第25話 城塞への潜入
昨日は尾根伝いに歩き岩陰でビバークしました。
今日は夜が開けないうちから移動して、すでに城塞の脇の断崖に潜んでいます。
keiさんは、昨日の夜もたくさん食べて、たくさん寝て、元気ハツラツです。
「下の方が騒がしくなってきました。」
オサキさんから緊張が伝わってきます。
「予定より、時間が早いわ?」
イリーさんは怪訝そうな顔です。
「イリーさん、電話が鳴ってます!」
ジグムトさんから借りてきた超指向性衛星携帯(携帯と言うにはかなり大きい)。
なるべく水平に置いてスイッチを入れるだけです。
「ねえねえ、さめ!気になってたんだけど、その大きな携帯電話はなんなの?」
「これは超指向性衛星携帯電話と言って、レーザーを使ってピンスポットで通信が行える電話です。信号が広がらず、通信が出来るので機密性が高んです。」
…?
「反政府軍から送られてくる電波は一般的な衛星通信ですから無指向性です。電波が四方に広がってしまいます。」
「虫殺せい?」
keiさんには絵に書いて、ゆっくり説明しないと無理そうです。
「あとでゆっくり説明しますね。」
「わたしも聞きたいわ?」
パラボラアンテナがレーザー通信衛星を探しています。
「ちゃんとついて来てくださいね。」
ん。ってイリーさんはうなづきましたが、keiさんの頭脳は飽和しています。
「こちらの信号は電波でなくレーザーなので、信号が広がらず衛星に届きます。広がらないと言うことは、盗聴されない、発信源をさとられない、と言う特性があるんです。」
ふぅ~ん!
イリーさんは理解してくれたみたいです。
ちょうど、チコチコと動いていた小さなパラボラアンテナが止まりました。
パラボラが衛星を見つけたようです。
レーザービームが発射されてます。
「イリーさん、お話しが出来ますよ!」
イリーさんは受話器を耳にしました。
「おい、すぐに出ろよ!こっちは大変なんだ!」
ヒュ〜〜ジュゥバン
爆発音!
迫撃砲で攻撃されているようです。
「時間よりはやかったわね?」
「俺たちの行動がバレていたようだ。奇襲を受けている!」
反政府軍さんがバレていると言うことは、イリー班の作戦もバレているのでしょうか?
「ところで、あんたの大切な民草は迫撃砲にロケットランチャーを持ってるのか!俺の太腿より太い腕をした男が波のように攻めてくるぞ!」
ひゅるひゅるズドン!
たたんたたんたったったったったっぁ!
「…。」
イリーさんは答えに困っています。
「ありゃ、海外の傭兵部隊だろ!」
イリーさんは目をつむって考えてます。
「わかったわ。まずはあなたたちの身の安全を最優先してください。たぶん、それは国民ではないわね!」
反政府軍vs外国人傭兵部隊。
心配です!
「わぁ〜、オヤカタ!あれあれ!」
「なんだ、あれ?魔物か…」
ツー
通信が途絶えました。
「なにが起きたのかしら?心配だわ。」
「やはり、魔法使いの仕業でしょうか?」
魔獣の召喚魔術(-。-;
「たいじょび、どんな魔獣が現れても。こっちには神獣きゅっぴがいるから(^^)v」
keiさんは元気ハツラツ笑顔です。
「さて、城塞に侵入しましょう!バレているかもしれないけれど、今しか侵入のチャンスはありません。」
イリーさんらしい考えです。
「おー!」
keiさんが、なんとも頼りなくニコニコと気合いを入れています。
その岩の向こうは城塞の上部出入り口です。
「ますは私が門番の様子を見て来ましょう。」
オサキさんが突き出た岩を見つめた瞬間!
旋風が舞いました。
あっ!
えっ!
イリーさんの驚きの声です。
オサキさんは一瞬、消えたかと思うとむつかしい顔をして立っています。
「嫌なものを見てしまいました。」と一言。
イリーさんは一瞬の出来事にびっくりして空いた口が塞がりません。
「イリー、ビックリした?キュッピのジャンプは、ものすごく早くてね。人の目に止まらないの!」
「門番は他のことに気を取られているので、覗き込んでも大丈夫です。わたし達の存在は気づかれていないようです。」
オサキさんは嫌な顔をしながらも、安堵した様子です。
「きゅっぴは何をみたの!?」
岩壁からこっそり覗き込みました。
「あっ!keiは嫌なものとは言わないけど、なんだか(-。-;」
たしかに、さめも理解の糸口が見つかりません(~_~;)
「なに!あの猫耳の女の子!可愛いo(^^o)」
イリーさんだけははしゃいで眼を光らせています。
イリーさんから見れば、猫のコスプレをした少女にしか見えないでしょう。
でも、あれは!失敬、あの方は本物の猫です。
「ねぇねぇ、入れてよ!さっき聞いたんだよー、女神さま見てみたい!」
門番に入城をせがむ猫耳娘(・・;)
「ダメだダメだ、ここは修行の場だ!お前のような浮かれたガキの入るところじゃない!」
門番さんと押し問答です。
「いま、下の門から、子供入ってたじゃん?」
「あの子は家族で心を清めに来ているんだ。」
グイグイと迫ってくる猫耳娘を、門番さんは槍を横にして押し返しています。
「じゃぁ、あたしも清めたい!#女神映えインスタしたいのーっ!」
「困ったな。」
本当に困っている様子です。
「ねえねえ、あの子の猫コスって尻尾もついてるし、ネコグローブもしてるよ。アニメのキャラクターなのかしら?」
いえいえ、猫ですから当然です。
賢明な読者様はお気づきでしょう!
そうです。猫魔王さんが門番を騙して、組織のアジトに入ろうとしているのです。
「男をたぶらかすのは、あいつの得意とするところですからな。」とオサキさんσ^_^;
「お願いーっ!」
門番さんをグイグイと押しています。
「どうしたんだ!」
扉が開くと、上官らしき男が顔を出しました。
その瞬間、猫耳娘は顔を出した男にネコパンチ!
男はアジトの中に吹っ飛んで行き...
その場でジャンプすると二人の門番同時に蹴りをくらわせました。
二人は半身ほど宙を舞い壁にぶつかって動かなくなりました。
バチパチパチ!
さすが猫魔王さんです(^^)v
「ちっ面倒くせぇ。kei達はどこにいるんだ!」
そうつぶやくと堂々とした態度で扉の中へ入って行きました(~_~;)
「何者だ!お前は?取り押さえろ!」
シュッバン!
ドン!
バフバフ!
きっと中にいた人たちも、やられちゃったんだと思います。
一瞬で静かになりました
「えー、なになにkeiさんの知り合いなの?キューピーさんも知っているような話し方でしたよね?」
イリアさんだったら、気づいても良さそうに思えるのですが…
魔王とコスプレ少女がつながらないのでしょう。
「イリアさん。わたしは知り合いでも、なんでもありません!その話は面倒なので後にしましょう。とりあえず、猫が扉を開けてくれたので中に入りましょう。」
オサキさんてば、まったく猫魔王さんを無視です。
「誰かに見られてないかしら?」
「門番が襲われたんです。気がついていれば、騒動になっているでしょう。今は反政府軍に気を取られているので、さぁ!」
オサキさんを先頭に、急いで中に入りました。
扉を閉めようとしたイリーさんが「この人たち?」と外を眺めています。
「片付けましょう。」と、おさきさんが中に運び入れ扉を閉めました。
目の前の部屋には猫耳娘さんがやっつけた門番たちが寝ています。
「さめくん、寝てるんじゃなくて意識を失ってるのよ。」
ハイ!
ここから廊下が続いてます。等間隔で採光用の小さな窓がありますが、薄暗くて怪しげ!
なにも音がきこえ...
「たく、keiのやつはどこにいるんだ!」
廊下の先の方から粗野で粗暴な女の子の声が聞こえてきます(-。-;
「猫魔!お前こそ、どこにいるんだ!」
猫魔王さんはちょうど奥の部屋から出てきたところです。
こちらを向きビックリした顔をしてます。
「なんだ、いま入って来たのか?」
keiさんもイリーさんも、あれほど努力して、ここにたどり着いたのに…
猫魔王さんてば、あさっりです(-。-;
「お前はなんでここにいるんだ!」
「keiを応援しに来た!に決まってんるだろ。」
「学ランに扇子は持って来たのか?」
オサキさんが猫魔王さんを、からかい始めました(~_~;)
「おまえさっ、応援団じゃねいんだぜ!」
つまらないことで言い争いはじめます。
「やめてくだい!ここをどこだと思ってるんです。敵のアジトですよ(~_~;)」
どちらかと言うとオサキさんがいけません。
「長ラン着て、潰した学生帽をかぶってる方がお似合いだぞ。なんだ、そのコスプレ少女は?」
「なんだと!」
「だから(°ㅂ°♯)!」
さめってば、オサキさんを睨んでしまいました。
「すみません、さめ殿!こいつをみてると胃のあたりがムカムカしてくるんです(ー ー;)」
ホント、いつもの冷静さを欠いています。
「ねぇねぇ、キュッピ。たぶん虫唾が走ってるんだと思お。でも、胸の辺りがムカムカするのは、心臓がヤバいのかもしれないよ。」
オサキさんはkeiさんの心臓病のレクチャーに耳をかたむけています。
「そうだよね~、イリー?」
keiさんがイリーさんに病理学的な見解を求めています、
でも、イリーさんは震えて動けなくなっています。
「猫猫。コスプレ少女で、その濁声はないんじゃない。イリーがびっくりしてしてるじゃん!」
その通り…。
「なんかよ、身内の前で女の子声は恥ずかしいだろ(* ̄∀ ̄)ゞ」
顔文字は可愛いですね。
「猫魔!心配するな。誰もお前を身内だと誰も思ってない!」
また、始まりました!
「お前は恥ずかしくないのか?その艶やかな声にチャイナドレス!」
猫魔王さんの恥ずかしい気持ちもわかりますか…
とは言っても、猫魔王の姿じゃ目立つし、かなり怪しいだけですよね。
「私のようにいつもの話し方で、声だけ女の子声にして見ろ!さっき、やってただろ。」
「こうか、おれはやっぱり恥ずかしいな!」
猫魔王さんは照れて髭がぴくぴくしています。
見た目によらず繊細ですw
「あっなんかそれ、濁声だけどかえって可愛いぞww」
「やめてくれよ!」
肩をすぼめて女の子のように照れています。
もう、余計なことで話が進みません!
「もう、それくらいで!それよりこれからどうしましょう?」
オサキさんと猫魔王さんはさておき…
中に侵入したものの、全く構造がわかりません(-。-;
下に行くにしても、上にいくにしても…
人々が囚われているのはどこでしょうか?
組織の幹部はどこにいるのでしょう。
この作戦って無理があったような気がします。
武力的にも、思索にしても、なんの決定打になる術がありません!
「ここまで来なければ、解らないこともたくさんあるんだと思お。小さな事でも糸口を見つけられるように感覚も心も集中する時ですね。時間をかけましょう!」
keiさんが訳の解らないことを言ってます。
意味は解るんですが、なんでkeiさんが…
「でさぁ、猫猫~。携帯充電ゲームしようよ。」
こらーっ!
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