
椅子全体の大きさからすると、座る座面がかなり低く感じられます。
スコピヨ姫の玉座なのでしょう。
女性の女王か、王女がいたことは本当のようです。
「この石の玉座の周りを木や布や綿で飾り、座り心地も良くしてあったのね。でも、私はこんな大きな椅子に座っていたくないわ!」
と無二の第一王位継承者が申しております(-。-;
「見上げる高さにある父の玉座と違って、この玉座は床に置かれているのね。」
玉座というのは威厳の象徴なのでしょう。
その玉座が床に置かれているのは、イリーさんの興味感心することなのでしょう。
「玉座の裏に鏡もなければ、抜け道らしきものはありませんね。」
ただ、断崖をくりぬいた岩で覆われていました。
「ねぇねぇ、こっちにお部屋があるよ。」
「keiさん、むやみに入っちゃいけません!」
keiさんは隣の部屋に向かって走り出します(-_-;)
「待ってて下さい。私が中を照らしますので。」
オサキさんはkeiさんに駆け寄ると光り始めました。
「スコピヨ姫の寝室のようね。このベットは大理石で出来てるわ。どこからか輸入してきたのね。」
「壁も大理石ですね。」
埃だらけになってますが、掃除をしたら大理石で作られた豪華な寝室が現れるのでしょう
「わぁ!」
「あれkei、どこいった?」
猫魔王さんがキョロキョロしています。
「隠し扉か?よしここだな!」猫魔王さんは、拳を振り上げました。
「おい、叩くな!」
おさきさんが拳を振り上げる腕を掴んで止めました。
「やっぱり、そうだ。ここが隠し扉だ。」
猫魔王さんはゆっくりと扉を開けて、中の様子を…
「ぎゃー、落っこぢるー!」
keiさんの叫び越えです。
「叩いてないぞ!」
そっと、中を覗きこむ猫魔王さん。
「蛇蛇、食べられちゃうー(´□`;」
手を差し伸べました。
「ほら。」
どこかに落ちそうになっているkeiさんを猫魔王さんが引き上げました。
「巨大なニシキヘビがたんさんいるぞ。keiなら絞め殺されて丸呑みだな!」
「例の仕掛けの通路ですな。」
イリーさんもオサキさんも、覗き込んで感心しています。
「この蛇たちはスコピヨ姫の家来じゃないかしら?きっとお姫様を守っていたのね。」
イリーさんは守るべき主人を亡くした蛇たちを憐れんでいるようです。
「だから、スコピヨ姫はサソリだって!」
さめも、そう思います。
「この綱を伝って向こうに行くのか。kei、おれの背中にしっかりとつかまってろ。」
「イリーさんは大丈夫ですか?」
「これくらいの平気よ!」
さめはkeiさんのポケットに入りました。
「じゃぁ出発(^^)/」
keiさんが号令をかけます!
「ねぇ、おんぶ紐ないの?」
「あるわけねぇだろ!」
猫魔王さんがあきれています。
「小さな女性の姿ですから、しっかりつかまれるでしょ!」
大きな猫魔王さんの姿だと、毛にしがみつくしかありません。
「万が一のために、しっぽでも巻いとくか!」
猫魔王さんはしっぽを、くるりとkeiさんに巻きつけましたw
まずはオサキさん、つぎにイリーさん。左右にクルクルと回りながらあっと言う間に向こう側にたどり着いてしまいました。
そしてkeiさんを背負った猫魔王さんです。
揺れてkeiさんが落ちないように、少しづつ手を伸ばしながら慎重に進んで来ます。
keiさんのポケットから下を覗いてみましたが、巨大な蛇が折り重なるようにうごめき恐ろしい光景です!
「下を見るなkeiっ」
「ん、分かってる。 ところでこの耳っ動くんだね。」
「付け耳じゃないからな。」
高所恐怖症のkeiさん、しっぽを巻いてもらったおかげで余裕です。
しかし、この蛇たちは何を食べて生きているんでょう。
「さてとお次は沼に浮いた軽石か?石をひっくり返して落ちないように向こう側にわたるんだな。定番中の定番、きっと沼は強い酸性なんだろう!」
猫魔王さんはふところから鮭を出すと器用に皮を剥いて沼に放り込みました。
白い湯気をあげ、ブクブクと泡を立てて溶けてしまいました。
「kei、しっかりと掴まってろ!落ちたら、ああなるぞ。」
猫魔王さんをkeiを肩車で、ぴょんぴょんと石の上を跳ねていきます。
「イリアさんは私が背負いましょうか?」
「これくらい大丈夫だと思うわ。」
少し危なかしげにも渡りきりました。
そうそう、今はオサキさんのポシェット中にいます。
まだまだ試練は続きます。
次は迷路。
三角の矢印の付いた石板で通路が埋め尽くされています。
「矢印の方向にしか進めないようですね。」
ありがちな迷路です。
「じゃあ、矢印をたどって、どの石板から入ったらいいか見つければいいんだろ。」
猫魔王さんの想像するとおりです。
「ちっちっちっ。そうはいかないんだなぁ~。これが(^ ^)v」
ピースして得意げになってる場合じゃありません。まったくB級魔法使いです。
「たぶん、石板に乗ると石板が回転するんだよ。きっと!90度、ひょとしたらひっかけで180度。ひっかけの180度以外は右90度とか、左90度とか、順番だったりするんでっす(^ ^)/」
得意げです(汗)
でも、keiさんの想像は正しいでしょう!
「keiさん!」
ぴょんとためらいも無く目の前の石に飛び乗りました。
「ほら、右90度に回転した!」
ぴょん。
「今度は左だよ。」
ひょん。
「右ですねぇ。」
石板の2列目から、ジャンプして戻ってきました。
「次の石板に行くと、石板は元に戻るでしょ。ひっかけがあると、入り口に戻るのに時間がかかるので、ひっかけは無いです(^ ^)v」
通路をふさいでいる石板は横に10列、一人2列ずつ検証すれば答えが見つかります。
ん~。5人でうなります。
「keiっ見つけた!」
keiさんが一番乗りです。
「私も見つけたわ。」
「私もです。」
イリーさんもオサキさんも見つけたようです。
さめも見つけました。
猫魔王さん、うんうんとうなずいています。
しかし、答えは2つ!
イリー・オサキ・さめアンサー、kei・猫魔王アンサー。
「二つ答えがあるのでは?」
「それは無いと思お~。」
それぞれにお互いの答えを検証します。
「あっ!イリー、ここから始めると戻ってきちゃうよ。」
たしかに!
さすがkeiさんに猫魔王さん、遊ぶことには長けています。
「良かったね、エニックズな造りの迷路で(^▽^)」
??
無事に迷路を攻略しました。
さらに槍攻め火攻め水攻めです。
「ふう疲れるな!」
歩くアルギニンな猫魔王さんが音を上げています。
「休憩しましょうか?」
イリーさんも疲れた様子です。
しかし...
巨大ムカデ登場
「一つくらい、こう言う工夫を凝らして欲しいと思っていたところだ。」
と言い残し、猫魔王さんが飛び出して行きました!
猫魔王さんは疲れたというより、退屈していたようです。
意気揚々として、巨大ムカデにファイティングポーズ!気合が入っています。
そして、お互いを見定めているのか?睨み合い続きます。
「解説のイリーさん、今後の展開について、どのような想像をされていますか?」
「そうですね、力では圧倒的に猫魔王さん有利と思いますが、大ムカデ選手の無数の腕や手は使い方しだいで強力な武器になりますね。」
「猫魔王vs大ムカデ戦!実況はさめ、解説は剣豪イリーさんでお届けします。」
「ねぇねぇkeiは?」
いきなり猫魔王さんが身体を回して尻尾打ちに出ましたー
しかし大ムカデ選手、身体をくねらせて衝撃をかわす。
こんどは大ムカデ選手、身体を曲げバネにして猫魔王さんに頭突き攻撃!
猫魔王さんは大ムカデ選手の頭を払い除けました。
「イリーさん、まだお互いに探り合いをしているのでしょうか?」
「連続した技や決定打になりそうな攻撃は控えているようですね。」
おっ頭を払い除けられた勢いでお尻側の...
巨大ムカデ選手は背中側に丸められ、猫髭で縛られてしまいました。
「やっぱ、ストーリーボスが出てくるようなイベントがなくてはな!あ~、すっきりした。」
そして最後のイベントは、たいてい巨大な丸い石が転がってくるものです。
「わーっ、やっぱり転がってきた!」
「keiさん、固まってる場合じゃ無いです!逃げましょ!」
とkeiさんに言ってる間に、猫魔王さんがkeiさんを肩に担いで走り出しました。
イリーさんもおさきさんも、猫魔王さんに続いて走り出します。
さめはおさきさんのポシェットの中です。
転がって来る岩は、たぶん直径10mくらいありそうです。
加茂水族館の5mの円形水槽よりはるかに大きいです。
猫魔王さんの走る速度が遅くなってきました?
二人に追い越され最後尾です。えっ、前に走りながら、後ろの岩を登ってる?
いや、前に走りながらもだんだんとスピードを下げて岩の上に登っていきます。
「こりゃおもしれー!」
左右とぴったりなのに、上には空間があるようです。
keiさんは怖がってバタバタしています(-。-;
「九尾、この先の左側に穴が空いてるぞ!」
おさきさんが一段と素早く走り様子を見に行きました。
「ここに逃げ込みましょう!」
イリーさんも猫魔王さんもうなづきました。
「この岩で穴が崩れて塞がれちゃ、困るし急ぐか!」
猫魔王さんは玉より早く走りはじめました。
エイトニャンです。
おさきさんはさめの入ったポシェットを、首から外し手に持つと穴に伸び込みました。
穴は鍾乳石のようなツルツルした穴です。チューブのようになっていて、下の方に向かって続いています。
「きゃー‼︎」
叫び声が響いています。
もちろん、イリーさんの声ではありません。
20〜30度くらいの傾斜があり、どんどんと加速しています。このままどこかに飛び出せば、大怪我です。
さめは火星での出来事を思い出しました。
「いったいどこまで続くのでしょう?」
さめはオサキさんに意味のない質問をしてしまいました。
「わかりません!少しスピードが出すぎてますね。手足を広げて減速してみましょう。」
イリーさんもおさきさんの肩に乗って手を広げて減速を手伝っています。
猫魔王さんはkeiさんを肩に乗せ踏ん張ってます。
出口らしき光が見えてきました。
おさきさんはおでこを擦りながら下の様子を伺っています。
「もうすぐです!」
この言葉に間髪も入らず、外に飛び出しました。
そして、オサキさんがイリーさんを抱きとめる。
猫魔王さんは出来た瞬間にkeiさんを放り上げ、クルッとでんぐり返しをすると落ちてくるkeiさんを受け止めました。
keiさんはキョロキョロしています。
そして、さめたちの目に入ってきたものは、魂を抜かれたような人たちの行列です。
「おいお前たち、ぼーとしてるな。はやくみんなの列に入れ!」
この注意してきた人をなんと呼んだら良いのでしょう
番兵、僧兵、公僕、憲兵、なんとも偉そうです(-。-;
でも、なんとかスコピヨ姫の抜け道を通り抜けたようです。
「とりあえず、行列に並ぶしかないだろう。」
猫魔王さんはそう言うと、keiさんを突いて歩きはじめました。
イリーさんもおさきさんも、うなづき列に加わりました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます