第26話 スコピヨ姫の伝説

「私が階下の様子を見てきましょう」

オサキさんから以前に聞いたことがあります。

素早く動いている時って、オサキさんが素早く行動していると言うより、時間が止まっているような感覚だそうです。

一瞬消えたチャイナ服のオサキさんが、すくに現れました。

この下、5階くらい兵士や僧侶の者たちの宿舎になっているようです。

200〜300人くらいの者が待機していたそうです。

僧侶のような姿の人は待遇が良く組織の幹部らしく、その他の人は近くの町の人や、傭兵部隊のようです。

「よし!ぶっ潰しにいくか!」

如意棒を構え、どことなく宙を睨む猫魔王さんの姿は凛々しい(^^;;

「でも、猫魔王さん!ちょっと待ってください。オサキさん、階下5階の先はどうでしたか?」

「何か重く硬い金属の扉があって、先のことは分かりませんでした。」

たぶん、その先に失われた人たちが囚われているんでしょう。

「そうね、さめくん。正面から攻めても、結局はその扉で立ち往生なんて。かえって、組織の思うつぼね。」

だからと言って、どうしたらいいのでしょう。

「ねぇねぇ、猫猫。スマホの充電ゲームしない?」

「えっ。さめに怒られるから、やらない!」

当たり前です。

そんな事をしている場合ではありません!

「でも、俺の出番はないみたいだし、充電ゲームやるか!」

あー、なにを考えてるんだか?

「keiさん!猫魔王さん!」

ハーイ(-。-;

今度はイリーさんに怒られています。

「ところでよー。その女は何もん?」

「その女とはなんだ!女性に対して失礼だろ!しかもこの方は、この国の王女イリア姫だぞ!」

「この女じゃなかった、このお嬢はお姫様かよ!!」

女と言いかけて、面倒くさそうに訂正してます。

「てか、この女じゃなかったお嬢は、keiんとこにバイトに来てた娘だろ。」

「女でもいいですけど、名前で呼んでください。」

「イリアか、よし!」

イリーさんが今までのいきさつ猫魔王さんに話しています。

「keiっ面倒なことに関わっちまったな!」

「ごめんなさい!」

すかさず、イリーさんが深々と頭を下げました。

「いや、謝ることはないんだって(汗)おれも手伝うし…(汗)魔法使いは冒険しなくちゃなあkei(汗々)」

口を滑らして、魔王がしどろもどろです。

オサキさんはもちろん、keiさんにまで睨まれてます。

「おまえ、何も知らないで、ここまできたのか!」

「そうそう、keiは不思議に思ってたんだけど!きゅっぴも猫猫も、なんでkeiがザウラクに来ていることを知ってるの?秘密なんだよ」(-。-;

そうです、keiさん。確かに不思議です。

「なにか事件が起きていることはキツネ達に聞いたが、あとは鼻を利かせて追ってきただけだよ。」

鼻を利かせて( °o°)

「お前はどうなんだ!」

「神使の私に聞くか?あれだ!」

んんっ?

ごまかした??

同様に鼻を利かせてたのかもしれません。

「猫猫は飛行機で来たの?」

猫魔王さんのことだから、色々とインチキしたような気がします。

「さめ!おれを疑いの目で見ただろ。」

あらっ(^^;;

「おれは正々堂々、ヒバラドンに乗ってきたさ!」

ヒバラドンも来ているようです。

「あーっ!」

「そうですよ。keiさん!」

「なになに?」

イリーさんは、話にまぜって!って顔をしてます。

「反政府軍さん達が見た魔物は、快鳥ヒバラドンなんですよ。」

「リーダーさん達、食べられちゃてないかな?」

身体が大きいからと言って、むやみに食べないでしょう?

「大丈夫だ。あのチンピラはkeiの仲間だ、手伝ってヤレ!と言ってきた!」

ナイスフォローo(^^o)

「keiさんは魔物を使役してるんですか?」

また、イリーさんの異世界転生癖です。

「刷り込みです。」

「えっ!」

「keiさんが大きな卵を見つけて大切にしていたら、翼竜が生まれちゃったんです。」

「魔物じゃなくて、恐竜なの?」

「爬虫類ですから、似たようなものです。生まれてからも餌をあげたり、一緒に寝たり…。大切にしてくれたkeiさんを、親だと思ってるんじゃないですか?もちろん、ヒバラドンという名前もkeiさんがつけてあげました。」

「ヒバランが味方してたら、リーダーさん達も安心だね(^^)v」

迫撃砲もロケットランチャーも腕の太い傭兵も、全て吹き飛ばしてしまいます!

「よし!その組織をぶっ潰してイリアの親父や国を守ればいいんだな。」

なんか、いきなり!

猫魔王さんが本題に戻りました。

なんだか、頼もしいです。

「外はヒバラドン君がいれば安心ね。私たちも行動しましょう。」

しかし、どうしたものでしょう!

「さめがヒレを組んでクビを傾げてるぞ。」

「猫魔王さん、さめ君のどこがクビなんですか?」

イリーさんまで…(・_・;

「ヒバラドンに乗って4階より下を直接攻撃するのはどうだ。」

猫魔王さんは拳を握りしめて、戦う気満々です。

「わたしはおすすめできないわ。外から攻めて城塞が崩落したら、たくさんの怪我人が出てしまいます。」

「たしかに!」

猫魔王さんも事情が飲み込めたようです。

「じぁゃよー、やっぱり正攻法で階下に突撃するか!」

さめも最後はその手しか無いような気がしてきました。

「ここって、いつ崩落するか解らない古い建造物よね。組織が作ったとは思えないの!」

イリーさんの言う通り、ちょっとした衝撃で崩落してしまいそうです。

「たしかにそうですね?」

この城塞を作るとしたら、大工事です。

「たぶん、遺跡を利用したのね。」

遺跡と聞いてkeiさんは目を光らせています。

「遺跡なのここ?世界遺産とか~?」

遺跡=世界遺産

keiさんらしい発想です。

「わたしの国には残念ながら世界遺産は無いですね。」

「kei!お姫さまも知らない遺跡だぞ。財宝とかあるかもよ?」

猫魔王さんも猫魔王さんらしい発想です。

「トレジャーハンター!」

「財宝は山分けな、行くか!」

おーーーっ!

ふたりだけ、ノリノリです。

財宝なんてあるわけがありません。

「財宝なんてありませんよ。もし、有ったとしても組織に盗掘されちゃったと思います。」

新しい発見でもしないと、遺跡の財宝なんて残ってるはずがありません。

ひっとして、どこかに見つかっていない隠し扉があるかもしれません。ここになくてもどこか近くに埋蔵金が…

あっ、いけません。

さめまで変な妄想を始めてしまいました^^;

財宝とは、その言葉だけで魔力を持っているかのようです。

「でも、私の国のどこかには砂に埋もれたお城がある。と聞いたことがあります。たぶん、ここはスコピヨ姫のお城なんだわ。」

スコピヨ姫の城??

「子供のころ母に絵本で読んでもらったの。そうよ!ここはスコピヨ姫のお城!姫は外に出かけたくて、城の抜け道を使ったお話し、思い出したわ!」


「昔、スコピヨ姫と言う蛇神のお姫様がいたそうです。」

イリーさんはスコピヨ姫のお伽話を始めました。

「ヒヨコみたいだね!」

keiさんが話に加わると先に進みません。でも、さめもそう思いました。

「ヒヨコじゃなくて蛇の神様、蛇神のお姫様。」

「じゃしんちゃん?」

違います!

「いや、その姫はサソリだと思うが...。」

今度はツッコミは猫魔王さんです。けれども、さめもサソリのような気がしてました。

イリーさんは目をつむりながら、記憶を確かめるように話しはじめます。

蛇の姿でありながらも、清楚で美しいお姫様だったそうです。

でも、お姫様はお城の中の退屈な生活にうんざり。にぎわう街の光、かすかに聞こえる楽しげな声、外の世界にあこがれていました。

玉座の裏にある鏡に姿を写すと、一晩くらい人の姿になれるのです。

そして、夜な夜な街へ遊びに出かけるようになったなりました!

イリーさんは熱心に話していますが、なんかありがちなおとぎ話なんですが...

「そして、街の男性と恋をするんですな。」

オサキさんまで、さらにありきたりにしようとしています…

やっぱり、お伽話ってそういうものですかね。

「ちょっと、待ってね。スコピヨ姫は蛇の姿だったら、どこでも自由自在に動き回れます。でも、人の姿ではこそっりと抜け出すことはできません。」

苦難がスコピヨ姫を待ち受けているのでしょう!

ありがちなお話です。

でも、みんなイリーさんのお話しに聞き入っています。

また、ゆっくり話しを始めました。


じつは玉座の裏には、城内のさまざまな場所に通じている抜け道もありました。

緊急事態の時の抜け道です。姫はこの抜け道を通って外に出かけるようになったのです。

お城の人たちはスコピヨ姫が抜け出さないように、人の姿で通れないような工夫を抜け道に凝らしました。

もちろん、スコピヨ姫が抜け道を通って出かけていることは、知らないフリをしていました。

仕掛けというのも、本当に怪我をしたりしたら一大事!お姫様を驚かすくらいのものでした。

そうしているうちにキューピーさんの想像どおり、街の男性と恋をして〜。なんだけど(^_^;)

「いざと言うときに逃げるための通路、抜け道はありそうでしょ!」

「ありそうですね!猫魔王さん、外から見た城塞を作りを覚えていますか?この上は何階くらいありました?」

普通、王様や王族がいるのは最上階です。そこにきっとスコピヨ姫の部屋があるはずです。

「5階くらいかな、そう言えばあたりを見渡せるようなテラスがせり出ていたな。」

「そこね!」

イリーさんは確信した様子です

「そこですね!」

さめもそう思います。

「どんな仕掛けがしてあるの?仕掛け、ヤバくないですか~!」

「keiさん、これはお伽話!仕掛けなんてありませんよ。」

きっとkeiさんには、地獄絵ような世界が見えているんでしょう。

「さっそく、行ってみましょう!」

活路が開けたようで、さめはワクワクしてきました。

でも、ひどい状態です。

石で作られた階段も、ほとんど崩れています。

天井も朽ちて穴だらけです。

オサキさんと猫魔王さんがいるのでなんとかなりそうです。

「やっぱり、スコピヨ姫は男性と結ばれて幸せになったのですね。」

オサキさん…!

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